土曜の午後
窓際の丸テーブルでは
ふみさん
なつさん
ゆき先生
あさひの4人がそれぞれドリンクを片手にゆっくり話している
「最近ちょっと悩んでて」
ふみがストローをくるくる回しながら苦笑いする
「うちの子
ダンス習いたいって言い始めたの」
なつさんが反応する
「最近ほんと多いですね
“○○ちゃんもやってる”って」
「体験行くと楽しそうなんだよね」
「キラキラした顔で“また行きたい!”って言われると…
なんか応援したくなるっていうか」
ゆきが静かにうなずいた
「保育園でも“英語やってる”“スイミング行ってる”って
子ども同士で普通に会話してる」
「そんな小さい頃から?」
なつが少し驚いた顔をする
「年中くらいになると結構いるかも」
あさひがコーヒーを置きながら笑った
「今って“経験させてあげたい”って思うママ多いよね」
「分かる…」
ふみさんが小さくため息をつく
「“好き”を見つけてほしいなとか
“自信”になったらいいなとか…そういう感じ」
その言葉に3人とも自然とうなずいた
なつがぽつりと言う。
「習い事って思ったよりお金かかりますよね」
「かかる」
「体験は無料でもそのあとが普通に月8千円とかするもん」
ふみが指を折りながら数え始める
・月謝
・ユニフォーム
・発表会
・送迎…
・地味に土日が埋まる
「保護者も結構体力いるんだよね」
なつが笑う
「うちなんて
まだ生まれてないのにもう夫が“サッカーやらせたい”とか言ってる」
あさひがふと柔らかく言った
「でも“絶対何かやらせなきゃ”って思わなくていいとは思う」
ふみが顔を上げる。
「…っていうと?」
「今って情報多いじゃん
“英語は早いうちがいい”“運動神経は○歳まで”とか」
「見るたびなんか焦る」
あさひは続けた
「でも実際
“習い事いっぱい=その子に合ってる”とは限らないと思うんだよね」
ゆきもうなずく。
「園でも“今日は疲れてるなぁ”って子はいるよ」
「保育園終わってから習い事行って
帰宅して
ご飯食べて
お風呂入って…ってなると
大人でもハードだもん」
ふみが少し考え込む。
「確かに…
この前もスイミングのあと寝落ちして
ご飯ほぼ食べずに終わった日あったな」
「だからってそれで“習い事やめよう”じゃなくていいと思う」
ゆきが優しく言う。
「“今の頻度どうかな?”とか
“この子楽しめてるかな?”を見ながら調整していく感じ」
「なるほどねぇ…」
ふみが納得したように笑う
なつがテーブルに肘をつきながら言う
「なんか“何を習わせるか”も大事だけど
“家族が無理しすぎない”って結構大事なんだね」
「ほんとそれ」
あさひが即答する
「家計も時間もずっと続くことだから」
「最初は“週3で!”って始めても
送迎だけでしんどくなるパターンもあるし」
なつが少し前のめりになる
「“お金かけないと子どもに悪いのかな”って」
その言葉に一瞬だけ空気が静かになる
ゆきがすぐに首を横に振った
「そんなことないと思います」
「保育園でも“家で一緒に散歩した話”とか
“公園でどろんこ遊びした話”を
すごい嬉しそうにする子たくさんいる」
あさひも笑う
「“誰とどう過ごしたか”って大きいんだろうね」
ふみが少し肩の力を抜いたように笑った
「みんな悩みながらやってるんですね」
なつがそう言うと
4人の間にふっと穏やかな空気が流れた
「子どもって“やらされてる”と続かないですもんね」
なつの言葉にあさひが
「多くの人が“やらせる=成長”と思ってるんですけど
“選んだ経験”の方が残ることが多い」
ふみが両手を上に伸ばし
「“何をやらせるか”じゃなくて
“何がやりたいか”なのかもね」
ゆきもやさしく言う
「そうですね
成長って習い事だけで決まるものじゃないですから」
窓の外では小さな子どもがスキップしながら走っていく
その姿を眺めながら4人はそれぞれ
“この子らしく育ってほしいな”という似た気持ちを静かに抱えていた