ハラスメント対策の基本を間違えるのは法律依存症だから

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法律・税務・士業全般

あなたは法律依存症!?

ハラスメント対策の専門家と言うと社会保険労務士や弁護士をイメージする人が多いのは、なぜでしょう?

だって、ハラスメント問題は労働法の問題だから・・・

ハラスメントは法令で禁止されていて、就業規則でも禁止している。
そして社員がハラスメントによって心身に障害を負ったら安全配慮義務違反に問われ賠償請求を受けるかもしれない。
だから法律問題である。

なるほど、ここまではそのとおりかも。なのですが。。。

ここで大事なことに気がついてほしいのです。

多くの皆さんがイメージしているハラスメントは、果たして法律的な意味でのハラスメントでしょうか?

みなさんは気がつかないうちに法律依存症にかかっているかもしれません。



ハラスメントクレームのほとんどはハラスメント事案ではない

社内相談窓口やアンケートを通じて得た結果から見ると、ハラスメントクレームの内容のほとんどは法律上のハラスメントではありません。

厚労省のホームページなどで詳しく書いてあるパワハラの定義と具体的な事例を見てください。
これは明らかにパワハラだ」と言えるようなケースが実際にどれほど起きているでしょうか。

昭和の時代ならいざ知らず、いまどき、「これはパワハラだ」と断定できるようなわかりやすいケースはめったに起きません。
それはそうでしょう。ハラスメントに対してこんなに<うるさい時代>になったのですから。

ニュース記事ばかり見てしまうから、世の中ではひどいパワハラが横行しているように見えてしまうのですが、どう考えたところで、昔に比べればずいぶん控えめになっています。

それでもハラスメントクレームが多発し、トラブルが絶えないのはなぜでしょうか。
その理由は、ほとんどのハラスメントトラブルの実態は法律問題ではないからです。


バカ呼ばわりはパワハラ?

ハラスメントクレームに対してカウンセリングをし、被害者側の意識を掘り下げてゆくと、そこには法律とは無関係の感情問題があることに気がつきます。

大勢の前で上司からバカ呼ばわりされました。

「バカ」と言われたのですか?

バカ呼ばわりです。

「バカ呼ばわり」って?

私をバカにしたのです

どんな風に?

バカにするような態度だったのですよ!パワハラです!

こういったケースが多いのです。

つまり、被害者の心が傷ついたことは事実ですが、相手がパワハラ行為を行ったかどうかは客観的にはわからないことが多いのです。

そんなケースでも、被害者が「パワハラだ」と信じて主張する以上は会社は無視できません。

で、社労士や弁護士に相談したとしましょう。皆さんは彼らにどんな風に相談しているでしょうか。

こんなことが起きました。パワハラでしょうか?

こう聞かれた法律職の多くは<厚労省がつくった資料>をみながら答えるでしょう。

パワハラの法律上の定義トラブル事案が一致するかどうかを判断して、「これはパワハラ」「これはパワハラではない」と答えてくれたらうれしいですか?

しかし、被害者の主張だけを根拠に事実認定をするわけにはゆきません。

被害者と加害者は見ている風景が違う

加害者にも事実関係を聴き取り、その意見を聞かなければなりません。
で、加害者はなんと言うでしょう。

はい。被害者が言うとおり、私はパワハラをしたのです。
と素直に認めた加害者を私はほとんど見たことがありません。

加害者にも必ず何らかの主張があります。

私はバカだなんて言っていませんよ。
バカにしているのはむしろ彼の方ですよ。
彼にやる気がないから正しく指導しただけです。

のような主張をされるものです。

それでもなおパワハラ認定できるケースがどれほどあるでしょうか。

もちろん、客観的にパワハラが行われたことが確実なのであれば、就業規則に基づいて処分しなければなりません。

しかし、確実な証拠がないのにパワハラだと認定したら、会社は加害者とされる社員から逆に訴えられる可能性がでてきます。

と言うか、そもそも会社がやっていることがパワハラの可能性大です。

では、100%確実に有罪認定できる事案なんて、実際にどれほどあるでしょう。

もしそういう事案であっとしたら、それは多くの場合、刑事事件になるべき程度の案件か、または加害者の精神又は健康上の問題が疑われる状態だと思います。

心が疲れているときにパワハラをしてしまうケースはよくあります。
その背景に過重労働や経営幹部のパワハラが影響している可能性もあるのに、加害者側の健康面の影響を無視して「パワハラだから処分」という判断をしてよいものでしょうか。

ある日突然にパワハラが起きたのなら、高い確率で健康問題か職場環境の影響が疑われ、会社の安全配慮義務に関わります。

長期間にわたってパワハラが発生していたのなら、そういう人物に対して適切なサポートをしないで放置していたのか?という、これもまた会社の人事管理や安全配慮義務に関わります。

だとすると、これらはすでにハラスメント程度の話ではなくて、健康面の問題か警察沙汰となるのですから、<ハラスメントという法律問題>として対処する意味がありません。

ほとんどのハラスメント問題は法律問題として処理することが相応しくないのですから、ハラスメント対策を法律問題として捉えることがそもそも無駄なのです。

ハラスメントトラブルは心理の問題

被害者がクレームを申告するのは、
法律的な意味でのパワハラをされたから
ではなく、
いやなことをされたから
です。

その「いやなこと」をやめてほしい。
つまり、苦しみから逃れたいという願望を被害者は持った。

そして、「パワハラされた」と主張すると会社がパワハラ問題として本気で対応してくれるのではないか。

と期待する。

これは心理ストレスに苦しむ被害者にとっては切実な願望で、ときに命に関わるほどのことです。

ところが、クレームを受けた会社が

これはパワハラではないと弁護士が判断したから会社は何もしません

という対応をしたら。

または、加害者にクレームがあった事実を伝えて、反省を促しただけで終わったらどうなるでしょう。

被害者の気持ちを想像してください。次のような心情になるのではないですか?

