【C.H.Sisson英訳】
And is by nature so wayward and perverted
That she never satisfies her willful desires,
But, after a meal, is hungrier than before.
【Mark Musa英訳】
She is by nature so perverse and vicious,
her craving belly is never satisfied,
still hungering for food the more she eats.
【野上素一和訳】
また性質も非常に邪悪で罪深く飽くことのない
貪欲を満足させたことはかつてなく、
ものを食べると前よりいっそう飢餓を感じるのだ。
【平川祐弘和訳】
生まれつき凶悪無残
血に飢えて飽くことを知らない、
食った後の方が食う前よりもなおひもじいという奴だ。
【語句】
by nature=生来、本来。
Nature is the best physician.(自然は最良の医師。)
Habit is second nature.(習慣は第二の天性。)
wayward=(人・性質・態度など)言うことをきかない、強情な、わがままな。
perverted=邪道に陥った、誤った、歪んだ。
pervert=(人を)邪道に導く、(判断を)誤らせる。
perverse=正道を踏み外した、誤っている、邪悪な。
satisfy=欲望・希望・必要などを十分に満足させる、意を満たす。
content=それ以上は望まない程度に満足させる。
willful=わがままな、強情な、片意地な。
meal=食事(三度の食事は、朝食がbreakfast、昼食がlunch、夕食がdinner)。
vicious=悪意のある、意地の悪い、ひどい、悪性の。
crave=しきりにしたがる、必要とする。
belly=腹、胃、食欲。
(all) the more=(通例、理由や条件の句・節を伴う。~なので、~なら、それだけ)ますます、なおさら。
【解説】
例えば、アウグスティヌスはマニ教を信じていた9年間を振り返って、次のように言う。
「19から28歳に至る9年間(373~382年)、私達は様々な情欲のままに迷わされながら迷わし、だまされながらだましていました。表立っては自由学芸(文法、修辞学、弁証法、数学、幾何学、天文学、音楽)と称される諸々の学問を通じ、隠れては宗教の虚名の下に、前においては高ぶり、後においては迷信深く、しかし、そのいずれにおいても私達は空しかった。
一方でははかない世俗の名誉を追い求め、劇場の喝采、詩の競演、乾草の冠を目指す競技、馬鹿げた見世物、だらしのない情欲にうつつを抜かしながら、他方ではこれらの汚れから清められたいと願って、『選ばれた人』とか「聖者」とか呼ばれる人々の下に、食物を運んでいました。彼らはその食物を腹の中で料理して、我々を救済する天使や神々をこしらえてくれるはずでした。実際、私はこういう馬鹿げたことに夢中になり、私によって、私と共にだまされていた友人達と一緒に、そのようなことをしていたのです。」(『告白』第4巻第1章)