毛ノ国

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毛の国で暮らしている。

発音するときは「毛」にアクセントを置いて、イントネーションは物語に出てくる「彼ノ国(かのくに)」風で、声に出してもらえると、より私の気持ちに近づけると思う。

大きな毛の塊と暮らしているのだからしょうがない。多い時には3頭いたからそれはそれは凄まじい毛の量だ。掃除しても掃除しても家のそこらじゅうに毛が落ちているし、換気の為に窓を開ければ雪のように毛が舞うのだ。

大きな毛の塊たちと暮らしはじめて6年経つが、掃除機も既に4台買い替えた。サイクロン型掃除機が次々に死んでいくのだ。あの「吸引力の変わらないただ一つの掃除機」も「ペットの毛が絡まない独自のブラシ技術が自慢の掃除機」も、我が家ではただの「毛吸引機」として短命に終わる。

最近は掃除機に申し訳なさを感じるようになった。きっと彼らも掃除機として生まれたからには、おしゃれで清潔な家の子になって、毎日目では見えない微細な埃を吸い取って「わぁ、こんなに汚れてたんだ〜!やっぱすごいね〜この掃除機」なんて褒められるような暮らしを夢見ていたに違いない。けれど、我が家に来た掃除機たちは違った。来た初日から白い毛ばかりを大量に吸わされ、やれ絡まった・詰まった・吸い込みが悪い──そんな叱責を毎日受けて暮らしているのだ。ロボット型掃除機の導入も考えたけど、どう考えても早逝するのが目に見えているので諦めた。

毛のついていない物など、この国には存在しない。

最近では冷蔵庫の中からも毛が出てくるようになった。衛生観念とかどうなっているんだ?と問われそうだが、安心して欲しい。毛なんて日常レベルで口にしているし、たぶんすでに致死量は摂取しているだろう。そのうち猫のように毛玉を吐き出すかもしれない。外出してもバッグの中から毛が出てくるし、服についた毛をコロコロで入念に取って行っても、なぜか必ずいるのだ。どこにいても毛はいる。毛の国で暮らしているのだからしょうがない、そう思う事にしている。

全身を白い毛で覆われている我が家の毛の塊たち。今日も元気に歩きながら毛を落として、我が国の発展に貢献している。

ちなみに私の夫の頭の毛は薄い。
彼だけ、異国民だ。


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