(4)相対性理論と量子力学が統一される初期宇宙:物理学
①マクロな重力理論である「相対性理論」の登場
ニュートンの「無限宇宙論」~時間・空間は宇宙のどこでも均一で、伸び縮みしないという「絶対時間」「絶対空間」と宇宙のどこにも特別な立場を認めない「相対性の原理」が前提となっています。かくして宇宙は無限の彼方にまで広がり、その全ては「万有引力」と「ニュートン力学の法則」(「慣性の法則」「加速度の法則」「作用・反作用の法則」)によって支配されていることになります。
アインシュタインの「重力場理論」~「相対性の原理」「光速度不変の原理」を前提とした4次元「時空」論です。「一般相対性原理」「一般共変性原理」「等価原理」を理論的な柱とし、「リーマン幾何学」を数学的土台として構築された、古典論的な重力場の理論であり、古典物理学の金字塔です。測地線の方程式とアインシュタイン方程式(重力場の方程式)が帰結です。この理論では、アイザック・ニュートンが発見した万有引力はもはやニュートン力学的な意味での力ではなく、時空連続体の歪みとして説明されます。
相対論によれば空間は時空連続体であり、「一般相対性理論」では、その時空連続体が均質でなく歪んだものになります。つまり、質量が時空間を歪ませることによって、重力が生じると考えるのです。そうだとすれば、大質量の周囲の時空間は歪んでいるために、光は直進せず、また、時間の流れも影響を受けます。これが重力レンズや時間の遅れといった現象となって観測されることになるわけです。また、質量が移動する場合、その移動にそって時空間の歪みが移動・伝播していくために重力波が生じることも予測されます。
光速度不変の原理~光の速度は等速度運動をする全ての観測者(慣性系)に対して一定の値を持つという原理です。特殊相対性理論の基本原理です。「止まっている人から見ても、光速に近い速さで移動している人から見ても、光の速さは等しく秒速30万kmで進んでいる」ということであり、1887年のマイケルソンとモーリーの実験で確かめられていました。、これで時間と空間とを区別して考えることはできなくなり、時間と空間を一緒にした時空を考える必要が出てきました。また、運動する物体の速さの上限が光の速さであることが分かりました。
一般相対性原理~全ての座標系において物理法則は同じ形で表現されるという原理です。慣性系間の座標変換に関する命題である特殊相対性原理を、一般相対性理論の対象である重力場を含む加速度系についても適用できるように拡張したものとして提案されました。
一般共変性原理~一般相対性原理をより数学的に具体的に拡張した主張で、物理法則は、全ての座標系において同じ形式でなければならない、あるいは一般座標変換によって物理法則は不変であるという原理です。
等価原理~外部を観測出来ない箱の中の観測者は、自らにかかる力が箱が一様に加速されるために生じている慣性力なのか、箱の外部にある質量により生じている重力なのか、を区別することできないという主張です。「一般相対性理論」は慣性質量と重力質量は同じであるとする等価原理のアイデアに基づいています。
リーマン幾何学~非ユークリッド幾何学の一つで、リーマンにより創始された多次元の幾何学です。曲面を二次元の変形と見なし、曲面上の幾何学を多次元に拡張したものです。アインシュタインは、重力、すなわち一様ではなく湾曲した時空を記述するのにリーマン幾何学の枠組みが有効であることを見い出し、リーマン幾何学を数学的核心とした一般相対性理論を構築しました。
測地線の方程式~測地線とは、微分幾何学において曲面(より一般的にはリーマン多様体)上の曲線であって、その上の十分近い2つの離れた点が最短線で結ばれた曲線を言います。ユークリッド空間における直線の概念を曲がった空間において一般化したものです。一般相対性理論では、光は曲がった空間での測地線を進むという原理に基づいて構築されています。
