その人の前に出ると、
いつもの自分がどこかへ行ってしまう。
友達と話している時は、
普通に笑える。
冗談も言える。
思ったことも言える。
少しくらい失敗しても、そんなに気にならない。
でも、その人の前だと違う。
言葉を選びすぎてしまう。
変に思われないか気になる。
笑い方まで、不自然になっている気がする。
本当はもっと普通に話したいのに。
自然に笑って、
自然に返事をして、
いつもの私でいたいのに。
好きになりかけている人の前では、
それが急に難しくなる。
相手が近くにいるだけで、
心が少し忙しくなる。
今日は髪、変じゃないかな。
服、合っているかな。
顔、疲れて見えないかな。
変なこと言ってないかな。
いつもなら気にしないことまで、
急に気になってしまう。
話しかけられると嬉しい。
でも同時に、緊張する。
「今、なんて返せばいいんだろう」
頭の中で考えているうちに、
返事が少し遅れてしまう。
あとから思い返して、
もっと違う言い方をすればよかったと思う。
あの時、笑いすぎたかな。
逆にそっけなかったかな。
変に意識しているの、バレたかな。
たった数分の会話を、
帰ってから何度も思い返してしまう。
本当は、もっと話したかった。
聞きたいこともあった。
「休みの日は何してるの?」
「好きな食べ物は?」
「また今度話せるかな?」
そんな何気ないことを聞くだけなのに、
その人が相手だと急に勇気がいる。
聞いたら、興味があることがバレる気がする。
近づきたい気持ちが見えてしまう気がする。
だから結局、
当たり障りのないことしか言えない。
あとから、ひとりで落ち込む。
どうしてもっと普通に話せなかったんだろう。
どうしてあんな返し方をしてしまったんだろう。
せっかく話せたのに、
うまくできなかった。
好きな人の前では、
小さな会話さえ大きな出来事になる。
相手はきっと、
そんなに気にしていないのかもしれない。
でも自分の中では、
一言一言が残ってしまう。
言えたこと。
言えなかったこと。
笑えた瞬間。
沈黙してしまった時間。
全部が気になる。
そして少しずつ、
その人の前に出るのが怖くなる。
会いたい。
でも、会うと緊張する。
話したい。
でも、うまく話せなかったらどうしよう。
近づきたい。
でも、変に思われたくない。
そんな気持ちが重なって、
心がぎゅっとなる。
私はその人に、
よく見られたいのかもしれない。
優しい人だと思われたい。
感じのいい人だと思われたい。
話しやすい人だと思われたい。
できれば、少しでも特別に見てほしい。
だからこそ、
失敗したくなくなる。
でも、失敗したくないと思えば思うほど、
いつもの自分ではいられなくなる。
自然にしようとすればするほど、
自然じゃなくなる。
意識しないようにしようとするほど、
余計に意識してしまう。
そんな自分に疲れてしまう。
ある日、その人と少しだけ話す時間があった。
本当は嬉しかった。
でも私は、
緊張してうまく目を見られなかった。
笑顔でいたつもりだったけれど、
どこか固かったかもしれない。
その人が話してくれているのに、
私は頭の中でずっと考えていた。
ちゃんと聞けているかな。
相づち、変じゃないかな。
今、笑うところかな。
何か返したほうがいいかな。
相手の話を聞いているようで、
実は自分がどう見えているかばかり気にしていた。
帰り道、
少し悲しくなった。
本当は、もっとその人の話を聞きたかった。
もっと素直に笑いたかった。
もっとその時間を楽しみたかった。
でも私は、
嫌われないようにすることに必死で、
目の前の時間を楽しめていなかった。
好きな人の前で自然にできないのは、
あなたが不器用だからではないのかもしれない。
その人にどう思われるかが、
大切になっているから。
その人との時間を、
失敗したくないと思うくらい大事にしているから。
嫌われたくない。
変に思われたくない。
できれば好印象でいたい。
そう思うのは、
恋が始まりかけている時には、とても自然なこと。
でも、ずっと完璧な自分でいようとすると、
心は疲れてしまう。
明るくいなきゃ。
気の利いたことを言わなきゃ。
感じよくしなきゃ。
失敗しちゃいけない。
そう思い続けると、
本当の自分がどんどん奥に隠れてしまう。
本当は、
少し言葉に詰まってもいい。
緊張してもいい。
うまく話せない日があってもいい。
好きな人の前でぎこちなくなるのは、
恥ずかしいことではありません。
それだけ心が動いているということ。
それだけ大切に感じているということ。
そして、
それだけ慎重になっているということ。
完璧に話せなくても、
あなたの魅力がなくなるわけではありません。
少し緊張しても、
それで全部が台無しになるわけではありません。
むしろ、
一生懸命言葉を選んでいるところや、
少し照れてしまうところも、
あなたらしさの一部なのかもしれません。
恋が始まる前は、
相手にどう見られるかばかり気になります。
でも本当は、
「相手に好かれる自分」だけを作らなくてもいい。
少しずつでいいから、
「いつもの自分」も出していけたらいい。
好きなものを好きと言う。
楽しかったら笑う。
分からないことは分からないと言う。
無理に明るくしすぎない。
そんな小さな自然さが、
本当の距離を少しずつ近づけてくれることもあります。
もちろん、急に素を出さなくても大丈夫です。
最初は緊張して当然です。
意識してしまって当然です。
でも、うまくできなかった日も、
自分を責めすぎなくていい。
「今日は少し緊張したな」
「でも、話せて嬉しかったな」
「次はもう少し自然に笑えたらいいな」
そのくらいでいいのです。
恋は、上手に振る舞える人だけが進めるものではありません。
緊張しながらでも、
不器用でも、
少しずつ心を近づけていくことができます。
もし今、あなたが
「好きな人の前だと緊張してしまう」
「自然に話したいのに、変に意識してしまう」
「嫌われたくなくて、いつもの自分が出せない」
そんな気持ちを抱えているなら、
自分を責めなくて大丈夫です。
うまく話せないのは、
あなたに魅力がないからではありません。
その人との時間を、
大切に感じているからです。
まずは、
緊張している自分にも優しくしてあげてください。
自然にできない自分も、
好きになりかけている自分も、
どちらも大切なあなたです。
心葉(ここは)では、
あなたの気持ちを否定せずにお聞きしています。