暮らしやすさはどの世代にも関係するもの
「暮らしやすい部屋」と聞くと、高齢の方や介護が必要な方のためのもの、というイメージがあるかもしれません。
でも私は、暮らしやすさはどの世代にも関係するものだと思っています。
一人暮らし、子育て、家事、仕事、介護。
どんな暮らしの中にも、小さなストレスはあります。
そしてそのストレスは、
部屋の環境を少し見直すことで、減らせるかもしれません。
今回は、理学療法士として人の暮らしを見てきた経験と、
インテリアコーディネーターとしての視点を合わせて、
「暮らしやすい部屋」について書いてみたいと思います。
お家を見せてもらう中で、感じたこと
理学療法士として働いていた頃、退院前の家屋訪問や訪問リハビリを通して、実際にその方が暮らすお家を見せていただく機会がありました。
病院ではできていた動作が、家に帰ると急に難しくなることがあります。
たとえば、
・生活動線に、段ボールや買い物したものが置きっぱなし。
・床に物が多く、歩きにくい。
・椅子やベッドの高さが合っていない。
・必要なものが取り出しにくい場所にある。
そういった場面を見るたびに、
暮らしやすさは、身体の状態だけで決まるものではなく、
住まいの環境にも大きく左右されるのだと感じていました。
子どもも親も、穏やかに過ごせる部屋へ
でもこれは、高齢の方や介護が必要な方だけの話ではありません。
たとえば、子どものいる暮らし。
子どもが自分で片付けやすい収納があれば、
自分で片付けられる可能性を少し広げられるかもしれません。
もちろん、環境を整えたからといって、
すぐに子どもが自分から片付けてくれるとは限りません。
そんなに簡単なことではないと思います。
それでも、片付けやすい環境があるのとないのとでは、
子どもが自分で片付けられるようになる可能性は変わると思っています。
「片付けなさい」と怒る回数が、ほんの少しでも減るかもしれない。
子どもにとっては、怒られる回数が減る。
親にとっては、怒るストレスが減る。
そういう小さな変化が、
家の中の空気を少しやわらかくしてくれるかもしれません。
帰ってきた自分を、ちゃんと休ませてくれる部屋
仕事をしている人にとっても同じです。
仕事を頑張って帰ってきたのに、
部屋に入った瞬間、物が散らかっているのが目に入る。
「あれも片付けなきゃ」、「これもやらなきゃ」と、
休む前に頭の中がいっぱいになってしまう。
本当なら家は、ほっと落ち着いて、
頑張った心と体を癒せる場所であってほしい。
でも部屋の状態によっては、休むどころか、
さらに疲れが重なってしまうこともあります。
たとえば、帰ってきてからの動きに合わせて部屋を整えるだけでも、
仕事モードから休息モードへ、気持ちを切り替えやすくなるかもしれません。
家事が、少しだけ面倒じゃなくなる部屋
家事をする人にとっても同じです。
よく使うものが取り出しやすい場所にあるだけでも、
家事の小さなストレスは減らせます。
その少しの余裕が、自分の趣味の時間になったり、
家族と穏やかに過ごす時間になるかもしれません。
介護する側も、される側も、心が少し軽くなる部屋
介護をしている人、介護を受けている人にとっても、
住まいの環境はとても大切です。
介護される側には、
「できることは自分でしたい」「迷惑をかけたくない」
という思いがあるかもしれません。
介護する側にも、
「自分が頑張らなきゃ」「ちゃんと支えなきゃ」
という思いがあると思います。
介護というと、手すりをつけたり、段差をなくしたり、
大きなリフォームを想像する方もいるかもしれません。
もちろん、そういった工事が必要な場合もあります。
でも、リフォームをしなくてもできる工夫もあります。
介護用品の置き場所や家具の配置を見直すだけでも、
介助する側・される側の負担が少し変わるかもしれません。
介護は、体力的にも精神的にも負担が大きいものです。
だからこそ、家の環境を整えることで、
その負担を少しでも減らせる可能性があるなら、
やってみる価値があると思っています。
見た目だけじゃない、暮らしに寄り添うインテリア
小さなストレスが毎日積み重なると、
気づかないうちに大きな負担になってしまうこともあります。
もちろん、部屋を整えたからといって、
すべての悩みが解決するわけではありません。
子育ても、家事も、介護も、仕事も、
そんなに簡単なものではないと思います。
それでも、暮らしにくさの原因が少しでも環境の中にあるなら、
そこを見直すことで、毎日の負担を減らせるかもしれません。
私が伝えていきたいのは、完璧に整った暮らしではありません。
おしゃれな部屋にしなければいけない、
いつも片付いた部屋でいなければいけない、ということでもありません。
今の暮らしの中にある小さなストレスを見つけて、
リフォームしなくてもできる工夫や、家具の配置、収納、
動線の見直しで、毎日を少しラクにすること。
それが、私が考える「暮らしやすい部屋づくり」です。
もちろん、ここで挙げたことはほんの一例です。
暮らしやすさの形は、家族構成や生活リズム、
身体の状態、部屋の間取りによって変わります。
だからこそ、一人ひとりの暮らしに合わせて
考えることが大切だと思っています。
インテリアというと、「おしゃれにするもの」「見た目を整えるもの」
というイメージが強いかもしれません。でも私にとってインテリアは、
見た目だけのものではありません。
家の環境を整えることは、どの世代にとっても、
生活の質を少しずつ高めてくれるものだと思っています。
そんな視点も大切にしながら、
これからもインテリアについて発信していきたいと思います。