「単身赴任はやっぱり難しい?」― 家族の決断が揺らぎ始めた ―

「単身赴任はやっぱり難しい?」― 家族の決断が揺らぎ始めた ―

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ビジネス・マーケティング
正式に駐在の人事発令があり、ステイタスの変更に伴って給与などの処遇が駐在員扱いとなった。
ようやく家の賃貸契約が結べるようになり、物件を探し始めた。
そんなタイミングで日本にいる家族に電話をした。
どんな物件が良いか家族の希望を確認したい、私はそんなことを考えていたのだが、返ってきたのは「単身赴任はやっぱり難しい?」という言葉だった。
正式に駐在員扱いになって、これで家族4人の生活が始まると考えていた私にとっては、いまさらなにを言ってるのだろうか?という感覚だった。
「とりあえず行ってみよう」と話し合ったじゃないか。私はそんな言葉を発していた。
詳しく話を聞いてみると、この数か月ひとりで悩んでいたそうだ。
会社を辞めてサンノゼに帯同するか、それとも会社を辞めずに日本に残るか。
というのも、同僚から同じような状況で会社を辞めて海外へ行き、数年後に帰国した際に正社員での働き口探しに苦労した人の話を聞いたらしい。
「会社を辞めた瞬間、それまで積み上げてきたものは全部なくなる」。
そんな話を聞かされて、一度決断したはずの思いが揺らいでしまっていた。
上司との評価面談では「会社に残ってキャリアアップを目指したらどうか」とも言われことも悩みに拍車をかけたらしい。
自分のキャリアの中断と家族との生活、誰に相談することなく答えが見つけられずにいた。
実は、子供たちも動揺していた。
彼らにとって、この数か月間の空白は様々な影響を与えていた。
学校からは学年主任を通じて内部進学希望の有無の返事を求められていた。
海外への転校については、早い段階から予定時期など学校に相談をしていた。
ところが、なかなか転校の連絡が来ないことで学校側も焦っているらしかった。
というのも、息子は中学3年になっていた。内部進学は成績順に上位90%までとなってこともあり、
たったひとりの希望の有無も誰かの人生に影響してしまうのだ。
本人は高等部と中等部の合同練習に積極的に参加しながらも、この先の自分の学校生活が描けずにいた。
娘もまた、辛い時間を過ごしていた。
事前視察でアメリカへ行った際に、学校側に事情を説明して授業を休ませたこともあって、
クラスの誰もが転校することを承知していた。子どもならではの無邪気な残酷さが向けられていた。
例えば、「いつになったらアメリカ行くんだ?」とか「英語話してみろよ」みたいな言葉でさえ、先が見えずにいた娘の心を傷つけた。
電話を切った後で、私はホテルの部屋で、しばらく動けなかった。
ようやく始まると思っていた海外駐在は、家族それぞれに別々の不安を生み出していた。

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