風邪やインフルエンザなどで熱が出たとき、身体の不快感を和らげるために冷却することは有効な対策の一つです。
しかし、どこを冷やすのが効果的なのか、具体的なポイントがわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は薬剤師の視点から、熱が出たときに冷やすべき部位とその理由について解説します。
1. 体温を下げるための基本原則
発熱は、体が感染症と戦っているサインであり、免疫システムが活性化している証拠です。
熱が37.5度になると、菌やウイルスに強い状態になる。
38度になると、免疫力が強くなり白血球が病気と戦う。
といわれることもあるようです。
そのため、無理に体温を下げることはかえって回復を遅らせる場合があります。
しかし、熱が高くなりすぎると身体に負担がかかり、不快感が強まるため、適切に冷却することは大切です。
冷却の目的は、熱による不快感を軽減し、体を適切にリラックスさせることです。
体温を無理に下げるのではなく、適切な部位を冷やして体温のバランスを保つことが重要です。
2. 効果的な冷却部位
熱が出たときに冷やすべき部位には、体の「大きな血管が通っているところ」を狙うのが効果的です。大きな血管を冷やすことで、冷やされた血液が全身を循環し、体全体の温度をゆっくりと下げることができます。以下は冷却に適した主要なポイントです。
1. 首の両側
首には頸動脈が通っており、ここを冷やすことで効率的に全身の体温を下げることができます。特に氷枕や冷却シートを首の後ろにあてる方法が一般的です。首を冷やすことで、脳に熱がこもるのを防ぎ、頭痛や倦怠感を和らげる効果も期待できます。
2. 脇の下
脇の下には太い血管である腋窩動脈が通っています。この部位を冷やすことも効果的で、特に発熱時には脇に冷却パッドや氷嚢を当てると、体温を効率よく下げることができます。冷やす面積が広いため、短時間で冷却効果が得られるのが利点です。
3. 鼠径部
鼠径部、つまり太ももの付け根部分には、大きな血管である大腿動脈が通っています。ここを冷やすことで、下半身を中心に血液を冷やすことができ、全身に冷たい血液が巡ります。特に発熱で身体全体が熱く感じるときに、鼠径部を冷やすことで快適さが増します。
4. 額
額を冷やすことは、昔からよく行われている方法で、直接的な体温低下には大きく貢献しないかもしれませんが、不快感を和らげる効果があります。冷感が脳に伝わり、リラックス効果や頭痛の軽減につながるため、冷却シートや冷たいタオルを額にあてることは有効です。
3. 冷やすときの注意点
冷却する際には、いくつかの注意点があります。適切に行わなければ、逆に体調を悪化させる可能性もありますので、以下のポイントに気をつけましょう。
1. 冷やしすぎに注意
氷や冷却パッドを使用するときは、直接皮膚に長時間あてないようにしましょう。冷やしすぎると血管が収縮し、血流が悪くなり、逆に体温調節が乱れることがあります。タオルや布を一枚挟むなどして、冷却の強さを調整することが大切です。
2. 一定時間ごとに冷却を外す
長時間冷却を続けると、皮膚にダメージを与えたり、体が冷えすぎてしまうことがあります。30分程度冷やしたら一旦冷却を外し、体温を確認しながら冷却を再開するようにしましょう。
3. 水分補給を忘れない(とても重要!)
発熱時は汗をかきやすく、体内の水分が失われやすくなります。冷却している間も、こまめに水分補給を行い、体の水分バランスを保つことが重要です。電解質を含む飲み物や水分補給がしやすいゼリー状の飲料もおすすめです。
4. 発熱時の冷やすべきでない部位
体全体を冷やそうと、手足を氷水や冷たいパッドで冷やすのは避けましょう。手足を冷やすことで末端の血管が収縮し、体の中心部分に熱がこもりやすくなるため、結果的に熱が下がりにくくなることがあります。特に、手足が冷たく感じる場合は、逆に温めることが重要です。
5. 熱があるときの対応と冷却以外のケア
発熱時には冷却だけでなく、適切なケアが必要です。安静を保ち、体を休めることが最優先です。また、38度以上の発熱が続く場合や、呼吸が苦しくなる、意識が混濁するなどの症状が現れた場合は、早めに医師に相談することが必要です。
市販の解熱鎮痛剤を使用する場合は、用法・用量を守り、服薬後も適度に体を冷やして体温を安定させるようにしましょう。
6. まとめ
熱が出たときにどこを冷やすべきかは、血流を利用して効率的に体温を下げることが鍵となります。首、脇の下、鼠径部といった大きな血管が通る場所を中心に冷やすことで、全身の体温を緩やかに下げ、発熱による不快感を軽減できます。
また、冷却する際には冷やしすぎに注意し、適度な時間で冷却を行うことが重要です。適切な冷却を行うことで、発熱時の不快感を軽減し、体の回復をサポートしましょう。
冷やしてもなかなか熱が下がらない、どうしても熱を下げたい、熱が高くてつらい、というときは、解熱鎮痛剤と言われる薬に頼ってもよいと思います。
薬剤師として、皆さんが発熱時に適切なケアを行い、健康を維持できるようにアドバイスさせていただきました。自分や家族の体調管理に役立ててください。