鬼と戦わない桃太郎シリーズ第3弾 チームビルディング編
この物語は、桃太郎がきびだんごをあげる代わりに、犬・猿・きじが鬼ヶ島へおともした本当の理由に迫り、そして鬼ヶ島までの道のりに焦点をあてた、管理職の方やリーダー向けのチームビルディングのコツがたくさん詰まった新しい物語です。
春:出会いと適性の発見
桃太郎: 「さて、鬼ヶ島へ行く準備を始めよう。でも、一人じゃ無理だよな…仲間を探さなきゃ。」
桃太郎が歩き始めると、まず犬に出会います。
犬: 「おい、そこのお兄さん、何かお困りですか?」
桃太郎: 「僕、鬼ヶ島に行くんだ。でも、一緒に行く仲間がいなくてさ。」
犬: 「鬼ヶ島?危険じゃないですか?でも、嗅覚には自信があるので、匂いで道案内はできますよ。」
桃太郎: 「おお!頼りになるな。ぜひ一緒に来てほしい!」
次に猿に出会います。
猿: 「鬼ヶ島?面白そうだね。僕、手足が長いからどんな高い所にも登れるよ。役に立つと思う!」
桃太郎: 「それはすごい!一緒に行こう!」
最後にキジと出会います。
キジ: 「鬼ヶ島って…危険な場所よね。でも私、高いところから全体を見渡せるから、敵の動きがすぐに分かるわ。」
桃太郎: 「君の力があれば心強いよ!」
こうして、桃太郎はそれぞれの特性を活かした役割を与え、チームがスタートしました。
しかし、彼らが桃太郎について行ったのは、単にきびだんごをもらえたからではありませんでした。その前に、彼らには桃太郎に対する特別な信頼と共感が生まれるきっかけがあったのです。
隠された真実~桃太郎の人間的信頼~
犬: 「桃太郎さん、あんた、なんで鬼ヶ島に行こうと思ったんだい?」
桃太郎: 「鬼たちが村を困らせているんだ。力のない人たちが苦しんでいるのを見ると、黙っていられなくて。」
犬: 「あんた、正義感が強いんだな。でもそれだけじゃない…その優しさ、本物だ。」
犬は桃太郎の目を見て、彼が本気で村人のために戦おうとしていることを感じ取りました。犬は自分も村の役に立ちたいという「公欲」に突き動かされ、桃太郎について行くことを決めました。
猿: 「桃太郎、聞いたぜ。道端で倒れてたおじいさんを助けたって。お前、普通じゃないよな。」
桃太郎: 「そんなことないよ。ただ、目の前で困っている人がいたら放っておけなくて。」
猿はその言葉に心を動かされました。桃太郎が示す行動は、常に言葉と一致しており、一貫した正義感と優しさを持っていました。猿はその一貫性に信頼を感じ、「この人について行けば間違いない」と確信しました。
キジ: 「桃太郎、あなたが村の子どもたちに絵本を読んであげている姿を見たわ。子ども達一人ひとりの長所を見つけて、絵本を読む間に、子ども達に声をかけながら、読み聞かせしていたね。」
桃太郎: 「子どもたちには笑顔でいてほしいんだ。それが僕の願いなんだよ。」
キジはその姿を見て、桃太郎が誰に対しても平等に接し、その人が必要としている言葉や行動を自然に提供していることに感動しました。「自分の長所も認めてもらえるかも」という承認欲求が満たされる期待感が、キジを桃太郎について行く決意へと導きました。
こうして、犬、猿、キジはそれぞれ自分の中にある「公欲」「一貫性への信頼」「承認欲求」を通じて桃太郎について行くことを決めたのです。きびだんごはただの象徴にすぎず、彼らを動かしたのは桃太郎の人間性そのものでした。
夏:部分最適の発生と対立
暑い夏の日、チームは森の中で休憩していました。
犬: 「桃太郎さん、この先の道、匂いで分かるけど、少し危険な感じがする。」
猿: 「いや、そっちより僕が木の上から見た道の方が良いと思う。」
キジ: 「待って、私が空から確認したけど、猿の言う道は遠回りになるわ。」
チーム内で意見が対立し、空気がピリピリしてきました。
桃太郎: 「みんな、ちょっと待って!意見を聞かせてほしい。それぞれ、どうしてそう思ったのか教えてくれる?」
犬: 「僕が危険だと感じたのは、匂いが普段と違うからなんだ。この道は動物たちが避けているみたいで、何かトラブルがある可能性が高い。」
猿: 「でも、この道は高い位置から見ると道幅が広くて通りやすそうなんだ。遠回りになるけど、通りやすいってことは、疲れにくいってメリットがあるよ。」
キジ: 「私が見たところでは、猿の言う道は遠回りになるけど、全体の地形を考えると、危険を避けるには良いかも。けど、進む時間が長くなるのが難点ね。」
桃太郎は、全員の意見を丁寧に聞きながら、質問を投げかけました。
桃太郎: 「犬が心配している危険の正体をもう少し詳しく知りたいね。猿、キジ、犬が感じているデメリットは何だと思う?」
猿: 「犬が言う危険が本当なら、リスクが高いのは問題だね。でも、道幅が広い分、進むのが楽なのは大きい。」
キジ: 「私としては、安全に越したことはないけど、時間がかかるのもストレスになるわ。」
桃太郎は考えをまとめながら、話し合いの場を進めました。
桃太郎: 「みんなが思っていることを遠慮なく話してくれたおかげで、全体像が見えてきた。意見を言えないままにすると、後で不満がたまることもあるから、こうして話せてよかったよ。」
