【沈黙の艦隊】は【アドルフに告ぐ】と同じ文脈で読む
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【アドルフに告ぐ】は手塚治虫の名作ですが、元ネタは新聞記事による誤報でした。ヒトラーはある人に命じて自分にユダヤ人の血が流れていないか調査させた。するとそいつはどこから出た情報かは不明ですが、父親のアロイスがユダヤ人の金持ちと家政婦の間で生まれた子であると結論づけた。もちろん誤報ですが、ヒトラーの家系は非常に重婚が多く、どこかでユダヤ人の血が混ざる可能性はゼロではない。ですが【アドルフに告ぐ】は非常に面白い。確かにヒトラーはウイーン時代にユダヤ人の画商と深い関係にあり、縁があるんです。ですが後のユダヤ人政策から察するに決して良好な関係ではなかったんでしょう。では【沈黙の艦隊】はどうか?これは今でも実写版がロングヒットを続けており、ともすればつい最近描かれた作品だとカン違いする方も多いでしょう。ですが恐らくプロットが練られた時期は冷戦末期だろうし、あくまでも世界観は冷戦時代なんですよね。皮肉にも戦前の日本は潜水艦の運用が世界一ドへたくそであったし、ドイツはUボートを通商破壊に特化することでアメリカを一時的にせよ配給制にまで追い込んだ。同盟国の日本はドイツから再三にわたり潜水艦を通商破壊に使うよう催促されたが、柳に風と受け流した。するとアインシュタインが魚雷の改善に寄与したのが追い風となりレーダーの進歩も相まって通商破壊に猛威を振るったUボートは大西洋から駆逐されてしまう。恐らく作者のかわぐちかいじはこのあたりがきっと念頭にあったのでしょう。かと言って戦争を美化する話も描きたくない。そこで生まれたのが冷戦時代を舞台とした【沈黙の艦隊】だったわけです。最盛期に帝国海軍は潜水艦を100隻くらい保有していたのに。彼らはいったいどこに消えたんでしょうか?少なくとも作者にこうしたモヤモヤした気持ちがあったのは確かでしょう。艦長の海江田四郎は世界平和を実現すべく奔走しますが、今の日本とは全く対照的。要は【ロシアやアメリカやイスラエルみたいな戦争屋に日本は堕するな与するな】というメッセージでしょう。もはや原潜はその役目を終えつつあります。これからはむしろ原潜が不要となる作品こそ描かれるべきでしょう。団塊に今の戦争が理解できるわけもなく、ましてやドローンの台頭で戦いの様相が大きく変わった。もはや戦争屋はパチンコ屋で北斗の拳を打つパチンカスに堕した。こんな過渡期は下手に欲かいて戦争など仕掛けない方が無難です。