『キャリコン試験対策』<理論(20)>:職業選択理論~丸い釘と丸い穴から始まった職業指導~
記事
法律・税務・士業全般
前回は、ホール(Hall, D.T.)の
プロティアン・キャリアから
一気に時代をさかのぼり
パーソンズ(Parsons, F.)の
「特性・因子論」を整理しました。
今回は、そのパーソンズが
どんな時代背景の中で職業選択理論を
提唱したのかに焦点を当てていきます。
「なぜ、特性×職業のマッチングが
重視されるようになったのか?」
その背景を押さえておくと
問題の選択肢もグッと読みやすくなります。
まずは、過去問から見ていきましょう。
パーソンズ(Parsons,F.)の職業選択理論に関する
次の記述のうち最も適切なものはどれか。
1. 「産業構造の変化や雇用慣行の変化、経済停滞などにより、中年期のキャリア支援の
必要性が強く認識される」ようになったという、当時の背景に基づいて提唱された。
2. 「急激な経済成長により都市部に集中した労働者を、より効率的に適職に導く」という
当時の社会的課題の解決を意図して提唱された。
3. 「社会的変化が激しく、先の見通しが立ちにくいなか、従来の計画的なキャリア形成が
困難に なってきている」という当時の風潮のもと提唱された。
4. 「本人が置かれている社会経済的な文脈や文化が無視されがちであった」という
当時の認識のもと提唱された。
出典:第28回 国家資格キャリアコンサルタント 学科試験
✅ 正解は…記事の途中で!
1. パーソンズの時代背景とは?
パーソンズが活動していたのは
20世紀初頭のアメリカ・ボストン。
・急速な産業化
・農村から都市部への大量の人口流入
・職業選択の情報がほとんどない若者たち
といった社会状況のなかで
どうすれば若者を効率よく適職に導けるか
という課題が強く意識されていました。
そこでパーソンズは
・個人の能力・興味・特性を「測定」
・職業側の要件を「分析」
・双方を「合理的にマッチングする」
という科学的職業指導の枠組みを提唱しました。
これが前回取り上げた「特性・因子論」であり
その実践の根っこにあるのが
今回の「職業選択理論」です。
2. 過去問をチェック!
改めて、先ほどの問題を見ていきましょう。
パーソンズ(Parsons,F.)の職業選択理論に関する
次の記述のうち最も適切なものはどれか。
1. 「産業構造の変化や雇用慣行の変化、経済停滞などにより、中年期のキャリア支援の
必要性が強く認識される」ようになったという、当時の背景に基づいて提唱された。
2. 「急激な経済成長により都市部に集中した労働者を、より効率的に適職に導く」という
当時の社会的課題の解決を意図して提唱された。
3. 「社会的変化が激しく、先の見通しが立ちにくいなか、従来の計画的なキャリア形成が
困難になってきている」という当時の風潮のもと提唱された。
4. 「本人が置かれている社会経済的な文脈や文化が無視されがちであった」という
当時の認識のもと提唱された。
出典:第28回 国家資格キャリアコンサルタント 学科試験
選択肢1:誤り
→「産業構造の変化や
雇用慣行の変化、経済停滞」
「中年期のキャリア支援」
これはかなり時代が新しすぎる内容です。
中年期のキャリア支援や雇用慣行の変化と
いったテーマは、スーパー以降の現代的な
キャリア論の文脈に近く、20世紀初頭の
パーソンズにはそぐわない背景です。
選択肢2:正しい!
→「急激な経済成長により
都市部に集中した労働者を
より効率的に適職に導く」
これがパーソンズの職業指導の出発点です。
急速な産業化のなか、都市部に流入してきた
若者を「勘」や「縁」ではなく
科学的に適職へ導く仕組みが必要だった—
その社会的課題への解決策として
職業選択理論と特性・因子論が生まれました。
選択肢3:誤り
→「社会的変化が激しく
先の見通しが立ちにくい」
「従来の計画的なキャリア形成が困難」
これはクランボルツやサビカス以降の世界観に
近い記述です。不確実性・偶発性を前提とした
理論とは違いパーソンズはむしろ「計画的で
合理的なマッチング」を志向しています。
選択肢4:誤り
→「社会経済的な文脈や文化が
無視されがちであった」という認識のもと…
パーソンズの理論は
・個人の特性
・職業の要件
この2つの分析と適合に強くフォーカスしていて
社会的文脈や文化的要素を積極的に取り込もう
とした後続の理論(構成主義・ナラティブ系)の
発想とは異なります。
✅ 正解は…2です!
🔍 ポイント:
背景で見抜く誰の理論か?
この問題は内容そのものよりも
「いつ頃・どんな課題に
対して生まれた理論か?」
を押さえているかが鍵になります。
・産業化 × 都市集中 × 若者の職業指導
= パーソンズ
・中年期 × キャリア支援の必要性
= スーパー以降
・不確実性・偶然を前提にしたキャリア
= クランボルツ・サビカス
・文脈・文化・ナラティブ重視
= 構成主義系理論
「キーワード+時代背景+人物」を
セットで覚えておくと選択肢だけ読んで
判断しやすくなります。
3. 支援の現場ではどう活かす?
今の時代、パーソンズのような
「ぴったりマッチする1つの適職」を
そのまま探すことは少ないかもしれません。
それでも、支援の現場では
こんな形で生きています。
① クライエントが「自分に向いている
仕事が分からない」と言うときに
自己理解(特性)×職業理解(要件)という
基本フレームで話を整理してみる。
② アセスメント結果を説明するときに
「これは、あなたの釘の形を見える化
しているツールです」
「じゃあ、どんな穴(仕事)が合いそうか
一緒に考えましょう」
といった比喩で説明する。
③ いきなり天職探しをするのではなく
まずは「自分の強み・興味・価値観」と
「職業側の要件」の両方を丁寧に棚卸しする
ステップを踏む。
不確実性の高い時代であっても
この「丸い釘と丸い穴」の視点は
キャリア支援の基本フォームとして
今も有効です。
全20回にわたってお届けしてきた
『キャリコン試験対策』<理論>ですが
ここでひと区切りです。
積み重ねてきた理論の理解が
みなさまの自信や実践力に
つながっていけたら嬉しく思います。
そして、また新しいテーマで
一緒に学んでいきましょう!