(2)「人間性」で問題になるのは「前頭連合野」
①原猿類と真猿類を分かつ「前頭連合野」の「46野」
4000万年前に原猿類と真猿類が分かれ、真猿類は知的活動の作業台とも言うべき「ワーキングメモリ」を持つ「前頭連合野」の「46野」を獲得しました。これは「社会」の形成と密接な関係があると思われ、ヒトはこの「ワーキングメモリ」と「社会的知能」の発達によって、「自我」を形成したのです。人間は「人」の「間」でこそ「人間」であり、「自我」も社会の中でこそ自覚され、意味を持つのです。
「感覚野」~感覚器からの信号を受け取る「大脳皮質」の領域です。視覚、聴覚、味覚、臭覚、皮膚感覚(体性感覚)などの「感覚野」があり、「感覚野」における生理的過程が「感性」的段階の認識に対応すると考えられます。
「運動野」~随意運動に関係する信号を送り出す「大脳皮質」の領域です。
「連合野」~「感覚野」「運動野」以外の「大脳皮質」の領域で、「頭頂連合野」「側頭連合野」「前頭連合野」などに分けられます。
「頭頂連合野」~知覚、判断、理解などの機能に関わります。「感覚野」の情報が「頭頂連合野」に集められて、そこで理解され、判断されるので、これが「悟性」的段階の認識に対応すると考えられます。
「側頭連合野」~記憶のメカニズムに関係していると考えられています。
「前頭連合野」~意志、創造、思考、感情などの機能に関わります。「頭頂連合野」における理解、判断に基づいて、「前頭連合野」で思考がなされ、創造活動が行なわれるため、これが「理性」段階の認識に対応すると考えられます。
ちなみにヒトと最も近縁な現生霊長類であるチンパンジーは約650年前にヒトと枝分かれしていますが、「前頭連合野」の「大脳皮質」に占める割合はチンパンジーで約15%であるのに対し、ヒトは約25%であり、「脳」の4分の1を「前頭連合野」が占めている計算になります。重さを比較してみても、ヒトの「前頭連合野」はチンパンジーの5倍にもなっているのです。これに対して、「前頭葉」の中でも単純な運動機能をつかさどる「運動野」や高次の運動機能(運動感覚的知性)を担う「運動連合野」という領域は、ヒトもチンパンジーもほぼ同じ大きさか、ヒトの方がやや小さいくらいです。
いずれにせよ、「顕著に発達した前頭連合野」がヒトの「脳」の大きな特徴であることは間違いないと言えるでしょう。
「46野」~「前頭連合野」のほぼ中央に位置し、「超知性」「統合知性」「人間性知性」「自我」の根幹とも言うべき「ワーキングメモリ」の脳内中枢となっています。約4000年前に原猿類、ギャラゴやロリスなどの霊長類の中から「46野」を持つヒト、ニホンザル、ゴリラ、チンパンジーなど真猿類の祖先が出現しました。
ちなみに、「生きた化石」と呼ばれるギャラゴなどの原始的な原猿類の多くは単独生活をし、夜行性であることが多いのです。「表情」がほとんど変わらないことが知られていますが、暗くて孤独で毎日に「表情」は必要ないのでしょう。
逆に「表情」が豊かな人ほど社会性が豊かで、「社会的知能」が発達していると見ていいかもしれません。現存の真猿類の全てが社会を形成していることは「46野」の獲得・進化と深い関係があると見られています。社会の中でうまく立ち回るためには、自分自身と他者の情報(心や行動)を的確に把握し、その情報に応じて自分の行動をコントロールする必要がありますが、このためにはまさに脳内・脳間操作が必要不可欠で、「ワーキングメモリ」も必須となるのです。
実際、「46野」を持つ真猿類のほとんどの群れで、オス同士の力関係、メス同士の協調的関係、母子関係など、かなり複雑な社会関係が展開されており、彼らは「ワーキングメモリ」を持ち、かつ状況に応じて怒りを抑えたり、好意を示そうとする能力である「社会的知能」が発達させているのです。
【参考文献】
『幸せになる成功知能HQ』(澤口俊之、講談社)
『心が脳を変える 脳科学と「心」の力』(ジェフリー・M・シュウォーツ、サンマーク出版)