カスハラ・セクハラ義務化時代に求められる「研修設計の3原則」~義務だからやる研修ではなく、”守られている”を実感できる研修設計~

記事
コラム
■ 法律が変わった日 ― 企業の「姿勢」が問われる時代へ
2025年6月4日。
企業の在り方に大きな影響を与える法改正が、静かに成立しました。
カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化
求職者へのセクハラ防止の義務化
女性管理職比率の公表義務化
これまで「できればやる」だった取り組みが、ついに「やらなければならない」ものへと変わったのです。

■ 義務化された今、研修に求められるものとは?
私が企業研修を設計・実施してきた中で、常に意識していることがあります。
それは――
研修は“伝える場”ではなく、“守る力を育てる場”でなければならないということ。
今回の法改正を受け、形式的な知識提供に終始する研修では、現場の「守られている感」は育ちません。
必要なのは、“義務”としてではなく、“希望”として参加したくなる研修設計です。

■ 研修設計の3原則(義務化時代の視点で見直す)
✅ 原則①:「感情の境界線」を言語化する
カスハラ対策でまず必要なのは、「どこからが行き過ぎた言動なのか」という境界線の共有です。
参加者にとってそれが曖昧なままでは、「これは我慢すべきか」「どこまで言っていいか」と迷いが残ります。
💡【設計の工夫】
クレームとカスハラの違いを事例で視覚化
“許容される不満”と“人格否定”の線引きを言語で明示
「透明なバリア」「巻き込まれない感情の距離感」など、比喩を用いた設計が有効です

✅ 原則②:「守るのはあなた一人じゃない」と伝える
企業のカスハラ対応で見落とされがちなのが、“組織で対応する”という安心感の欠如です。
研修では、個人スキルだけでなく、
相談していいこと
エスカレーションの方法
上司や管理職の支援体制
…などを明確に伝え、「守られる設計」そのものを実感できる構成が必要です。
💡【設計の工夫】
ケースワークの中で「あなた一人で判断せずに、どう連携するか」を考える時間を組み込む
管理職と現場職員の“温度差”を埋める対話型の構成も有効です

✅ 原則③:「言い返さずに伝える技術」を体験で習得する
義務化によって生まれる最大の危惧は、「ルールを守れ」と伝えるだけの研修になってしまうこと。
現場で必要なのは、“毅然としたやわらかさ”です。
例えばDESC法、YESセット、共感→提案のフレームなど、
相手の怒りに巻き込まれず、関係を壊さない伝え方を体験として身につける構成が効果を発揮します。

💡【設計の工夫】
「実際に自分が受けた/見たカスハラ体験」を素材に、ロールプレイや言い換えワークを行う
フィードバックを「正解」ではなく、「あなたらしい伝え方」に向けると自信が育ちます

■ まとめ:義務化が生んだ「問い」に、研修でどう応えるか
2026年からは、カスハラやセクハラへの対応が法的義務となり、避けては通れない時代がやってきます。
でも――
その研修が、「面倒な義務」になるのか、
「参加してよかった」「守られている」と実感できる機会になるのかは、設計次第です。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す