非正規社員の正社員転換を進めたい企業さま必見です。
厚生労働省が支給する「キャリアアップ助成金(正社員コース)」は対象労働者を正社員に転換し、一定期間継続勤務しつづけることで、重点支援対象者は80万円、それ以外の方は40万円の助成金を受け取れる制度です。(加算あり)2回に分けて社労士のサポートを受けながらスムーズに申請する方法、活用のメリット・注意点など解説します。
【目次】
1 キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは
1-1制度の概要と目的
1-2他のキャリアアップ助成金との違い
2 対象となる企業と労働者の条件
2-1企業側の申請条件
2-2対象となる労働者の特徴
3 支給額と支給対象となる取組
3-1支給金額と加算要件
3-2対象となる雇用形態の変更
4 申請手続きの流れと必要書類
4-1手続きのタイムライン
4-2申請時に求められる書類一覧
5 社労士に依頼するメリットと成功事例
5-1助成金申請を社労士に任せる利点
5-2実際の企業の成功事例紹介
今回2回目は【目次】の3から5までをお話ししますね。
3.支給額と支給対象となる取組
本助成金における支給額は、基本支給と加算要件によって支給される部分に分かれています。
基本支給は80万円(重点支援対象者の場合、それ以外は40万円)です。それに諸々の加算が加わるという形です。(加算対象者、金額については厚生労働省のHPでご確認願います)
対象となる取組には「有期雇用→正規雇用」「無期雇用→正規雇用」「派遣労働者→直接雇用(正社員)」など複数のパターンがあります。それぞれで求められる契約書や雇用形態の違い、支給要件の違いがあるために誤った申請内容では不支給になる可能性が高い点に留意が必要です。
なお、複数名を同時に転換した場合も、それぞれの労働者に対し個別に支給されるため、大規模な正社員化施策においては総額で数百万円の支給を受けることも可能です。この点からも経営判断として助成金を人件費補填や採用戦略と連動させることが望まれます。
3-1 支給金額と加算要件
前述の通り本助成金には基本支給の部分と加算要件によって支給される部分に分かれているとお伝えしました。また生産性要件を満たすことで更に拡大されます。(詳細は厚生労働省HPにて確認願います)生産性要件とは一定の会計指標を用いて直近3年間の生産性の伸びを測るもので売上高、営業利益、人件費のバランス等を基準に評価します。
要は対象者の属性や企業の経営状況によって支給額が大きく変動するため、正確な試算と戦略的な対象者選定が重要です。社労士としては企業の事業計画や採用・育成方針と助成金制度の整合性を見極め、申請対象者の優先順位づけを支援することが求められます。
3-2 対象となる雇用形態の変更
キャリアアップ助成金(正社員化コース)では、助成対象となる雇用形態の変更が明確に定められており、大きく分けて3つが該当します。
(1)有期契約労働者から正規雇用への転換
(2)無期契約労働者から正規雇用への転換
(3)派遣労働者を直接雇用の正社員として採用
大きく分けるとこの3つです。
いずれのケースも雇用形態の変更に際しては契約書の締結、労度条件通知書(雇用契約書)の再発行、変更前後で職務内容や待遇に整合性があるか、制度上の「正社員」としての定義(無期雇用・フルタイム・直接雇用)に合致するかが審査の重要点の1つになります。
また派遣労働者を正社員として直接雇用する場合は、派遣元との契約終了の確認書類や、転換後の雇用契約書などが必要となるため、他のケースよりも手続が煩雑になります。社労士としては、これらの業務運用に対応できるよう雇用形態変更の事前準備からアフターフォローまで一貫した支援体制が求められます。
4.申請手続きの流れと必要書類
キャリアアップ助成金の申請は、単なる書類提出ではなく事前の準備段階から厳密な運用が求められます。主な流れは以下の通りです。
(1)キャリアアップ計画書の提出
(2)採用した労働者の中で対象になりそうな方に対して面談等を行い本人の意思と会社の想いを伝える
(3)非正規雇用として採用して6ヵ月以上勤務している者を正社員に転換する
(4)転換後の継続雇用(転換後6回以上給与を支払っている事など要件はあります)
(5)支給申請書類の提出と審査
(6)支給決定および入金
このうち最も重要なのが事前に「キャリアアップ助成金計画届」を管轄労働局に提出した上で認定をもらい、計画期間内に転換を行うことです。
以前、キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご依頼をされたお客様で、計画期間が経過していたために支給申請ができなかった方がいらっしゃったこともありますので注意が必要です。また転換後の6カ月間は継続雇用されていることが求められますので給与支払が正しく行われていることも大切です。
また出勤簿・雇用契約書・就業規則・転換の辞令など膨大な資料が必要になります。社労士としてはこれらの書類の整備・保管・提出タイミングを適切にアドバイスして申請ミスを防止することも大切です。
4-1 手続のタイムライン
