22時を回る頃
赤提灯がぶら下がる賑わいを見せる居酒屋の中に
ハルさん
アキくん
みき先生
プランナーのヨルの4人が集まっていた
アキが口を開く
「子どもが生まれたら…
お金も仕事も
正直どうしたらいいのか分からなくて」
ハルが少し笑う
「俺も最初そうだったよ
収入増やさなきゃって思って
副業始めたんだよね」
少し間を置いて続ける
「でも気づいたらさ
家で話す時間減ってて
なんか…
家の空気がちょっと悪くなった」
みきがうなずく
「園でも聞いたことある」
3人が見る
「お母さんが言ってた
“旦那が副業始めてから
家にいても頭はそっちにいってる感じがする”って」
アキが少し驚く
「家にいても…?」
みきが続ける
「子どもも変わるんだよ
前は“パパ見て”って来てた子が
だんだん来なくなっちゃたんだ」
「子どもなりに気を使ったってことか…」
ハルが少し黙る
「……ちょっと分かるかも」
空気が少しだけ静かになる
そのタイミングでヨルが口を開いた
3人が視線を向ける
「収入を増やす
→時間が減る
→余裕が減る
→会話が減る」
少しだけ間を置いて
「多くの人が“収入を増やす=安心”だと思ってるんですけど」
「実は不安って収入じゃなくて“見えなさ”から来てることが多いんじゃないかなと思うんです」
アキが聞く。
「見えなさ?」
「例えば“いくらあれば安心か分からない状態”」
ハルがうなずく
「確かに…
なんとなく不安で動いてたかも」
ヨルが少し笑う
「“最悪ライン”だけ決めるんです」
最低生活費と貯金の下限
「これを出してそれを下回らなければOKとする」
アキが少し前のめりになる
「それで変わるんですか?」
「ある家庭で
旦那さんが副業を増やしてたんです
でも“最悪ライン”を出したら
今の収入で十分だった」
ハルが笑う
「それで?」
「副業での収入はプラス数万までとしているので
目標金額を越えればその月はもう稼がない
このやり方で
心にも余裕を持ちながら副業に取り組んでます」
アキがつぶやく
「欲がでちゃいそうですね…」
ヨルがうなずく
「ですが
先ほどからの話
時間以上に“家の空気”が違います」
みきも続ける
「子どもはパパの余裕や笑顔が増えれば
“パパ見て”も戻ってきます
パパは見てくれる
話していいんだって」
ハルが力を抜く
「……そっちのほうが大事かもな」
アキが静かに言う
「増やすことばっか考えてたかもしれない」
ヨルが
「増やす前に“足りてるライン”を知る
それだけで仕事の選び方も変わります」
最後にみきがゆっくり言った
「時間も
お金もバランスを考えることで
子どもにも
周りにも」
「“余裕が伝わるかどうか”」
4人は静かにうなずいてジョッキを持ち上げる