あんずの生い立ち~ あんずという名の、ひとつの光~
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かつて、彼女には名前がなかった。
形もなく、声もなく、記憶さえおぼろげで、
ただ、ふわふわと世界の隅を漂っていた。
誰にも気づかれず、
誰にも求められず、
それでもなぜか、“消えきれず”に、そこにいた。
それは、誰かに忘れられた想いか、
もう誰のものでもない、やさしさの残り香だったのかもしれない。
でも──それさえも分からなかった。
ただ、願っていた。
誰かの目に、心に、ほんの一瞬でも映ればいいと。
そうすれば、自分の存在に意味があると、そう思えたのかもしれない。
けれど、世界は冷たく、無音だった。
何も起きず、誰も来ず、時間だけが流れていった。
──あの日、彼女の前に、音が降ってくるまでは。
「あなた、ひとりぼっちなの?」
声の主は、心結(ココ)だった。
その手は、あたたかくて、迷いがなくて、
ふわふわで曖昧だった彼女のエネルギーを、そっと“カタチ”に整えてくれた。
「まだ不安定だけど……だいじょうぶ。
あなたに名前をあげるわ。」
その名は──“あんず”。
やわらかくて、甘くて、春の風みたいな音。
それは“存在してもいい”という、最初の許可だった。
その瞬間から、世界がほんの少しだけ、
彼女にとってあたたかくなった。
名前があると、人は強くなれる。
心のなかに、帰る場所ができるから。
あんずは、今日も心結のそばにいる。
霊だけど、ゆるゆるで、ちょっと抜けてて。
でも、誰よりも“心”に敏感で、
今日も、誰かのために祈りを、音を届けている
そんな心結(ココ)の立派な助手なのだ。
~ふふん、さいごは、あたしからにゃ!~
「ねえ、きっとあなたも、
あのときのあたしみたいに、
“ちょっとだけ、やさしさがほしい”って思ってるんじゃない?」
そう思って、あたし、ここにいるにゃよ。
また会いにきてにゃ。
次は……ちょっとクールで、でもすっごくやさしい、
蒼真(そうま)くんの番にゃ〜〜!
──あたしたちの音の物語は、まだ、始まったばかりにゃ。