福井でホームページを作りながら、Kindleで自分の本を50冊ほど出しています。縦書きの本を組んでいると、一度は踏むことになります。
半角の英数字が、横に寝る。
本文は全部きれいに立っているのに、目次のページ番号だけが全部寝ていたことがありました。今日はその話です。
■ なぜ本文は大丈夫で、目次だけ寝たのか
縦書きの組版では、半角の英数字をそのまま置くと90度倒れます。これは組版の決まりごとなので、何もしなければそうなります。
だから、立たせる処理をどこかで通します。私の場合、本文を組むところには通してありました。
ところが、目次を作るところは別の経路でした。本文とは違う関数がページ番号を書き出していて、そこだけ立たせる処理を通していませんでした。
これが怖いところです。原稿をいくら読み返しても見つかりません。原稿のどこにも間違いはないからです。組み上がったPDFにしか現れません。
■ 立たせる道は3つある
倒れた文字を立てる方法は、文字の種類によって違います。
ひとつめ、全角にする。英字や記号はこれが一番きれいです。全角の文字は最初から縦組み用に作られているので、そのまま正立します。
ふたつめ、縦中横(たてちゅうよこ)。1〜2桁の数字に使います。「12」の2文字を横に並べたまま、1文字分の枠に収めて立てる組み方です。ページ番号や「3日」のような数字はこれです。
みっつめ、文字を回す。アクセント記号の付いた文字(í á ñ など)には全角がありません。全角にできないので、文字そのものを90度回して立てます。
どれを使うかは文字の種類で決まります。全部まとめて1つの方法で、とはいきません。
■ 寝ているのが正しい文字もある
ここを間違えると、直すたびに本が読みにくくなります。
「…」(三点リーダー)は、回転してはじめて縦組みの形になります。横組みでは点が横に3つ並んでいますが、縦組みでは縦に3つ並ぶのが正しい。つまり寝ているのが正解です。
「→」も同じです。縦組みの中で右を指す矢印は、回転して下を向きます。
英文も寝かせます。たとえば3語以上つながった英語の文を1文字ずつ縦に積むと、読めたものではありません。横に寝かせて、首をかしげて読んでもらうのが本の作法です。
ですから「寝ている文字を全部立てる」は間違いです。見るべきなのは、日本語の行の中にいるのに寝ている英数字だけです。
■ ここで私が作った失敗
自動で見つけようとして、こういう判定を書きました。
「英単語が3つ以上つながっていたら、そこは英文。だから寝かせたままでよい」
一見よさそうですが、穴がありました。日本語の文章の中に短い英語のフレーズが混ざっているだけで、その段落がまるごと「英文」と判定されます。すると、その行にある数字も記号も、全部そのまま寝ます。
正しくは逆でした。かなや漢字が1文字でもあれば、そこは日本語の段落です。
■ 検査が嘘をついたこともあります
もっと厄介な失敗もしました。
組み上がりを検査するプログラムが、「半角の数字が3文字残っています。縦書きで寝て見えます」と言い続けていました。ところが刷り上がりを見ると、その数字はちゃんと立っていました。
原因は、組む側と検査する側で手順が違っていたことです。組む側は全角化と縦中横をかけていたのに、検査する側はそれを知らずに元の原稿を見ていました。
これの何が怖いかというと、この文がそのままお客様に届くことです。「3文字残っています」と書かれた報告書を見れば、お客様は不安になります。しかも、見てみたら問題ない。
そして一度そうなると、次からその検査は読み飛ばされます。本当の赤が混ざっていても、気づかれません。
検査を直すときは、組むのと同じ手順をたどらせること。これは紙の本に限らず、どんな仕組みでも同じだと思います。
■ 全角にすると、ページが増える
立たせ方の話に戻ります。
半角の英字を全角にすると、幅が変わります。3文字の英字なら、寝ていたときは1文字分の幅ですが、全角にすると3文字分を食います。
これが積み上がると、ページ数が変わります。132ページだった本が136ページになったことがありました。
ページ数が変われば、背幅が変わります。背幅が変われば、表紙を作り直します。文字を立てただけのつもりが、表紙の作業まで戻ってきます。
だから、英字の扱いは最初に決めます。あとから変えると、そのぶん戻ります。
■ URLは横に組む
もうひとつ、縦組みで困るのがURLです。
縦書きの中でURLを1文字ずつ正立させると、読めません。そもそも、そんなふうに書かれたURLは誰も打ちません。
巻末の連絡先やSNSの欄だけ、箱ごと横組みにするのが素直です。本の巻末が一部だけ横組みになっているのは、紙の本ではよくある形です。
■ 見つけ方
目で読んで見つけるのは、まず無理です。本文が何百ページもあって、そのうち1か所だけ通し忘れている、という形で出るからです。
PDFから機械で見つけられます。縦組みのページでは、正立した文字と寝た文字で、文字の向きを示す値が変わります。その値を拾って、「日本語の行の中にいるのに寝ている英数字」だけを数えます。
そのうえで、見つかった箇所を等倍で目で見ます。機械が拾うのは候補までで、正しいかどうかは人が決めます。
■ まとめ
・縦書きで半角の英数字はそのまま置くと寝る
・立たせる道は3つあって、文字の種類で使い分ける
・寝ているのが正しい文字もある(… → 英文)
・通し忘れた場所だけが寝る。原稿を読んでも見つからない
・全角にするとページが増え、背幅が変わり、表紙も作り直しになる
・検査は、組むのと同じ手順をたどらせないと嘘をつく
縦書きの本を組むときは、組み上がったPDFを等倍で、英数字のあるページだけでも目で見てください。縮小した一覧では分かりません。
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縦書きの組版をお引き受けしています。上に書いたところは、こちらで全部見ます。
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紙にするときの落とし穴は、こちらにもまとめました。
・Kindle本をそのまま紙にすると起きる8つの不具合