子どもの貧困問題 公務員試験論文例題

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子どもの貧困問題 例題 
日本の将来を担う子どもたちは国の一番の宝であり、子どもたちが自分の可能性を信じて前向きに挑戦することにより、未来を切り拓いていけるようにすることが何よりも重要です。しかし、現実には、貧困が世代を超えて連鎖し、子どもたちの将来がその生まれ育った家庭の事情や環境などによって左右されてしまうことも少なくありません。
このような状況を踏まえ、社会における子どもの貧困問題について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

次に、一般的に陥ってしまいがちな列挙形式答案を提示します。一部に不具合があるため、それを添削することで、公務員として相応しい着眼点を養います。そして適宜、自分の構成メモも修正してみましょう。
これは、昔の基準であれば合格レベルとされたかもしれません。しかし、今では減点される要素を多く含んでいます。さあ、採点者になったつもりで、この答案を添削し、何がダメなのかを考えてみましょう!
<旧来型列挙形式答案>
近年、子どもの貧困が社会問題になっている。厚生労働省の調査では、18歳未満の子どもの7人に1人が貧困状態である。つまり、国民の平均的な所得の半分を「貧困線(122万円程度)」と呼ぶが、その基準に満たない所得の低い世帯の子どもが7人に1人もいるということである。しかし、私の友人の7人に1人が貧困と言われても、そのような人は周りにいないため、この調査は実感がわかない。深刻なのは、母子家庭などのひとり親世帯の子どもなのだと思う。子どもの貧困が生じる背景には格差の拡大がある。つまり、離婚などによるひとり親世帯の増加に加え、規制緩和の流れの中で、企業が正規労働者を減らし、非正規労働者を増やしたことが貧困率を引き上げる大きな要因となってきたのである。では、子どもの貧困に対して、行政はどのような対策を講じていくべきなのか、以下具体的に述べる。
第一に、ひとり親世帯、特に母子家庭の貧困を防ぐために、就労支援に力を入れ、正規比率を上昇させる取組みを講じるべきである。そのために行政は、非正規労働者の正規労働者への転換、及び人材育成に取り組む企業に対して支援の手を差しのべることが必要である。また、ひとり親の中には、最終学歴が中学までという割合も高く、そのため良い条件で就職できていないケースもある。そこで、行政は、高卒認定試験合格のための講座を開講し、各人のキャリアアップを支援していくべきである。例えば、受講費用の一部助成などの金銭的支援をしていくと効果的だろう。さらに、子育てや仕事の悩みを気軽に相談できる窓口を充実させることや各種セミナーを設けることも重要である。このように、行政のカウンセリングを受け、ひとり親同士で子育ての悩みや困りごとを話し合う機会を利用することで、ストレスをため込まずに子育てに向き合うことができる。
第二に、子どもに対する学習支援を講じるべきである。貧困家庭の子どもは、経済的理由により塾に通いたくても通えないため、学力が身につかずに高校を中退したり、大学進学を諦めたりするケースが多い。それが将来の就職に影響を与え、生まれ育った家庭と同じように経済的に困窮するという貧困の連鎖を生んでいる。そこで、行政は、このような子どもに対し、退職した教師や大学生ボランティアの協力のもと、無科の学習支援を行っていくことが求められる。現在、地域のボランティアが主体となって子どもや親などを対象に、子ども食堂を開設し、無料で食事を提供する取組みを行っている。このような取組みを学習支援にも拡充することで、生まれ育った環境に関係なく学びたい子どもの意欲に応えることが必要である。
第三に、今後は、貧困の早期発見・早期支援に乗り出すことも検討していくべきである。例えば、子どもを持つ全世帯の協力を求めて貧困の実態調査を行うのはどうだろうか。保護者の所得や公共料金の支払い状況、子どもの健康状態や食生活などについてアンケート回答を求め、明らかとなった課題に対して重点的に取り組むのである。確かに、これは個人のプライバシーに抵触することになるため反対する人も多いだろう。しかし、子どもの貧困は虐待や不登校、非行などの新たな問題を引き起こす要因ともなり得る。また、子どもの将来に大きな影響を与える問題であるからこそ、事態が深刻化する前に支援の手を差しのべる必要がある。そこで、まずは住民の理解を得ながら、貧困の実態を正確に把握することから始めるべきである。
子どもの貧困という構造的な課題を解決するためには長期的に継続した取組みが必要である。全ての子どもが生まれ育った環境に左右されることなく将来に夢や希望を持てる地域社会を実現するため、行政とともに私たち一人ひとりが真剣に考えていかなければならない。

