はじめまして。精神科の看護師として、約20年現場に立ってきた、るいまみと申します。
病棟管理や訪問看護を経験しながら、いろいろな方の「言葉にならない苦しさ」と向き合ってきました。今は看護の仕事と並行して、「職場の人間関係疲れ聞きます」という電話相談を行っています。
今日は、夜中にスマホで「退職代行」と検索したことがある方に向けて、書いています。
実は、私自身も看護師として働く中で、「もう無理かもしれない」と思った時期が何度かありました。
夜勤明けに泣きながら帰った日。上司との関係で胃が痛くなった時期。子育てと管理職の板挟みで、自分が何のために頑張っているのかわからなくなった夜。
だから、退職代行を検索する人の気持ちは、頭で理解しているのではなく、体で知っているつもりです。
明日、職場に行きたくない。上司に退職を伝えるなんて無理。もう誰とも話したくない。このまま消えてしまいたい。
そう思いながら、布団の中でスマホを握りしめている夜。検索窓に「退職代行」と打ち込むそのとき、心の中ではもう何度も、限界を訴えていたのだと思います。
「もう無理」と言えない人ほど、危ない
現場で見てきて思うのは、本当に危ない人ほど「もう無理です」とは言わない、ということです。
むしろ、こう言います。
「まだ大丈夫です」
「みんなも頑張ってますから」
「私だけ休むわけにはいかなくて」
そう言いながら、眠れなくなっていたり、食べられなくなっていたり、朝になると涙が出ていたりする。心より先に、体のほうが限界を知らせていることが、本当によくあります。
退職代行を検索しているあなたも、もしかしたら、ずっと「まだ大丈夫」と言い続けてきたのではないでしょうか。
退職代行を使うこと自体は、否定しません
最初にお伝えしておきたいのは、退職代行を使うこと自体を、私は否定しないということです。
直接話せば怒鳴られる。強く引き止められる。ハラスメントがある。連絡をする気力すら残っていない。上司の名前を見るだけで動悸がする。
そういう状態なら、第三者を挟むことが自分を守る手段になります。
「退職代行なんて甘えだ」と簡単に言う人もいます。でも、人にはそれぞれ事情があります。職場の状況も、心身の状態も、外から見ただけではわかりません。
ただ、使う前に一度だけ、考えてみてほしいことがあるのです。
あなたは、本当にその仕事を辞めたいのでしょうか。それとも、今の苦しさから、一刻も早く逃れたいのでしょうか。
この二つは、似ているようで、少し違います。
「辞めたい」と「逃げたい」は、同じようで違う
仕事を辞めたいと思うことは、悪いことではありません。合わない職場はあります。人を大切にしない職場もあります。そういう場所から離れることは、逃げではなく、自分を守るための判断です。
ただ、心身が限界に近いとき、考える力そのものが落ちていることがあるのです。
本当は少し休めば考え直せる状態なのに、今すぐ全部を終わらせたくなる。部署異動や業務調整で変わる可能性があるのに、「もう辞めるしかない」と思い込んでしまう。誰かに相談したいのに、「どうせわかってもらえない」と一人で結論を出そうとしてしまう。
疲れ切っているときの頭は、選択肢を狭く見せます。
辞めるか、壊れるか。行くか、逃げるか。我慢するか、全部終わらせるか。
そんなふうに、極端な二択になってしまう。でも本当は、その間にも道はあります。
休む。相談する。受診する。部署異動を希望する。家族に話す。転職活動だけ先に始めておく。辞めるにしても、準備をしてから動く。
どれが正解かは、人によって違います。だからこそ、限界のときほど、いきなり大きな決断をしないでほしいのです。
辞める前に、今日だけ確認してほしい3つのこと
1つめ。眠れていますか。
夜、ちゃんと眠れていますか。途中で何度も目が覚めていませんか。寝ても疲れが取れない状態が、続いていませんか。
眠れない状態が続くと、心の回復力も判断力も落ちていきます。その状態で大きな決断をすると、本心というより「とにかくこの苦しさを終わらせたい」という気持ちが強く出てしまうのです。
2つめ。食べられていますか。
食欲はありますか。何を食べても味がしない。食べる気力がない。逆に、何かを詰め込むように食べてしまう。そういう変化は出ていませんか。
心が疲れると、体の基本的なリズムが崩れます。「私は大丈夫」と頭で思っていても、体は正直です。
3つめ。辞めたあとのことを、考える力は残っていますか。
辞めたあと、少し休めそうですか。生活費の見通しはありますか。誰かに状況を話せていますか。
もし今、「そんなこと考えられない、とにかく明日行きたくない」だけで頭がいっぱいなら、あなたに必要なのは、退職の決断より先に、休息や相談かもしれません。
辞めることが悪いのではありません。ただ、辞めたあとも人生は続きます。だから、辞めるという大きな判断は、できれば少しでも呼吸ができる状態で考えてほしいのです。
ひとりで決めなくて、いいんです
仕事を辞めるかどうかは、大きな判断です。でも、心が限界のときほど、人は一人で決めようとしてしまう。
迷惑をかけたくない。弱いと思われたくない。どうせわかってもらえない。話したら止められそう。
そう思って、誰にも言えなくなる。
でも、ひとりで抱えたまま決めるには、重すぎることもあります。
「辞めたい」と結論から言わなくて大丈夫です。
最近、仕事のことを考えると眠れない。朝になると涙が出る。退職代行を検索するくらい、追い詰められている。自分でも、今の状態が危ない気がしている。
そんなふうに、状態だけでも誰かに伝えてみる。それだけで、見えるものが少し変わることがあります。
誰にも話せないときは、声に出してみる場所があります
家族や友人に話せたら、それが一番いいかもしれません。でも、身近な人ほど話しにくいことも、あると思います。
「心配させたくない」
「弱いところを見せたくない」
「止められたら、もっとつらい」
そう思って、結局誰にも言えないまま、夜中に検索を続けてしまう。
そういうときの選択肢のひとつとして、私の電話相談を使っていただくこともできます。
精神科看護師として20年現場にいた経験から、心が限界に近づいているときの「言葉にならない感じ」は、なんとなくわかります。判断のお手伝いをするというより、まず話を聴かせていただく場所です。
私が大切にしているのは、「否定せず、評価せず、遮らずに」聴くこと。
辞めたほうがいいですよとも、頑張りましょうとも言いません。あなたが自分の状態を整理するための時間として、使っていただけたらと思っています。
最後に
退職代行を検索した自分を、責めなくていいです。
それは、あなたがだらしないからでも、社会人として失格だからでも、弱いからでもありません。それだけ、ひとりで抱えてきたのだと思います。
その検索は、心が出したSOSかもしれません。大事なのは、検索した自分を責めることではなく、そのSOSをどう扱うかです。
休む。辞める。続け方を変える。どれも、自分を守るための選択肢です。
心が完全に折れてからでは、選べるものが少なくなります。まだ迷えているうちに。まだ検索できているうちに。自分の状態を、少しだけ整理してみてください。
あなたが弱いから苦しいのではありません。強くあろうとしすぎた人ほど、限界に気づくのが遅れることがあります。
今日は、自分を責めるより先に、こう考えてみてほしいのです。
「私は怠けたいのではなく、もう限界のサインを出しているのかもしれない」
その問いから、始めていいと思います。
話してみたくなったときは、いつでもどうぞ。