「お客様の声」に応えすぎる会社が、失うもの

「お客様の声」に応えすぎる会社が、失うもの

記事
ビジネス・マーケティング
お客様の声を聞くことは大切です。

商品やサービスを改善するうえで、
 ・もっと使いやすくしてほしい
 ・価格を下げてほしい
 ・量を増やしてほしい
 ・このような商品も作ってほしい
といった声は、貴重なヒントになります。

しかし、すべての要望に応えようとすると、
かえって商品が売れにくくなることがあります。

なぜなら、要望を盛り込みすぎると、
誰の、どのような悩みを解決する商品なのか
が分かりにくくなるからです。

今回は、お客様の声を活かしながら、
商品の軸を守るための考え方を整理します。

1.お客様の声を聞くことと、すべて反映することは違う

実際に商品やサービスを利用しているお客様の声には、
売り手だけでは気づけない改善のヒントがあります。

ただし、
お客様の声を聞くこと
と、
すべての要望を商品へ反映すること
は違います。

お客様によって、求めるものは異なります。

ある人は、価格の安さを重視します。
別の人は、品質を重視します。
また別の人は、手軽さや品ぞろえを重視します。

これらをすべて一つの商品で満たそうとすると、
何を大切にした商品なのか分かりにくくなります。

商品を改善するうえで重要なのは、要望を増やすことではありません。
どの要望を取り入れ、どの要望は入れないのかを判断すること
です。

2.飲食店でメニューを増やしすぎると、何が起きるか

例えば、ある飲食店で、お客様から次のような要望があったとします。
 ・麺類も食べたい
 ・丼物もほしい
 ・子ども向けのメニューもほしい
 ・健康的な料理も用意してほしい
 ・テイクアウトにも対応してほしい

一つずつ応えていけば、幅広いお客様に利用してもらえそうです。

しかし、メニューを増やしすぎると、
 ・何がおすすめの店なのか分かりにくくなる
 ・仕入れる食材が増える
 ・在庫管理や調理が複雑になる
 ・提供時間が長くなる
 ・品質にばらつきが出る
という問題が起きます。

お客様の要望に応えた結果、
店の魅力も現場の効率も下がってしまうことがあります。

大切なのは、
この店は、誰に、どのような価値を届けるのか
を明確にすることです。

3.食品でも、すべてを詰め込むと特徴が弱くなる

食品でも同じことが起きます。
例えば、新しい冷凍パスタを開発するとします。

お客様の声を聞くと、
 ・専門店のような本格的なおいしさがほしい
 ・野菜を多く入れてほしい
 ・カロリーは抑えてほしい
 ・食べ応えもほしい
 ・電子レンジで短時間に調理したい
 ・価格は手頃にしてほしい
といった要望が出てきます。

一つひとつはもっともな要望です。
しかし、これらをすべて一つの商品で満たそうとすると、
商品の軸が見えにくくなります。
ブログ27_図1.png


複数の要望がある中で、どれを重視するのかを見極める必要があります。
 ・忙しい日の昼食に、短時間で食べられる手軽さ
 ・少し価格が高くても、専門店のようなおいしさ
 ・カロリーを抑えながら、野菜もしっかり取れること

届けたい価値によって、
選ぶべき原材料、内容量、価格、調理方法、
パッケージで伝える内容も変わります。

商品開発で重要なのは、要望を多く入れることではありません。
誰に、どのような価値を届けるのかを決め、
その軸に合う要望を選ぶことです。

つまり、何を入れるかだけでなく、
何を入れないか
を決めることも重要です。

4.声の大きいお客様だけを見ない

注意したいのは、積極的に意見を伝えるお客様の声が、
すべてのお客様を代表しているとは限らないことです。

要望を出してくれるお客様は貴重です。

一方で、
 ・満足して使い続けている人
 ・不満を伝えずに離れていく人
 ・興味はあるが、購入に至らない人
の声は見えにくいものです。

一部のお客様の要望だけに応えると、既存商品を評価していた人にとって、
商品の魅力が分かりにくくなる可能性もあります。

お客様の声を見るときは、
誰が言ったか
だけでなく、
どのようなお客様にも共通する悩みなのか
まで確認する必要があります。

5.要望は、4つの視点で選別する

お客様から要望をいただいたとき、
すぐに採用するか、断るかを決める必要はありません。

まず、次の4つの視点で整理します。

① 自社が届けたい価値と合っているか
その要望に応えることで、商品の魅力は強くなるのか。
それとも、何を売りにした商品なのか分かりにくくなるのか。
最初に確認したいのは、商品の軸との整合性です。

