2年前に偶然、立ち寄ったおもしろい喫茶店がある。
その店は、緑豊かな山の中に佇んでいた。
独特な風貌の建物なので最初に店のドアを開けることに、私はかなり勇気が必要だった。
入ってみると、そこは異空間の世界が広がっていた。店のご主人が身内と二人で全て完成させた店らしい。
店主お手製の置物が所狭しと置かれている。
私は以前から、この店にいつかは知り合いの霊能者ご夫婦を連れて来たいと思っていた。
それが偶然、叶った時があった。
ある場所で霊能者ご夫婦と待ち合わせした時に「これからお茶会でもしましょう。この近くに喫茶店がありますか?」と霊能者の方に聞かれ、この店を紹介した。
思わず「待ってました!」と心の中でガッツポーズをとってみる。
2年前にこの店に足を踏み入れた時、いろいろな置物や飾り物(ランタンなど)でいっぱいの店内を物珍しそうにキラキラした目で、私はじっくり見回した。
しばらくすると、ご主人とすっかり打ち解けて世間話を少しだけしたつもりが、すでに2時間も時間が経っていた。
そして何故か店を出た頃には、日常をすっかり忘れていた自分に気がついた。
まさしくその喫茶店は私にとって、異空間だった。
日常の嫌なことを、いつのまにか忘れることが出来る初めての場所だった。
私は何故そんな気持ちになれたのか。
この場所の波動が高いのか、店のご主人の波動が高いのか。
どちらの波動の高さが原因かをずっと確かめたかった。
お茶会と称して店に入るなり案の定、ご夫婦二人はすっかりこの店を気に入ったようだった。
奥さんに関しては明らかにテンションが上がってしまい、私たち三人の後に入店したお客さんに「いらっしゃいませ~♪」と大声で呼び掛け、まるで少女のようにすっかり、はしゃいでしまっていた。そんな奥さんを見るのが初めてだった私は、そのテンションの高さに思わず心配してしまうほどだった。
つまり、波動が爆上がり状態になってしまう…そんな店なのだ。
そう言えば、二人に聞きたいことがあったんだと我に返った私は、
「ここは波動が高いと思うんですけど、店のご主人の波動が高いんですかね?それともこの場所が高いんですかね?」
と小声で興味津々に聞いてみた。
すると
奥さん 「ご主人は波動がまっすぐだね。余計な物がついていない。はっきり言って野生児だね。生命力が強いから100歳まで生きるよ。あと、この場所も波動が高いね」
と本人に聞こえてしまいそうな程の音量で教えてくれた。
「野生児」というキーワードで私は思わず爆笑してしまった。失礼な発言だけに本人の耳に届いていたら、怒られそうだ。
その後も、テンションが高いままの奥さんは「お兄さん、お兄さん!」と、店のご主人を必死に呼び止める。
店のご主人 「お兄さんじゃないよ!俺は今月80歳になったばかりだ!」
と半分切れ気味で奥さんに言い放った。
しかし実年齢は、店のご主人より霊能者の奥さんの方が7つも年下だ。奥さんを見た目で年上と判断して、女性にとって大変失礼な発言をしている店のご主人は、自分の失礼さに全く気づいていない…。
しかし、奥さんもひるんでいない。
奥さん 「80歳なら、私の方が年下だよ。だからお兄さんて呼べるわよ。」
続けて奥さん 「ついでに私たちの描いた絵でも飾らせてよ」
店のご主人 「やだよ!人の絵は飾らないよ!」
と吐き捨てるように言い放つ。
私 「奥さん、自分の家じゃないんだから…」ため息とともに声がこぼれる。
恥ずかしげもなく奥さん、初めて入った店でよくそんなことが言えるなぁ。
年を取ると言うことは、こういうことなのかも知れない…。
年齢に霊能者も野生児も、へったくれもないのである…。