申請手続きのタイムラインは申請成功の可否を分ける最重要ポイントです。
制度上、キャリアアップ助成金(正社員化コース)では以下の順序を厳密に守る必要があります。
1 「キャリアアップ計画書」の作成と提出(転換前)
2 対象者の正社員転換または直接雇用の実施
3 転換後6ヵ月以上の継続雇用と給与支払の実績の蓄積
4 転換後ひと月分丸々給与を支払ってから2カ月以内に支給申請書を提出
これらの流れに沿って進める必要があります。例えば「計画書の計画期間内に転換する」という基本的なルールを破るとそれだけで支給対象から外れてしまいます。また、支給申請も上記の4のルールから外れてしまうと支給対象から外れてしまうという厳しい制限があります。そのため準備に時間が掛かると機会を逸する可能性もあります。
そのため企業内での情報共有、対象者の選定、計画のスケジューリングを社労士リードすることが望ましく、助成金スケジュールを事業年度計画に組み込むことが推奨されます。
4-2 申請時に求められる書類一覧
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給申請には多岐にわたる書類が必要であり、その正確性と整合性が審査の通過を左右します。
主な提出書類は以下の通りです。
・キャリアアップ助成金計画届
・雇用契約書<労働条件通知書>(入社時・転換後)
・就業規則(正社員転換規定が明記されたもので労働基準監督署へ届出済のもの、他にも条件はあります)
・賃金台帳
・出勤簿または勤怠記録
・雇用保険、社会保険の加入を証明する物
・転換命令など
・事業所確認届、支給申請書、振込口座のコピーなど
特に注意すべきは契約書や賃金台帳といった「実態を示す書類」が整っていないと転換が形式的なものとみなされ不支給となる点です。社労士はこれらの書類を事前に精査し、不備や矛盾点を是正することで支給決定の可能性を高めることができます。
5.社労士に依頼するメリットと成功事例
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請には、高度な労務知識と実務経験が求められます。そのため社労士に依頼することは企業にとって大きなメリットがあります。特に計画届の作成、就業規則の整備、雇用契約の見直し、書類の整合性確認などは専門家でないと困難な部分が多く、誤申請や不支給のリスクを大幅に軽減できます。
また社労士は他の助成金との併合可否の判断やきぎょの将来的な人事戦略に合わせた助成金スキームの提案が可能であり、単発の申請に留まらず中長期的な人事労務に関する支援が期待できます。さらに労働局との交渉・相談・訂正対応など企業にとって煩雑かつ負担の大きいプロセスも代行するため、担当者の業務負担を大幅に軽減します。
制度を正しく活用し助成金を経営に役立てるには信頼できる社労士との連携がカギとなります。
5-1 助成金申請を社労士に任せる利点
助成金申請を社労士に任せる最大の利点は「不支給リスクの回避」と「申請業務の効率化」です。助成金制度は頻繁に制度変更が行われており、申請手順や必要書類も複雑化しています。社労士は常に最新の制度情報を把握しており変更点に即応した申請が可能です。
さらに労働局とのコミュニケーション、書類の精査、計画書の構成指導、帳簿チェックなどを一括して対応できるため、企業側の工数を大幅に削減できます。特に助成金申請未経験の中小企業や人事リソースの限られた企業では社労士の存在が成功のカギになります。
また助成金に関する内部監査や将来的な制度運用可能性の診断など単なる生類作成代行を超えた人事労務のパートナーとして機能する点も大きな魅力です。信頼できる社労士と長期的に連携することで制度活用の幅を広げ、安定的な人材戦略を築くことが可能になります。
5-2 実際の企業の成功事例紹介
ある都内のITベンチャー企業では契約社員3名を正社員に転換し、合計216万円の助成金を受給することができました。この企業では元々正社員登用制度が曖昧で、転換ルールも就業規則に明記されていませんでした。そこで社労士のアドバイスを受けて制度設計から見直し、キャリアアップ計画書を適切に作成、さらに賃金体系も引き上げを実施しました。
また別の製造業の中小企業では、若年層(35歳未満)の非正規雇用従業員2名を正社員化したことで、加算要件を満たしていたため本来支給される額よりも多くの助成金を受給できました。
社労士が雇用契約書の整備、転換辞令の作成、タイムライン管理まで一括支援を行ったことでスムーズかつ確実に支給決定がなされました。
このような成功事例からもお分かりの通り、制度の正確な理解と運用そして専門家との連携が助成金活用のカギであることは明確です。
このように書かれると「助成金はハードルが高い」と思われるかもしれませんが、普段の労務管理をしっかり行っていればプラスアルファする形で助成金申請は出来ることと思います。
ですので、賢く助成金を得ようと思われるのであれば普段から社労士と連携をはかって企業の人事労務面をクリアにしておくことが大切かと思います。
2回に分けてお話しさせていただきました。
一言で言えば「助成金は普段しっかり労務関係を行っていることに対するご褒美」だと思ってください。
ではまた!