② どれくらい多くのお客様に共通する悩みか
要望を出してくれたお客様にとっては、重要な問題かもしれません。
しかし、その要望が、多くのお客様にも共通するとは限りません。
 ・同じ要望がどの程度あるのか
 ・特定のお客様だけの要望ではないか
 ・購入を迷っている人にも必要なのか
 ・継続利用につながる改善なのか
を確認します。

③ 増える売上と、増えるコストは見合うか
要望に応えることで、新しい売上が生まれるかもしれません。
一方で、
 ・原材料の種類が増える
 ・在庫管理が複雑になる
 ・製造や調理の手間が増える
 ・問い合わせ対応が増える
といった負担も発生します。
売上だけでなく、追加でかかる手間や管理負荷まで見ることが大切です。

④ 既存のお客様にとって、分かりにくくならないか
新しい機能やメニューを加えることで、
新しいお客様に届く可能性があります。

しかし、既存のお客様にとって、
 ・選びにくくなる
 ・使いにくくなる
 ・品質が安定しにくくなる
 ・商品の魅力が伝わりにくくなる
という問題が起きることもあります。

新しい要望に応えるときは、増えるものだけでなく、
失うもの
も確認する必要があります。

6.対応は、採用か却下の二択ではない

お客様の要望を整理した後は、
すべてを採用するか、すべて断るかの二択で考える必要はありません。
要望の内容によって、対応方法は分けることができます。
ブログ27_表1.png

例えば、多くのお客様に共通し、商品の魅力を強くする要望であれば、
標準商品へ取り入れます。

一定の需要はあるものの、すべてのお客様には必要ない場合は、
オプションとして切り分けます。

需要はあるものの、既存商品の軸とは異なる場合は、
無理に一つの商品へ詰め込まず、別商品として展開する方法もあります。

重要なのは、
お客様の声に応えないこと
ではありません。

要望に合った対応方法を選ぶことです。

7.まとめ

お客様の声を聞くことは大切です。
ただし、すべての要望に応えることが、良い商品につながるとは限りません。

要望を盛り込みすぎると、
 ・誰向けの商品なのか分からない
 ・特徴が弱くなる
 ・現場の負担が増える
 ・品質が安定しにくくなる
 ・お客様にとって選びにくくなる
という問題が起きます。

大切なのは、
誰に、どのような価値を届ける商品なのか
という軸を持つことです。

お客様の声は、その軸を磨くために使う。

すべての要望に応えるのではなく、
 ・取り入れるもの
 ・オプションで対応するもの
 ・別の商品として展開するもの
 ・個別対応にとどめるもの
 ・今は採用しないもの
を分ける。

何を加えるかだけでなく、何を加えないかを決める。

それが、商品の魅力を守りながら改善を続けるために必要です。

もし、
「お客様の要望に応えているうちに、商品が複雑になってきた」
「機能やサービスを増やしたが、かえって魅力を伝えにくくなった」
「自社の商品で、何を前面に出すべきか整理したい」
という場合は、状況整理のお手伝いも可能です。

ブログでは一般的な考え方をお伝えしていますが、実際には会社ごとの商品、顧客層、競合、自社の強みによって、取るべき対応は変わります。

現状の商品やサービス、お悩みをお聞かせいただければ、
何を残し、何を加え、何を見送るべきかを整理し、選ばれやすい商品の見せ方を一緒に考えることも可能です。

感覚ではなく、構造で整理する。
それだけで、商品の魅力は伝わりやすくなります。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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