国際化問題 例題
現在、外国人旅行者の誘致に取り組む自治体が増加しています。また、我が国に居住する外国人には地域活動への参加などが期待されています。今後、日本に住む外国人の増加が見込まれるなど、地域を取り巻くグローバル化の流れは一層加速しています。海外からの日本に対する注目度も一層高まっていく中で、グローバル化の流れを積極的に施策に反映していくために、職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
次に、一般的に陥ってしまいがちな列挙形式答案を提示します。一部に不具合があるため、それを添削することで、公務員として相応しい着眼点を養います。そして適宜、自分の構成メモも修正してみましょう。
これは、昔の基準であれば合格レベルとされたかもしれません。しかし、今では減点される要素を多く含んでいます。さあ、採点者になったつもりで、この答案を添削し、何がダメなのかを考えてみましょう!
<旧来型列挙形式答案>
私が考える国際都市は3つある。すなわち、外国人観光客が多く訪れる都市、産業協力や文化交流などを通じて人的交流が盛んな都市、日本人と外国人が分け隔てなく安心して快適に生活ができる環境、地域性を備えた都市の3つである。では、これらの国際都市を形成していくにあたって行政が取り組むべきことは何か、以下具体的に述べる。
第一の「外国人観光客が多く訪れる都市」を形成していくためには、観光資源の開発、積極的な観光PR及び外国人観光客の受入環境の整備に取り組む必要がある。まず、観光資源を開発するにあたっては、外国人の興味関心を的確に把握するべきである。外国人は日本の心に触れることを目的として観光に訪れることが多いと言われている。これは観光庁の実施している「訪日旅行に関する意識」アンケートで、外国人が訪日の際に期待することとして日本食を食べることや自然・景勝地観光、温泉入浴といったものを挙げていることからも推測できる。したがって、行政は当該自治体が現在保有しているモノをこのような外国人観光客の視点に立って資源化することが求められる。また、観光PRについても、多言語に対応した外国人専用のウェブサイトを作成することはもちろん、海外メディアを招聘したり、海外旅行エージェントに向けた商談会を開催したりするなど、より積極的な観光プロモーションを講じる必要がある。外国人の受入環境の整備については、観光客の利便性を向上させるために、各所に観光案内窓口を設置したり、公共インフラの多言語表記を徹底したりするべきである。また、外国人からの要望として最も多い無科Wi-Fiについても順次完備していく必要がある。なお、自治体によっては、観光戦略について民間事業者との連携強化に努めているところもある。このような外国人のニーズに対応する官民の協力体制は今後とも継続していくべきであろう。
第二の「人的交流が盛んな都市」を形成していくためには、産業協力や文化交流などを通じて異文化交流の機会を増やしていく必要がある。例えば、外国企業の誘致を推進したり、姉妹都市との交流を通して、相互理解、友好関係を深めたりすることが考えられる。そして、今後ますますグローバル化が進展し国際競争も激化する中で、世界を舞台に活躍できる国際色豊かな人材を育成することは必要不可欠である。特に若者に向けた投資は惜しむべきではない。そこで、行政はグローバルに活躍できる次世代のリーダーを育成するため、学生、一般市民の海外留学や民間企業における若手職員の海外研修を支援していくべきであろう。
第三の「日本人と外国人が分け隔てなく安心して快適に生活ができる環境、地域性を備えた都市」を形成していくためには、いわゆる「多文化共生」を実現する取組みが必要である。ここに、多文化共生とは、国籍や民族などの異なる人々が、互いに認め合いながら、地域社会の構成員として共に生きていくことを指す。この多文化共生を進めていく上で一番大きな課題が言語問題である。日本語に対する学習意欲が高いにもかかわらず約2人に1人の外国人が日本語に困ることがあると回答する現状を踏まえ、行政は、ボランティアやNPOなどの協力を得ながら、外国人に対する日本語教育の場を設けていくべきである。また、日々の生活をサポートするべく外国人専用の相談窓口を設置することも必要である。困ったことがあったときに気軽に相談できる窓口が身近にあるというのは非常に心強い。今後はボランティアやNPOなどの協力を得て対応できる言語の幅を広げることや、このような機関の数自体を増やしていくことが求められる。
今後、日木における国際化の波はより加速化していくことが予想される。そうした中で外国人にとって魅力的な日本であり続けるためには、それぞれの自治体が国際都市の実現に向けた取組みを講じていかなければならない。
<添削>
外国人は日本の心に触れることを目的として観光に訪れることが多い。外国人が訪日の際に期待することとして日本食を食べることや自然・景勝地観光、温泉入浴といったものを挙げていることからも推測できる
→日本の心と言いながら、日本食、自然・景勝地観光、温泉入浴と表面的な列挙で終わっています。これらが日本の心であると言う説明が必要です。
