「脳科学と深層心理学のコラボレーション⑦」~「人間性」の根幹に関わる「脳」と「心」のヒミツ~

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(3)「私」は「脳」のどこにあるのか?
①コンピュータ的機能を持つ「左脳の心」

 右半身を統御する「左脳」は情報処理能力に長け、この分野を発達させたのがコンピュータに他なりませんが、脳梁切断をして「左脳」と「右脳」が切り離された分離患者の「左脳」は「右脳」の行動に対して、「これは私がやったのではない」と当惑します。すなわち、「私」は「右脳」の中には住んでいないのです。

「分離脳」~大脳は左右2つの半球に分かれています。「左脳」が右半身を制御し、右視野は「左脳」に入り、右手・右足も「左脳」が動かします。「右脳」が左半身を制御しており、左視野は「右脳」に入り、左手・左足も「右脳」が動かします。ここで左右が交差していることに注意しましょう。左右脳間の連絡は「脳梁」という約1億本の神経網によって行なわれています。
 従来、この「脳梁」による連絡の重要性があまり認識されておらず、てんかん治療の最終手段として「脳梁切断手術」が行なわれて、重度のてんかん患者が劇的に治癒することが分かったのですが、それと同時に多くの「分離脳」患者が生まれました。これが、左右に分かれた大脳両半球の機能分担に関する、1960年代のスペリー(ノーベル生理学・医学賞授賞)の有名な実験の端緒となっていくのです。
 その結果、両脳の機能が全く違うということが分かり、さらに人間の心が大脳の中にあるという常識的見解を崩壊させることとなったのです。すなわち、「意識の二重性」の発見です。

「左右脳」~放射線で血流を断層撮影するポジトロンCT(コンピュータ断層撮影)であるPETスキャンを使って調べると、「言語」を聞いている場合には「左脳」が活動し、「音楽」を聞いている場合には「右脳」が活動していることが分かります。このため、「言語脳」と「音楽脳」、「優位脳」と「劣位脳」、「デジタル脳」と「アナログ脳」と呼ばれたりするのですが、「ボケ脳」と「ツッコミ脳」と言ってもいいかもしれません。
 実は左脳と右脳の最も本質的な対称性は「時間性」と「空間性」、「収束性」と「発散性」です。例えば、「右脳」の「イメージ」は空間的に広がり、その時、時間は止まっていますが、逆に「左脳」はこうした「イメージ」を「言葉」に翻訳し、時間の流れの中で概念整理を行うのです。
 ちなみに腕を組んでみた時、どちらの腕が上に来るかで、その人の「利き脳」、つまり左右のうちよく使っている脳が分かると言います。右腕が上に来る人は「左脳」の働きがよく、論理的で判断力に優れているタイプで、左腕が上の人は「右脳」の働きがよく、直感的で創造力に優れているタイプだというのです。
 また、日本人に洋楽と邦楽を聴かせ、左右のどちらで聴くかを調べると、ヴァイオリン、ピアノなどの西洋楽器の音は「右脳」、尺八、琴などの和楽器の音は「左脳」と聴き分けていたといいます。また、虫の音も欧米人が単なる音として「右脳」で捉えるのに対し、日本人は「風情」として「左脳」で感じるといいます。
 さらに男の脳と女の脳は価値観が違うといってもいいくらい多くの面で異なっており、左右脳をつなぐ「脳梁」も女性の方が太く、女性は話をする時に左右の脳を使うことが分かっていますが、これは「脳梁」などがよく発達しているので、常に情報の行き来がしやすいためと見られています。こうした「脳」の解剖学的な差は、男女の脳の機能差になっていると考えられているのです。

「コンピュータ脳」~「左脳」の主機能は「言語」「論理」「分析」「情報処理」であり、これを代替させたのがコンピュータであることが分かります。

「自我意識」~ある「分割脳」患者は左方から飛んで来たハエを左手が追い払った時(これは「右脳」の認識・判断・行動です)、それを見て彼は「これは私がやったんじゃない!」と叫んだといいます。あるいは毎朝定刻に起きる「分離脳」患者がある日、寝坊をしたところ、「右脳」だけは定刻に目を覚まして、「左脳」を起こすために左手で右ほほをぶったというのです。こうして、左半身を操る「右脳」は明らかに「私」ではなく、少なくとも「右脳」の神経活動は「私」という「自我意識」を生み出さないことが分かったのです。つまり、「私」は「右脳」の中には住んでいないということです。正常人がこのような体験をしないのは、「脳梁」を通じて左右脳が情報交換をしているためです。

「(ヴィッキィという30代女性の分離脳患者の証言)私は左手を動かせるのですが、その左手はつかんではいけない物をつかむか、私がつかもうとしていない物をつかむのです。こんな風にいくらか左手を伸ばせるのですが、私はそうしようと思いません。なぜなら、何が起こるか分からないからです。時々、私は右手を使って左手や左腕をつかみ、引き戻します。また、ある時は馬鹿げたことと思われるかもしれませんが、私は左手をピシャッと叩きます。というのは、この左手に腹が立ってしまうからです。私は実際にそうしました。そして、夢中でぶちました。だけど、そうしたところで何もよくなるわけではなく、ぶたれた左手が傷つくだけだと悟りました。」(D・ギリング、R・ブライトウェル『ヒューマン・ブレイン』)
「積み木を一定の模様に並べる(これは右脳の得意な活動)ようにと言われた患者が右手(左脳)でその通りにしようとしたが、いくらやっても出来ず、見かねた左手(右脳)が加勢してやろうとする度に、右手がまるで『これは俺にやらせろ』と本当に言っているみたいに左手を払いのけ、ついには左手の上に当人が座り込んで、邪魔されるのを防いだ。」(C・ウィルソン『右脳の冒険』)

【参考文献】
『ヒューマン・ブレイン』(D・ギリング、R・ブライトウェル、プレジデント社)
『右脳の冒険』(C・ウィルソン、平河出版社)
『脳の人間学』(R・レスタック、新曜社)
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