犬: 「そうだね。最初は僕も自分の意見を言うのが迷ったけど、桃太郎さんが引き出してくれたおかげで安心して話せたよ。」
猿: 「確かに。空気を読んで黙っている方が楽なときもあるけど、溜め込むと疲れるし、こんなふうに話せる場があると助かる。」
桃太郎: 「僕たちはチームだ。だから、多数決じゃなくて、みんなが納得できる形で進めたいんだ。全員が協力してくれることが大事だからね。」
最終的に、チームは犬の意見を採用しつつ、猿とキジの懸念点を補うための策を考えました。
桃太郎: 「この道を進むけど、匂いが怪しい場所では一度止まろう。そして、猿とキジの視点で確認する。これならどうかな?」
猿: 「いいね。それなら全員が納得できる。」
キジ: 「安心して進めそうね。」
こうして、チームは多数決ではなく合意形成を通じて、より良い選択を見つけ出しました。心理的安全性が確保された環境で、メンバー全員が意見を出し合うことの重要性を実感し、互いの信頼を深めていきました。
チームビルディングと信頼構築の解説
物語「鬼と戦わない桃太郎シリーズ」の前編(春・夏)では、桃太郎と犬、猿、キジが出会い、チームを形成していく過程が描かれました。この物語には、ビジネスや日常生活でも応用できるチームビルディングや信頼構築のヒントがたくさん詰まっています。以下では、春と夏のシーンを中心に、物語に込められた重要な要素を解説します。
解説1. チームビルディングの春:出会いと適性の発見
春のシーンでは、桃太郎が犬、猿、キジと出会い、それぞれの特性(嗅覚、機敏さ、俯瞰力)を見抜き、役割を与えます。このプロセスは、チームビルディングの初期段階で非常に重要です。
ポイント:
適性を見抜く: 桃太郎は、犬、猿、キジそれぞれの特性に応じた役割を与えました。これにより、メンバーは自分の存在意義を感じ、主体性が現れ、モチベーションが向上します。
信頼の基盤を築く: 桃太郎は、物語の中で「正義感」と「優しさ」を示し、犬、猿、キジからの信頼を得ます。信頼は、リーダーが行動を通じて示す一貫性と誠実さから生まれます。
信頼構築の視点:
一貫性: 桃太郎は言葉と行動が一致しており、猿から「この人について行けば間違いない」という信頼を得ました。
公欲: 犬は桃太郎の「人を助けたい」という公欲に感激して、動機付けられました。
他人の承認欲求を満たす: キジは「自分の長所も認めてもらえるかも」という承認欲求が満たされる期待感を持ちました。
解説2. チームビルディングの夏:部分最適と心理的安全性
夏のシーンでは、メンバー間の意見が対立する場面が描かれました。この対立を乗り越える過程が、チームの成長において重要です。
ポイント:
意見の対立を受け入れる: 桃太郎は、犬、猿、キジそれぞれの意見を聞き、全員が納得できる形での解決策を導き出しました。
心理的安全性の確保: メンバーが自分の意見を自由に発言できる環境を作ることで、信頼が深まりました。
心理的安全性とは:
メンバーが自分の意見を遠慮なく言える環境。
ミスや異なる意見を恐れずに表明できることが、チームのパフォーマンス向上につながります。
好意返報性の法則: 桃太郎は、メンバーの意見を真剣に受け止め、行動に反映しました。このような態度が「相手も信頼に応えよう」という感情を生み出し、チームの一体感を高めました。
解説3. コーチングとアサーティブコミュニケーション
コーチングの視点: 桃太郎のリーダーシップは、強制ではなく、メンバーそれぞれの意見や特性を引き出すコーチング型でした。
質問を通じて意見を引き出す。
メンバーが自ら納得して行動するプロセスを支援。
アサーティブコミュニケーション: アサーティブな態度とは、自分の意見を主張しつつ、他人の意見も尊重することです。
犬、猿、キジの全員が自分の意見を発言し、互いに配慮しながら議論を進めました。
桃太郎は「多数決」ではなく「合意形成」を重視し、チーム全員が納得して前進できる道を選びました。
メンバーの主張をアウトプットさせることで、メンバーに「言いたいけど我慢しよう」とする見えない主張を溜め込ませず、メンタルを安定に保ちました。
解説4. 信頼構築の要素
物語に登場する信頼構築の要素を以下に整理します。
一貫性:
言葉と行動を一致させることが、他者からの信頼を得る鍵となります。
公欲:
自分の利益だけでなく、社会や他者に貢献したいという欲求が、強力な内発的動機付けになります。
承認欲求を満たす:
他者を認め、その貢献を評価することは、信頼関係を深める重要な手段です。
心理的安全性:
チームメンバーが自由に意見を述べられる環境を作ることで、ストレスを軽減し、創造的なアイデアを引き出せます。
好意返報性の法則:
リーダーが誠実に接することで、メンバーもそれに応えようとする心理が働きます。
解説5. おわりに
春と夏の物語を通じて、チームビルディングや信頼構築のプロセスをご参考頂けば幸いです。これらの要素を実生活や職場で活用することで、より良い人間関係やチーム運営に活かしていただければ、桃太郎さんも大喜びです。
次回の後編では、秋と冬を舞台に、さらに深まるチームの絆と成長を描きます。お楽しみに!