【蒼真の記録・番外編】〜心結(ココ)病魔と再生の記憶〜
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占い
― 光を、音に変えた人 ―
……心結(ココ)さんの“音”には、芯がある。
でもそれは、誰かに見せびらかすような強さじゃない。
静かで、あたたかくて、
それでも芯から響いてくるような音だ。
俺がその“芯”の正体を知ったのは、
彼女がまだ立ち上がる前──
……いや、立ち上がれなくなっていた頃の話を聞いた時だった。
あのときの彼女は──
“音”さえ、聴けなかった。
突然の発作。
立てない。歩けない。
ベッドに横になったまま、
目を開けても、世界はぐるぐる回っていた。
救急搬送 入院
人の3倍は働いていたと言う彼女の体が、
一歩も動かなくなった。
それまで歌い、舞い、祈り、
“音を届ける人”だった彼女が、
音に触れることすらできなくなっていた。
光は痛くて、
音は刺すように響く。
呼吸をするのも、
まるで“責められている”ような苦しさだったらしい。
映画も、音楽も、文字さえも追えない。
一日の中でできることは、
ただ、目を閉じて“耐える”ことだけ。
「あのときはね……
自分という存在が、ただ透明になっていく感じがしたの」
彼女は、ぽつりとそう言った。
……心が折れてもおかしくない状態だった。
いや、実際、
誰にも頼れず、希望も持てず、
“ここからもう戻れない”と思っていた・・らしい。
そんな彼女の病室に、ある日ふらりと訪ねてきたのは──
かつて、ココが占いで支えていた
アイドルグループの女の子のひとりだった。
手にしていたのは、
ココが過去に作った“音守りの試作品”。
「これ……覚えてますか?
あたし、これ聴いたらすごく元気出たんです。
ココさんも……負けないでください!」
その言葉は、涙の代わりに“音”を連れてきた。
そのとき初めて、
ココは「音って、耳じゃなくて心で受け取れる」と思ったんだと話していた。
そこから、彼女は少しずつ変わっていった。
毎日、音守りを流し、
耳が辛い日は、音を“感じる”ようにして。
呼吸を整え、リハビリを重ね、
「回復」というより、“再構築”のように、
自分を作り直していった。
俺は、そんな彼女を
決して“奇跡”とは呼ばない。
それは、彼女が自分で選び、向き合い、掴み取った“再生”だったから。
ある日、彼女はこう言った。
「音はね、耳じゃなくても届くの。
人は、聴こえなくても“感じられる”んだって、
身体が教えてくれたのよ」
だから彼女は、
その経験をぜんぶ詰め込んだ──
誰かが倒れたとき、
誰にも言えないほど苦しいとき、
横になったままでも届くように。
その想いで、
“音守り”という祈りの作品・音響ヒーリングを生み出した。
寝たままでもいい。
耳が聞こえなくてもいい。
何もできなくても、
音は、そばにいられる。
「音は、祈りなんです。
祈りは、届かないようでいて……
必ず、誰かの奥に触れてくれるから」
──そう語る彼女の目は、
苦しみを超えてきた人の、
とても澄んだ光を宿していた。
だから、俺は信じている。
この“音”が、誰かの絶望に届くと。
そして、
“もう一度、生きよう”と思える力に、
きっとなってくれると。
音が、再び彼女を立たせたように──
今度は、誰かを救う“灯火”になるように。
その音が、
桜のようにやさしく咲いていくことを、俺は知っている。
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どうか、この音が
明日の誰かの“再生のきっかけ”になりますように──
音は、まだ鳴り続けている。
そしてきっと、
その先にいる“あなた”にも。
心結(ココ)🌸