<添削>
私の友人の7人に1人が貧困と言われても、そのような人は周りにいないため、この調査は実感がわかない。
→平均すると7人に1人ですが、貧困層は均等に分布しているわけではなく、偏って分布しています。自分が貧困でなければ、自分の周りも貧困層が少なく、貧困であれば周りも貧困だらけと言う実感になります。個人的な要因に左右されるため、実体験を論文に入れてはいけません。
深刻なのは、母子家庭などのひとり親世帯の子どもなのだと思う。
→感想の書き方になっています。思い込みで決めつけている印象を与えるので、根拠を示しましょう。
離婚などによるひとり親世帯の増加に加え、企業が正規労働者を減らし、非正規労働者を増やしたことが貧困率を引き上げる大きな要因
→最近は正規労働者が増えていますが、残業代カットなどで生活が苦しくなった家庭もあります。非正規が多いと言う感覚だけで議論を展開してしまうと、最近の時事に疎いと思われてしまうかもしれません。
就労支援に力を入れ、正規比率を上昇させる取組みを講じるべきである。そのために行政は、非正規労働者の正規労働者への転換、及び人材育成に取り組む企業に対して支援の手を差しのべることが必要
→どのような支援をするのかまで踏み込みましょう。人材育成に取り組む企業は殆どの企業が当てはまってしまうため、基準が必要です。
行政は、高卒認定試験合格のための講座を開講し、各人のキャリアアップを支援していくべき
→貧困の家庭は目の前の生活で手一杯であることが多く、講座を受講する余裕はありません。実態を把握していないと思われてしまいます。
受講費用の一部助成などの金銭的支援をしていく
→これも基準をどうするのかが問題となります。受講できる人と言うのは比較的生活に余裕のある人です。すると、余裕のある人は助成金を受けられるのに、余裕の無い人はそもそも受講ができないので助成を受けられない、と言うおかしなことになってしまいます。
子育てや仕事の悩みを気軽に相談できる窓口を充実させることや各種セミナーを設ける
→貧困層は世の中に引け目を感じているので、富裕層のように気軽に悩みを相談することができず、抱えてしまう人が多いです。また、貧困層をターゲットにした貧困セミナーを開催しても、わざわざ自分から貧困と認めて参加する人がいるのかを考えましょう。当事者の立場を考えず偽善の押し付けの施策となり、採点者からの評価は低くなります。
行政のカウンセリングを受け、ひとり親同士で子育ての悩みや困りごとを話し合う機会を利用することで、ストレスをため込まずに子育てに向き合う
→ひとり親は引け目を感じているため、ひとり親であること自体すら隠す傾向にあります。無理に行政がひとり親を引っ張り出して来て悩みを話し合えと言っても、実際にはなかなか難しいでしょう。
退職した教師や大学生ボランティアの協力のもと、無科の学習支援を行っていく
→退職した教師や大学生ボランティアは集まるでしょうが、しっかりと責任を持って取り組み、教育の質を担保できるでしょうか。その辺りまで考えて考案してみましょう。
学習支援にも拡充することで、生まれ育った環境に関係なく学びたい子どもの意欲に応える
→貧困層で学ぶ意欲がある子どもは少なく、その前に寧ろ、貧困層の子どもに、いかに学習意欲を湧かせるかが大切です。
保護者の所得や公共料金の支払い状況、子どもの健康状態や食生活などについてアンケート回答を求め、明らかとなった課題に対して重点的に取り組む
→自分の家庭の貧困を正直にアンケートに記入するでしょうか。また、アンケートに答える時間的・精神的余裕が無いことも多く、正確な情報は把握できないでしょう。
個人のプライバシーに抵触することになるため反対する人も多いだろう。しかし、子どもの貧困は虐待や不登校、非行などの新たな問題を引き起こす要因ともなり得る。また、子どもの将来に大きな影響を与える問題であるからこそ、事態が深刻化する前に支援の手を差しのべる必要がある。そこで、まずは住民の理解を得ながら、貧困の実態を正確に把握することから始めるべきである。
→貧困は問題を引き起こし、将来に大きな影響を与えるから、プライバシーに抵触しても良い、と言うことなってしまいます。これでは論理の摺り替えです。プライバシーの問題には、匿名にするなど、プライバシーに対応した取り組みを提示しなければなりません。
長期的に継続した取組みが必要
→長期的に継続した取り組みとは具体的に何をするのでしょうか。
私たち一人ひとりが真剣に考えていかなければならない。
→最終的にどんな問題もこれが当てはまりますが、公務員の結論として、一人ひとりが考える、だけでは全く足りません。解決策を提示するのが公務員の役割です。