アインシュタイン方程式~ニュートンが導いた万有引力の法則を強い重力場に対して適用できるように拡張した方程式であり、中性子星やブラックホールなどの高密度・大質量天体や宇宙全体の幾何学などを扱えます。
アインシュタイン方程式から得られる時空は、ブラックホールの存在や膨張宇宙モデルなど、アインシュタイン自身さえそれらの解釈を拒むほどの驚くべき描像です。しかし、「ブラックホール」や初期宇宙の「特異点」の存在も理論として内包しており、「特異点」の発生は一般相対性理論そのものを破綻させてしまいます。将来的には量子重力理論が完成することにより、この困難は解決されるものと期待されています。
「一般相対性理論」による予測~
●重力レンズ効果・・・重力場中では光が曲がって進むことです。アーサー・エディントンは、1919年の日食で太陽の近傍を通る星の光が曲がることを観測で確かめ、一般相対性理論が正しいことを示しました。
●水星の近日点の移動・・・ニュートン力学では説明不能だった水星軌道のずれが、太陽の質量による時空軸連続体の歪みが原因であることを示しました。
●重力波・・・時空のゆらぎが光速で伝播する現象です。
●膨張宇宙・・・時空は膨張または収縮し、定常にとどまることがないことです。ビッグバン宇宙を導きます。
●ブラックホール・・・限られた空間に大きな質量が集中すると、光さえ脱出できないブラックホールが形成されます。
●重力による赤方偏移・・・強い重力場から放出される光の波長は元の波長より引き延ばされる現象です。
●時間の遅れ・・・重力場中で測る時間の進み(固有時間)が、弱い重力場中で測る時間の進みより遅いことです。
量子重力理論~重力を量子論(量子物理学)で基礎づける理論です。重力の理論である一般相対性理論は枠組みとしては古典物理学ですが、電磁気力や核力などが根本的には量子論の枠組みで構成されるならば、重力も同様でなければならず、そのため早くから一般相対性理論を量子論の枠組みで作り直す量子重力論の構築が試みられていました。実際には重力を量子化する際の発散(無限大)が大きな困難になり、まだ完成していません。これまでに超重力理論、ループ量子重力理論、超ひも理論(超弦理論)などの理論が提出されています。
【参考文献】
『物質をめぐる冒険 万有引力からホーキングまで』(竹内薫、NHKブックス)
『アインシュタイン・ロマン4 悪魔の方程式 宇宙創成への問い』(NHKアインシュタイン・プロジェクト、日本法放送出版協会)
『図形雑学 相対性理論』(佐藤健二監修、ナツメ社)
『図形雑学 量子力学』(佐藤健二監修、ナツメ社)
『ハイゼンベルク 二十世紀の物理学革命』(村上陽一郎)
『量子力学の世界 はじめて学ぶ人のために』(片山泰久、講談社BLUE BACKS)
『10歳からの量子論 現代物理をつくった巨人たち』(都筑卓司、講談社BLUE BACKS)
『量子の謎をとく アインシュタインも悩んだ・・・』(F.A.ウルフ、講談社BLUE BACKS)
『量子力学が語る世界像 重なり合う複数の過去と未来』(和田純夫、講談社BLUE BACKS)
『超ひも理論と「影の世界」 見えない!さわれない!謎の世界』(広瀬立成、講談社BLUE BACKS)
『超ひも理論とは何か 究極の理論が描く物質・重力・宇宙』(竹内薫、講談社BLUE BACKS)
『はじめての<超ひも理論> 宇宙・力・時間の謎を解く』(川合光、講談社現代新書)
『イラスト「超ひも」理論 図解でいっきにわかる!宇宙論の最先端』(白石拓解説、宝島社)
『入門超ひも理論』(広瀬立成、PHP)
『エレガントな宇宙 趙ひも理論がすべてを解明する』(ブライアン・グリーン、草思社)
『ゼロから学ぶ物理の1、2、3』(竹内薫、講談社)
『現代物理の世界がわかる アリストテレスの自然哲学から超弦理論まで』(和田純夫、ベレ出版)