アトラス行政書士法人の事件簿 第2回:試作品から始まる知財リスク 〜アイデアは契約で守れるか〜

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ビジネス・マーケティング
アトラス行政書士法人の櫻井です。
「事件簿シリーズ」では、私たちが日々対応している契約や書類作成のなかから、実際の相談事例をもとに、皆さまにも役立つようなトピックをコラム形式でご紹介しています。

今回は、ある製品開発の初期段階における「試作依頼」に関するご相談についてご紹介します。製造業や商品企画に関わる方には、特に参考になるかと思います。

■ 試作をお願いする前に起こる“ある不安”

商品開発において、社外の業者に製品の試作を依頼するというケースは珍しくありません。
たとえば、自社オリジナルの商品を企画し、それを形にするために専門工場に「ひとまず試作品だけ作ってもらう」という流れ。近年では、ODM(相手先ブランド名製造)やOEM(委託製造)なども一般的になり、このような段階的な製造依頼は増えています。

しかしここで、ある問題が浮かび上がります。
試作段階では、まだ正式な契約関係がないということ。にもかかわらず、依頼主は業者に対して、設計図や仕様書、素材の詳細など、重要な情報を開示せざるを得ないのです。

では、もしその情報が流出したら?
もし、契約に至らなかった業者が、同じような商品を他社向けに製造したら?

このようなリスクに対して、法的に備える方法があるか──それが今回のご相談内容でした。

■ 試作=「契約のすき間」にある危うさ

製品が完成し、製造・販売まで進む段階になれば、本契約(ODM契約やOEM契約など)を交わすことが一般的です。ところが、その前段階である試作フェーズは、形式的な契約が存在しないことも多く、曖昧なまま情報がやりとりされるリスクがあります。

実際の現場では、「とりあえず見積もりをもらって、サンプルをお願いしたい」という流れで、すぐに図面や仕様書を送ってしまうというケースもあります。

ですが、試作時点ですでに、アイデアやノウハウ、営業秘密が共有されているのです。ここを甘く見ると、“模倣”や“情報流出”といった深刻なトラブルに発展する可能性もあります。

■ 覚書と秘密保持契約で「守り」をつくる

こうしたリスクを最小限にするために、私たちがご提案したのが、試作段階専用の覚書+秘密保持契約(NDA)のセットです。

覚書というと「軽い契約」という印象を持たれがちですが、法的にはれっきとした契約文書であり、内容がしっかりしていれば十分に拘束力を持ちます。今回は、以下のようなポイントを押さえた契約内容を整えました:

✅ 情報の使用目的を限定
開示する情報は、「試作品を作ること」だけに使用することを明記。他目的での使用や社外流用を禁止しました。

✅ 秘密情報の定義を明確化
図面や仕様書だけでなく、口頭での打ち合わせ内容や、見積に関する数値データなども含め、広範囲の情報を保護対象としました。

✅ 類似品の製造禁止条項
仮に本契約(ODM等)に至らなかった場合でも、依頼内容に基づく試作品と類似する製品を他社向けに製造・販売してはならないという条項を設定。これにより「試作だけして、あとはそっくりな商品を別ブランドで展開される」リスクを抑えます。

✅ 関係者の取り扱い責任
情報を扱う従業員や協力会社についても、契約者と同等の義務を守らせることを明記。実務上よくある「うっかり漏洩」に備えた条項です。

✅ 契約終了後の情報返還・破棄
契約が終了したら、資料やデータは全て返却または破棄することを義務づけ、情報の“残りかす”を排除します。

■ すべての段階で「守りの契約」を

商品開発や委託製造の場面では、どうしても「動きながら考える」ことが多くなります。しかし、情報を一度出してしまえば、取り戻すことは非常に難しいのが現実です。

今回のようなケースでは、試作品の段階であっても、情報を守る契約を先に結ぶことで、企業の知的資産をしっかり保護することができます。たとえ契約に至らなかったとしても、最低限のルールが文書化されていれば、万一のときに対処が可能です。

■ 最後に:創意工夫を守るのも契約の力

アイデアは、かたちになる前が最も無防備です。
「契約は本契約のときにやればいい」と思いがちですが、実際はその前段階こそ、もっとも慎重になるべき局面。

私たちアトラス行政書士法人では、試作品や企画段階の情報共有に対応した契約づくりを数多く手がけてきました。覚書、秘密保持契約、試作依頼書など、状況に応じて最適な文書をご提案し、リスクを最小限に抑えつつ、スムーズな取引の道筋を整えます。

製品開発や外部提携をご検討中の企業様は、どうか「動き出す前」に、一度ご相談ください。
契約が、あなたのビジネスとアイデアをしっかりと守ってくれます。


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