行政は当該自治体が現在保有しているモノをこのような外国人観光客の視点に立って資源化することが求められる。海外メディアを招聘したり、海外旅行エージェントに向けた商談会を開催したりするなど、より積極的な観光プロモーションを講じる必要がある
→その前に現地の住民がそれを望んでいるかを確認しなければなりません。優先されるのは観光客ではなく、住民です。
外国人からの要望として最も多い無科Wi-Fiについても順次完備していく。
→日本人は有料だったが、外国人のためだったら無料にすると言うのは反発を招きます。
外国企業の誘致を推進したり、
→徒らに外国企業を誘致するのではなく、国内企業の保護とのバランスが必要です。
この多文化共生を進めていく上で一番大きな課題が言語問題。日本語に対する学習意欲が高いにもかかわらず約2人に1人の外国人が日本語に困ることがあると回答する現状を踏まえ、
→「日本語に困る」と「日本語に困ることがある」は異なります。この回答では、全く日本語に困ったことがない外国人が2人に1人もいることになってしまいます。
ボランティアやNPOなどの協力を得ながら、外国人に対する日本語教育の場を設けていくべきである。
→安易にボランティアやNPOに協力を求める前に、どのような日本語教育が必要かを提示してください。
日々の生活をサポートするべく外国人専用の相談窓口を設置することも必要である。
→誰が対応するのか、人員を確保しなければいけません。しかし、そうであるのなら、その人材は通訳などに回した方が良いかもしれません。
それぞれの自治体が国際都市の実現に向けた取組みを講じていかなければならない
→どのような取組みをするのか、具体的に示しましょう。
(参考)例題模範解答例
今後、訪日外国人が増えるとともに、就労などで日本に居住する外国人も年々増加すると予想されている。しかし、低賃金で劣悪な環境の中、長時間労働を強いられる者も多い。訪日外国人に対しての環境整備が急速に進められたのとは対称的に、外国人労働者に対する整備は遅れている。本稿では、1、外国人労働者教育が消費市場を広げ、国益に資することを論じ、2、外国人教育の具体的施策を提案する。
1、外国人労働者教育により消費市場を拡大
日本は少子高齢化により、①国内の生産力が低下し、②消費が停滞すると予測されている。①は外国人労働者を活用する他に、AIの導入などによる対策が検討されているが、②を鑑みるに、外国人労働者を一定の消費者に引き上げ、市場の拡大を図る施策を提案する。外国人労働者は出稼ぎであることが多く、更に日本語能力が低いことで意思疎通ができない者も多いため、差別的扱いを受ける傾向がある。これらの偏見が原因で、賃金を含めた労働環境の改善に対し世論の反発が強い。しかし、環境を整備し、教育を施し技能を修得させて所得を増やすことで、労働者層を消費者に引き上げることができる。
新たな消費者市場の拡大は日本の経済を活性化させる。かつて日本が飛躍的に経済発展を遂げた明治時代や終戦後において、農村部の教育が産業の担い手を育み経済を支えた。同様に、長期的展望に立った場合、外国人労働者を引き上げることは、日本の国益につながる。教育は未来への投資の側面が強いが、特に外国人教育は今後の日本の国益に資する見込みが大きい。だが、外国人に対して自治体が予算を投じることに大きな反発も予想される。まずは経済学者などの有識者に協力を要請し、教育投資が生み出す効果の理論を構築させていく。
また理論の面だけではなく、印象・感性の面からも外国人労働者への偏見を払拭していく必要がある。具体的には、①親日であり日本や日本人に憧れを抱いて来日した者が多い②外国人労働者が日本人の生活を支えている③外国人労働者を同胞として教育を施すことが、長期的には消費を拡大させ日本の国益となる、と言う三点を強調したい。劣悪な労働環境や低賃金であることも改善すべき点ではあるが、労使対立を煽ると偏見を助長する恐れがあるので注意を要する。
日本では低賃金労働者だったとしても、祖国に帰れば技術水準の違いにより、リーダーとなる場合も多い。日本で教育を施し、知識や技能を得て祖国に戻れば、国家振興の中心人物として活躍し得る。振興による経済発展で市場が形成されれば、進出する日本企業にとっても有益である。
グローバル化が進む中で、日本の国内市場のみならず、海外の市場を開拓していくことが今後の経済発展につながる。在日外国人労働者への教育が、長期的には国内外の市場を開拓し国益に資することとなる。
2、外国人教育への具体的施策
外国人教育に対し成果のある教育機関に助成金を交付するなどの支援の他に、少子化により空いた学校の教室を活用させたり、空き家を積極的に教育目的で活用するプロジェクトを作っても良い。
しかし、形式のみ支援をしても即時効果は期待できない。ボランティアやNPOに委託することもできるが、付け焼刃として労働のためだけの最低限の教育のみでは、経済的自立に導くことは難しい。就労目的の教育に終始するのではなく、次世代を育む教育を提供したい。具体的には、数学、物理、化学、プログラミングと言った理数系科目を中心に、日本語、日本史など日本への理解を深める科目、更には、政治、経済などの社会の仕組みを学ぶ科目の設置が考えられる。優秀な人材が輩出され、教育による効果が広く認知されれば、外国人教育の分野にも民間企業の進出が加速される。