【サンプル】大相撲の力士の給与の詳細

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法律・税務・士業全般
 2024年11月場所で、大関の琴櫻が初の幕内優勝を果たしました。
 千葉県出身力士の幕内優勝は、1991年7月場所の琴富士さん以来、33年ぶりのことです。
 この結果、琴櫻は2025年1月場所で綱取りを賭けることになります。
 この場所で横綱昇進を決めれば、千葉県出身力士としては印西市(旧・印旛郡大森町)出身で、第24代横綱の鳳(おおとり)以来、111年ぶりの快挙となります。


 ご存じの方も多いと思いますが、大相撲の階級は、横綱から序ノ口までの10段階に分けられています。
 十両以上に昇進すると、やっと給料をもらうことができます(幕下以下の力士=取的は、年額で約50万円~100万円の場所手当しかもらえない)。
 最高位が十両以上の力士が引退すると、養老金(退職金)を受け取ることができます(横綱・大関のような貢献度の高い関取は、養老金のほかに特別功労金も支給されるが、本記事では省略する)。

 関取が受け取る給料の詳細は、『うっちゃりはなぜ消えたのか データが語る大相撲』(眞石博之著、日本経済新聞社。以下、同書と略)に書かれていますが、同書は2000年に刊行されたため、内容が相当古くなっています。
 そこで、本記事では金額を修正しますが、大相撲の力士の場合、番付が昇降するたびに収入が激しく上下する上、給料・賞金・手当の支払い形態もバラバラです。
 そのせいで、社会保険労務士や、税理士を泣かせることになりますが、逆に言えば、その計算がソフトを使って正確にできれば、社会保険労務士や、税理士として独立開業するためのマストスキルが身に付くわけです。
 特に、私のように企業の労務担当者や、士業事務所のスタッフになれないまま、社会保険労務士の試験や、給与検定(給与計算実務能力検定)の1級に合格した人にとっては、なおさらです。


うっちゃり.JPG

 図1.私が保管している『うっちゃりはなぜ消えたのか データが語る大相撲』の実物


 大相撲の力士が受け取る給与・手当・退職金の額

  2023年現在の大相撲の力士の給与・手当・退職金は、以下のようになっています(懸賞金や、花相撲賞金を除く)。

<関取の固定給>
①月給:横綱300万円、大関250万円、関脇・小結180万円、前頭140万円、十両110万円
②賞与:月給の1か月分を毎年9月と、12月の年2回支給
③特別場所手当:場所ごとに横綱20万円、大関15万円、関脇・小結5万円。ただし、全休の場合は支給されず、途中休場の場合は減額となる(例えば、大関がケガや病気で10日間休場した場合、支給されるのは15万円÷15日×5日=5万円となる)。
④出張費:地方3場所の1場所につき、横綱1万1000円、大関9500円、関脇・小結8100円、前頭7100円、十両6500円が日当として35日分支給される。ただし、場所手当と同じで全休の場合は支給されず、途中休場の場合は減額となる。
⑤力士補助費:全ての関取に、廻し・髪結の費用として東京場所ごとに一律2万5000円が支給される

<取的の固定給>
〔1〕場所手当:場所ごとに、幕下16万5000円、三段目11万円、序二段8万8000円、序ノ口7万7000円を支給(年額では、幕下99万円、三段目66万円、序二段52万8000円、序ノ口46万2000円となる)

<関取の業績給>
⑥給金:場所ごとに、持ち給金×4000円を支給(持ち給金の計算法は後述)
⑦優勝賞金:幕内1000万円、十両200万円
⑧敢闘賞・殊勲賞・技能賞:1回につき200万円

<取的の業績給>
〔2〕優勝賞金:幕下50万円、三段目30万円、序二段20万円、序ノ口10万円

<関取の養老金=退職金>
⑨:皆勤した最高位の金額(横綱1500万円、大関1000万円、関脇・小結763万円。
前頭は763万円 or 475万円+{勤続場所−1}×12万円、十両は475万円 or 115万円+{勤続場所−1}×15万円のいずれか少ない額)
⑩:横綱50万円×場所数+大関40万円×場所数+関脇・小結25万円×場所数+前頭20万円×場所数+十両15万円×場所数。ただし、全休した場所はノーカウント。
この⑨と⑩を合計した額が、関取の養老金=退職金となる。

