神戸の社労士:井上です!
カットハウスのQBハウスがありますが、
令和7年7月に東京地裁で床屋スタッフと店主と運営会社に
残業代を求める裁判がありましたので、ここにまとめておきます。
フランチャイズ(FC)や業務委託形式で多店舗展開をしている企業の皆様にとって、見過ごせない裁判例が出されました。
店舗を運営する「個人事業主(受託者)」と、そこで働く「従業員」との間で未払賃金トラブルが発生した際、従業員側が「本部(委託会社)も雇用主である」として連帯責任を追及した事案です。
今回は、東京地裁で下された判決のポイントと、実務上の留意点を詳しく解説します。
1. 事案の概要:未払残業代を「本部」にも請求
有名なヘアカット専門店「QBハウス」の事例です。
登場人物:
被告会社: QBハウスを運営・展開する本部。
被告A(個人事業主): 本部から4店舗の運営を委託されていた。
原告ら(理美容師): 被告Aに雇われて店舗で働いていたスタッフ。
トラブルの内容: スタッフ8名が、残業代(割増賃金)が未払であるとして、直接の雇い主である「被告A」だけでなく、「本部(被告会社)」に対しても連帯して支払うよう訴えを起こしました。
スタッフ側は、「被告Aは本部の代理人として自分たちを雇ったのだから、本部との間にも雇用関係がある」と主張したのです。
2. 判決のポイント:なぜ「本部の責任」は否定されたのか?
裁判所は、本部とスタッフとの間の雇用関係を否定しました。その主な理由は以下の3点です。
① 契約実態が「独立した事業者」であった
本部と被告Aの間の契約には、「従業員の雇用は被告Aが行うものとする」という明文規定がありました。
被告Aは本部の従業員ではなく、独立した事業者として店舗を運営していたと判断されました。
② 「エリアマネージャー」という肩書きの解釈
被告Aは「エリアマネージャー」という名刺・名称を使用していましたが、裁判所は「複数の店舗を統括する意味であっても、会社を代理して雇用契約を結ぶ権限(代理権)があるとはいえない」と断じました。
③ 採用プロセスの独立性
求人広告や応募受付は、受託者たちの互助団体が行っており、本部は採用手続きに直接関与していませんでした。そのため、スタッフ側が「本部が雇い主だと誤解するような外観」を本主体で作ったとは認められないとされました。
【結果】 本部への請求は棄却。一方で、直接の雇い主である個人事業主Aに対しては、一部の未払残業代および付加金の支払いが命じられました。
3. 実務上の留意点:リスク回避のために
今回の判決では本部の責任が否定されましたが、もし本部の担当者が面接に同席していたり、本部のロゴ入り採用書類をそのまま使用させていたりした場合は、結果が変わっていた可能性もあります。
店舗運営を外部委託・FC化している経営者の皆様は、以下の点を見直してみましょう。
雇用主の明示: 労働条件通知書や雇用契約書において、誰が雇用主(責任者)であるかを明確にすること。
名称・肩書きの管理: 外部委託先の個人に対し、あたかも本部の役職者であると誤解させるような肩書きの使用を制限すること。
固定残業代の合意: 本事案では、固定残業代の合意が有効と認められたスタッフと、否定されたスタッフで明暗が分かれました。「自由な意思に基づく合意」があったと客観的に証明できる書類整備が不可欠です。
おわりに
「うちは委託だから関係ない」と思っていても、実態が「指揮命令」に及んでいたり、採用ルートが混在していたりすると、思わぬ法的リスクを背負うことになります。
「自社の契約形態や雇用管理は大丈夫だろうか?」と不安に感じられたら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
労務プランニング オフィスINOUE
社会保険労務士:井上 正宣