教養としての近代思想⑦:ドイツ観念論

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カント:『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』。批判哲学の立場から理性を検討し、主観の働きにより対象が構成されるという認識論を展開して、ロックやヒュームなどのイギリス経験論とデカルトを祖とする合理論を総合しました。また、理性を理論理性と実践理性に分け、理論理性の領域は経験できるものに限られ、それを超えたものは実践理性が明らかにする領域だと考えて、理性の限界を明らかにしました。

『純粋理性批判』:人間の認識能力(理論理性)の限界を検討。概念を形成する悟性は、感性より得た直感的な印象に思考の枠組みを当てはめて対象を構成するとしました。そして、こうした感性と悟性の協働によって認識が成立しますが、事物そのものである「物自体」は認識できないとしました。

感性:認識の素材を受け取る能力。時間・空間という形式を持ち、感覚を受容します。

悟性(understanding):素材を整理し、秩序づける能力。また、感性と悟性をつなぐものをカントは構想力と呼びました。

物自体:現象の背後にある、物そのもの。

『実践理性批判』:人間の道徳能力(実践理性)の限界を検討。経験を超える事柄(神、霊魂の不滅など)については理論理性では判断できませんが、実践理性が関わる領域であるとしました。自然界を貫く自然法則と同様に普遍性を持つものとして、人間の行為の世界における道徳法則を追求しました。
『判断力批判』:反省的判断力について検討。自然美や芸術などの美的対象を考察の対象として取り上げ、それらに関わる想像力(構想力)の自由な働きや自然の合目的性を判断する能力を分析しました。
「内容なき思考は空虚であり、概念なき直観は盲目である。」(『純粋理性批判』)
「私の上なる星空と、私の内なる道徳法則」(『実践理性批判』):「繰り返し長く考えれば考えるほど、常に新たな感嘆と崇敬をもって心を満たすもの」として挙げられたもので、『実践理性批判』の結びの言葉。カントの墓碑銘にもなっています。
「汝の人格や他のあらゆる人格の内にある人間性を、いつも同時に目的として扱い、決して単に手段としてのみ扱わないように行為せよ。」(『道徳形而上学の基礎づけ』)

コペルニクス的転回:カントが従来の「認識が対象に従う」という理解の仕方を「対象が認識に従う」と180度転換したこと。

道徳法則:いつでもどのような場合でも、誰にでも当てはまる普遍的な法則。カントは、自然界に法則があるように、人間にも従うべき道徳法則があると考えました。これは神が与えたものではなく、人間に先天的に備わる実践理性によって打ち立てられるものであるとしました。また、行為の動機を重視したカントは、感覚的欲望(傾向性)から出た行為は結果として道徳法則に合致していても、道徳的価値を認めませんでした。

定言命法:「ただ~せよ」という命令で、道徳法則は定言命法の形で発せられます。カントはこの命令に義務として従う行為のみが道徳的価値を持つとしました。

仮言名法:条件付きで従うべき命令。カントはこれを道徳法則と認めてはいません。

自律:実践理性が自ら立てた道徳法則に自発的に従うこと。カントは自律的に行為する主体に自由と尊厳を認めました。

目的の王国:各人が互いの人格を目的として尊重し合う理想社会。全ての人間が互いを自律的主体と見なし、尊重し合う道徳的共同体。

永久平和論:カントは目的の王国の考えを国際社会に適用し、戦争のない永久平和を実現するために世界連邦が必要であると考えました。

フィヒテ:カントの哲学に大きく影響を受け、後のシェリングやヘーゲルらに影響を与えたドイツ観念論の哲学者です。ナポレオン占領下のベルリンでの講演「ドイツ国民に告ぐ」で広く知られ、ベルリン大学創設と共に教授に就任し、初代総長となります。

シェリング:ドイツ観念論の哲学者。同一哲学を唱え、芸術に現れる絶対者の直観的把握を目指しました。

同一哲学:自然と精神の対立の根底に両者を統一する絶対者を認める哲学。

ヘーゲル:ドイツ観念論の大成者。客観的な法と主観的な道徳の統一を主張しました。自由を本質とする精神は、まず個人の主観的精神として現れ、次に社会関係としての客観的精神となり、最後に両者を統一する絶対精神になると考え、このように主観的精神と客観的精神を統一した絶対精神が自由を実現していく過程として世界史を捉えました。すなわち、世界史は「自由の意識の進歩」であり、1人の人間が自由であった時代から、万人が自由な時代に進むとしました。

弁証法:矛盾を単なる誤りとするのではなく、全ての存在や認識は対立や矛盾を通してより高次なものへと展開していく、とする思考法。ヘーゲルは、事物や現象の運動を支える原理として、事物が正→反→合の過程を繰り返しながら発展していく法則を弁証法としました。また、世界を精神の弁証法的な自己展開の過程と考えました。

相互承認:フィヒテ・ヘーゲルの用語。互いを理性的存在者として認め合うこと、自己と他者が互いにその存在を認め合いながら存在すること。ヘーゲルは人間精神にとって、「自分はこういう者である」と自覚する自己意識が成り立つ上で、他者の存在は不可欠であり、異なる他者のうちに自らを見出すことで初めて自己意識が生じるとし、人倫という共同体において相互承認が行われると考えました。

ゲーテ:ドイツの詩人・作家。疾風怒濤(しっぷうどとう)と呼ばれる文学運動を主導しました。スピノザの汎神論の影響を受け、独自の自然観を築き、機械論的自然観に基づくニュートンの物理学を批判しました。

疾風怒濤(シュトルム・ウント・ドランク):元々はゲーテやシラーによる、理性よりも人間の感情を重視した文学運動を指す言葉でしたが、後に感情起伏の激しい青年期の内面を表す言葉として、「疾風怒涛の時代」が用いられるようになりました。
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