「ママなんて、大嫌い!!」 散らかったリビングに、突き刺さるような高い声が響く。
さっきまで、ただ仲良く笑い合いたかっただけなのに。
どこで間違えてしまったんだろう。子供の目には、涙がいっぱい溜まっている。
そして、反射的に激しく怒鳴り散らしてしまった後の、 自分の喉のヒリつくような痛みと、心臓の嫌な鼓動だけが、静まり返った部屋に響いている。
わが子が寝静まったあと、暗いキッチンで一人、 さっきの叫び声を思い出しては、 「私、何をやっているんだろう」と、自分を責めていませんか?
心臓がギュッと止まって、 世界で一番自分がダメな母親に思えて、 もう消えてしまいたい……。
いま、もしあなたがそんな暗闇にいるなら、 かつて「叱られていた子供」だった僕から、どうしても伝えたいことがあります。
「お母さん、あなたは、ちっとも悪くありませんよ」
実は僕の母も、あなたと同じように、 いつもギリギリのところで踏ん張っていました。
時に爆発して、僕に怒りをぶつけ、 そのあと、一人で布団を被って声を殺して泣いている母の背中を、 僕は何度も見てきました。
子供だった僕は、ただ怖かった。
でも、大人になり、自分も親という立場になって、 ようやくわかったんです。あの時の母は、僕を嫌っていたんじゃない。
ただ、「誰にも頼れず、一人で背負いすぎて、いっぱいいっぱいだった」だけなんだって。
だから、お子さんが放った「大嫌い」という言葉に、 あなたの価値を決めさせないでください。
それは、お子さんがあなたを拒絶したんじゃなくて、 「お母さん、苦しそうだね」という心のSOSが、 まだ幼い言葉で、あべこべに飛び出してきただけなんです。
いまのあなたに必要なのは、 「もっといい母親にならなきゃ」という決意ではありません。
いま流れている、心の血を止めるための、ほんの少しの休憩です。
洗濯機が止まるまでの、15分だけでいいです。
「お母さん」という役割を一度置いて、 一人の人間として、いまの苦しさを吐き出しにきませんか?
まとまらないままでいい。
泣きながらでいい。
僕は「あの頃の僕の母」の声を聴くつもりで、あなたの言葉を全部受け止めます。
もし、一人で抱えるのがもう限界なら、 今夜はその荷物をここに置いていくだけでも大丈夫ですよ。
明日の朝、あなたが少しだけ優しい気持ちで、 「おはよう」とお子さんに言えるように。
僕は、ここでお待ちしていますね。