(参考)例題模範解答例
保護者に対しての間接的救済施策および子どもに対しての直接的救済施策が考えられるが、保護者は日々の生活のための工面で疲弊しており、スキルアップなどを奨励されても時間的にも金銭的にもその余裕が無い場合が多い。所得が増えたとしてもそれを子どもにまわすとは限らないため、保護者に対する施策は効果が限られる。よって、本稿では子どもに対しての施策に保護者の理解を促す方針に限定し、学習・情報支援を基調する貧困連鎖予防の具体案を提示し、その妥当性を論じる。
1、行政が積極介入する必要性
貧困層を救済すると言う個人的側面のみならず、教育により、その後の産業の担い手となる層の育成や、貧困層を富裕層に上げることにより消費層を拡大し、経済の活性化につなげる国家全体の利益につながる。しかし、対象が貧困であるため、民間企業が営利事業として改善に取り組む可能性は低い。また、慈善事業としても、主催者自身の家庭と関わりがない、もしくは、貧困層支援により競争率が上がり富裕層の進学に不利益を被る恐れが生じるため大きくは期待できない。よって、行政による積極的な施策が必要となる。
2、子どもおよび保護者への情報提供の強化
かつては学習支援を享受するためには塾などの有料の機関に通うか、学校の教師に委ねるかの直接的に指導を仰ぐ方法しか選択肢がなかった。貧困層は塾に通う費用を捻出できず、また学校の教師は雑務に追われ放課後指導に時間を割くことができず、十分に指導を受けることができない子どもの学力が低下してしまうことが多かった。教師に指導を徹底させる方策は時間外労働の負担を増すことになる。大学生や定年退職後の元教師のボランティアを募り指導を提供する方策は一定の効果は見込めるが、無償のため指導の質や責任を担保し得ない。一方で、指導を仰ぎたい子どもが殺到する有能指導者の場合、貧困層以外の層も指導を希望するため、相対的に貧困層の子どもの直接的救済につながる可能性が低くなる。しかし、良い教育を貧困層のみに限定してしまっては、逆差別となる。
これらの問題を解消するため、学習支援そのものではなく、「学習支援資料の検索スキルを子どもに提供するとともに保護者に理解を促す」と言う施策を提案する。近年、インターネット上において無料で質の高い指導を提供する動画やページが出現している。これらを効率的に活用するスキルを身に付ければ、無料で上質の教育を受けることができる。実施のためにボランティアを募るが、直接指導をするのではなく、該当するコンテンツを検索する方法を教える。ネット上には様々なコンテンツがあるため、使用方法さえ習得すれば各自で臨機応変に活用することができ、自律学習を促進する。また、ボランティアも負担が軽減するため、一度に多くの子どもをサポートすることができる。スマートフォンの無い子どもに対しては学校や行政側から機能制限を教育に限定した上で無料で貸し出したり、時間を決めてその場で利用させたりすることで対応する。
付随する懸念事項として、中には学力に対し価値を置かない保護者が、このような行政の取り組みに異議を唱える恐れがある。無知により徒らに学費の心配をしているケースが多いため、子どもの進学や就職などの進路選択で生ずる平均所得の変化や、学費免除の制度などを行政側からも徹底周知する必要がある。


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