こんにちは。2級キャリアコンサルティング技能士|合同会社たお代表の工藤でございます。
今日のテーマは、「人的資本経営」という言葉から、キャリアを考えてみる
最近、経済ニュースでよく見かけるようになった言葉があります。
「人的資本経営」
企業が「人」を、コストではなく資本として捉え、育てていくという考え方です。今日は、この言葉を入り口に、キャリアについて少し考えてみたいと思います。
「人はコスト」から「人は資本」への転換
日本では2020年に、経済産業省が「人材版伊藤レポート」という報告書を公表し、人的資本経営という考え方が広く知られるようになりました。2022年には続編となる報告書も公表され、同じ年に内閣官房が「人的資本可視化指針」をまとめています。
そして2023年3月期の決算から、有価証券報告書を発行する大手上場企業(約4,000社)を対象に、人的資本に関する情報開示が義務化されました。人材育成の方針や、女性管理職比率、男女間の賃金差異といった項目が、投資家に向けて開示されるようになっています。
さらに2026年3月期からは、開示の内容がより拡充される予定です。経営戦略と結びつけた人材戦略や、給与の決定方針、平均年間給与の増減率といった項目が、新たに求められるようになるとのことです。
つまり企業は今、「人にどう投資し、どう育てているか」を、外部に説明する責任を、これまで以上に強く求められる時代に入っていると私は捉えています。
この考え方は、個人のキャリアにも当てはまるように思う
ここで私が興味深いと感じているのは、この「人的資本」という考え方が、企業だけの話にとどまらないのではということです。
企業が「人をコストではなく資本として捉える」というのであれば、私たち一人ひとりもまた、自分自身を、「投資し、育てていく資本」として捉えなおす必要があるのではと思っております。
以前の記事で、「学ぶ人」としての自分に立ち返ることや、資格取得という自己投資についてお話ししました。これは、まさに個人が自分自身を人的資本として育てていく営みそのものだと、私は感じています。企業が人材戦略を説明する責任を負うように、私たちも「自分は、自分自身にどう投資しているか」を、時々振り返ってみる価値があるのかもしれません。
私が創業間もない時に出会った税理士の方から、こんな言葉を伺ったことがあります。「法人格とは、その会社の代表の"別人格"として現れるものだ」と。この言葉は、今でも私の中に強く残っています。
法人という「人」の姿は、突き詰めれば、そこに関わる個人の人格が形を変えて現れたものなのかもしれません。だとすれば、「人的資本経営」という言葉も、法人という大きな枠組みだけで語られるものではなく、根底には、常に「個人」という「人格」の集合体である、という捉え方ができるように思います。
企業が人的資本をどう育てているかを問われる時代だからこそ、その手前にいる一人ひとりが、自分自身という人的資本をどう育てているかが、静かに問われているのだと私は思います。
中小企業にとっても、他人事ではない
情報開示の義務があるのは、上場企業約4,000社に限られます。多くの中小企業には、法律上の開示義務はありません。
ただ、義務がないことと、必要がないことは、別の話だと私は考えています。人を資本として育てる、という考え方そのものは、企業の規模に関わらず当てはまるものだと思うからです。
特に、現場の管理職が面接官を兼任することの多い中小企業では、大企業と比べて一人ひとりの力がさらに際立つため、人という資本を正しく見極め、育てる力が、より求められるような気がします。採用の場での「聴く力」も、日々のマネジメントでの関わり方も、結局のところ、人的資本経営という大きな流れの、現場での実践そのものなのだと思います。
「人的資本」という言葉を、自分の言葉で語ってみる
「人的資本経営」は、一見、企業の会計や開示制度の話に聞こえるかもしれません。
でも、その根っこにあるのは、人という存在を、どれだけ大切な資本として捉えられるかという、とてもシンプルな問いです。この問いは、経営者にとっても、働く一人ひとりにとっても、そして就職や転職を考えている方にとっても、共通して向き合う価値のあるテーマなのではと思います。
自分自身という資本を、これからどう育てていきたいか。今日は、そんな問いを、少し心に留めてみるというのはいかがでしょうか。
企業として「人的資本をどう育てているか」を語るためには、まず現場で人を見極め、育てる立場にある方々自身の力が土台になります。中小企業の管理職の方に向けた、傾聴力を軸とした面接官トレーニングもご用意していますので、ご関心があればぜひサービスページをご覧ください。