<持ち給金の計算方法>
1:まず、序ノ口として初めて番付に名前が載ると、3円の持ち給金が与えられる。
2:以後、本場所での勝ち越し1点につき0.5円(50銭)が加算される。
3:幕内優勝は30円、幕内全勝優勝は50円の加算。
4:平幕が横綱を倒す「金星」は10円の加算(不戦勝と、反則勝ちは除く)。
5:昇進した時には、以下の「最低持ち給金」まで特別昇給する。ただし、その地位から陥落すれば、特別昇給分は返す。
最低持ち給金:十両40円、前頭60円、大関100円、横綱150円


 以上が日本相撲協会から公表されている金額ですが、これほどイレギュラーな給与体系は、他の法人に雇われている人ではまずあり得ないと思います。
 逆に言えば、このような条件下で給与計算や、年末調整を1人で正確にこなせる人は、相当凄いわけです。

 だから、もし大相撲に興味のある社会保険労務士や、税理士の方は、誰か好きな力士を1人ランダムに選んで、給与計算や、年末調整の練習をしてみたらいかがでしょうか?


 具体的な給与計算の方法

 以下は給与計算歴の長い、ベテランの社会保険労務士から訊いたものですので、ソフトを使って給与計算や、年末調整等の練習をする時はぜひ参考にしてみてください。

 <1:労働保険の対象>
 大相撲の力士の場合、法人(公益財団法人・日本相撲協会)に雇われている者とみなされるため、たとえ1人であっても、労働保険(労災・雇用保険)や、社会保険(厚生年金・健康・介護保険)の加入が義務付けられることになります。

 労災保険料率は、「その他の各種事業」が適用されます(2024年度は1000分の3、労働者負担なし)
 雇用保険料率は、一般の事業と同じになります(2024年度は労働者負担1000分の6、事業主負担1000分の9.5の計15.5である)。
 健康保険は、健康保険組合 or 協会けんぽに加入することになりますが、相撲部屋が東京都の外(千葉県や、神奈川県や、埼玉県など)にあると、健康保険料率が異なることがあるため、注意が必要です。

 <2-1:報酬の範囲>
 実際に給与計算をする場合、まず報酬に該当するか、しないのかを明確にする必要があります。
 報酬は原則として、「年4回以上支払われること」が要件となるため、関取に支給される、①月給と、③特別場所手当と、⑥給金は報酬に該当することになります。
 場所ごとに年6回支給される、③特別場所手当と、⑥給金は月割りで、標準報酬月額に加えることになります。
 取的に場所ごとに支給される、〔1〕場所手当も同様です。

 力士の場合、階級が上下するたびに報酬が大きく変動するため、毎月随時改定に該当するか、チェックしなければなりません
 標準報酬月額は3か月に支払われた報酬を、3で割って求めます。
 例えば月末締めで、翌月15日支払いの場合、4月15日の給与支払い時に、1月と、2月と、3月の報酬の合計を3で割って、標準報酬月額を求めることになります。
 5月15日の給与支払い時には、2月と、3月と、4月の報酬の合計を3で割って、標準報酬月額を求めることになります。
 これを毎月、毎月繰り返して、現在の等級に比べて2等級以上の差が生じた場合、即座に随時改定をすることになります。

 <2-2:賞与の扱い>
 関取に支払われる②賞与は、標準報酬月額には含まれませんが、標準賞与額の対象となります。
 ただし、1回の額が150万円を超えると、その超えた分の厚生年金保険料はかかりません。
 また、4月1日から翌年3月31日までの賞与の累計が573万円を超えると、その超えた分の健康保険料はかかりません。

 <2-3:出張費と、力士補助費の扱い>
 関取に支払われる④出張費と、⑤力士補助費は原則として非課税となるため、給与に含まれず、所得税の課税対象にもなりません。

 <2-4:賞金の扱い>
 関取が本場所で優勝した時に支払われる⑦優勝賞金と、前頭から関脇までの力士を対象にした⑧敢闘賞・殊勲賞・技能賞の賞金と、幕下以下で優勝した時に支払われる〔2〕優勝賞金は、一時所得として扱われるため、年末調整とは別に確定申告をする必要があります。
 同一年に2回以上優勝、もしくは敢闘賞・殊勲賞・技能賞の三賞を獲得した場合は、確定申告の際にまとめて申告することになります。


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