被害社員の本音

心の苦しみから逃れたくて、最後の望みをかけて会社に相談したら、会社から「パワハラではない」という理由で、人事部長から上司に注意を促しただけで終わってしまった。
つまり、自分が相談した事実は上司(加害者)にバレてしまった。

早速、今朝も上司は私の顔を見るなり不快な表情をしている。
上司から嫌われてしまったのだ。私はもうこの会社にいられない。

相談しなければよかった。会社を信じた私がバカだった。退職しよう。

そして復讐しよう。一番悪いのは、私に期待させておきながらパワハラを放置している会社だ。

そうだ。会社の法令違反を探し出してネットで流し、退職したら行政機関に通報してやろう。
今に見ていろよ。。。


ハラスメントトラブルに法律的に対応した結果、社員との訴訟になっても、内部通報で不祥事がバレても、法律家はそれでまた新たな仕事をもらえてうれしいでしょうが、会社も社員もその家族も多大な損失を被るのです。

皆が法律依存症だから、被害者もハラスメント担当者も法律問題として対処するしか方法がないと考え、わが身を守るために法律家を味方につけようとし、それによって社内の相互不信を招き、業務は停滞し、人材不足に陥るから、転職あっせん事業者がぼろもうけし、社会全体の負担が増すばかりです。

こういう悪循環の風景を私はたくさん見聞きしてきたので、ハラスメント対策は心理面を重視して組織の上層から行ってくださいとお願いしているのです。


法律家が登場したらもう後戻りはできない

社員の本音を聞いてみてください。会社に対するたくさんの不満や欲求を抱えていますが、法律的に紛争を解決したいなどと思う人はほぼいません。
誰だって、もめないで穏便に願望を遂げたいのです。当たり前です。

それなのに、会社の代理人と称する弁護士や社労士が登場して、
あなたの本音を聞かせてください
と語りかけてきたら、社員はどう思うでしょう。

法律的な話になってしまったな。余計なことを言ったら後で不利なことになりかねない。

これがごく普通の社員さんたちの本音ではないですか?

いやそんなことはない

とお考えなら、私とでは現実認識が違いますから、この記事をこれ以上読んでも意味がないでしょう。

で、
確かに、法律家から<本音を聞かせろ>と言われても本音を言えるはずがないよね。

と思ったのなら、
じゃあなぜ、円満解決を捨てて法律問題として対処するのか
を考えてみましょう。

円満に解決したいなら、法律というイメージを脳内から捨てて、相互理解による社員との信頼構築を目指すべきです。
つまり、社員の本音を誠実な気持ちで聞き取るところから始めるはずです。

なぜ法律問題だと思ったのか、合理的に説明できますか?
世間の風潮を見てなんとなくそういうものだと思った。
つまり、ただの思い込みだったのではないですか?
これが法律依存症です。



法律家に頼れば安心という保身感情

とても残念なことに、日本社会ではなんでもかんでも法律的に判断し解決しようとする意識、いわゆる法律依存症が増加しています(それについては別の記事で詳しく触れたいと思います。)。

なぜ法律に依存するか。一言で言うなら「保身」です。
社員とのコミュニケーションも、円満解決も自信がない。
そういうことで責任を取りたくない面倒なことに関わりたくない

だから法律家に相談して、法律家が言うとおりにしておけばいい。
法律家が法律に基づいて示した判断には誰も異を唱えないから。

そう。。法律判断に対しては誰も異を唱えない。

これをわたしは<あわれな法律絶対主義>の一端と捉えています。

人がどうあるべきか法律が決めることではないのですよ。

自分で考えて判断するのが怖いのですね。

自分だけは安全に仕事をしていたいのですね。

こういう意識の中に「誰かのため」という要素がどれほど混じっているでしょうか?

要するに、自分だけよければいい。会社がどうなろうと知ったことではない。

そういう無意識の感情が存在していませんか?


社員や家庭がどうなってもいいなら法律的に対応すればいい


こういう実態があるからこそ、ハラスメント問題を法律問題として捉えてはいけないのです。

そう思うのは、私が、会社に対し一種の願望を持って、この仕事をしているからです。

それは、「社員とその家族の人生を豊かにする組織であってほしい」という願いです。

いや、ウチの会社は会社として利益があがればいいんだよ。社員なんてどうなろうが知ったこっちゃないよ。

そういうふうにおっしゃる経営者にたくさん出会ってきました。
そういう人は、何も悪びれずにサラっとおっしゃいます。

しかし一方では
社員あっての会社、おだやかな家庭があっての会社だよ。だから社員と家族を大切にする経営をしたい。」とおっしゃる社長さんもわずかにいます。

私はそういうコンプライアンスの企業が好きですから、そういう会社のためにお役に立ちたいです。

私はそういう考えをもとにハラスメント対策を支援し、この記事を書いています。

他人が、会社が、社会がどうなろうと知ったことではない

そうお考えであれば、どうぞ世間の風潮に合わせて、わが身大事でハラスメント対策を行えばよいでしょう。

私はもともと法務業の国家資格者ですが、ハラスメント問題で対応するときは「心理カウンセラー」として対応し、社員さんから法律と紛争に関する相談をされたときには、「それはその専門の方にお尋ねください」と言います。

心の問題と法律問題を明確に区別しないと、適切なハラスメント対策は成り立たないからです。

先に心理面での対応をし、明らかにパワハラであると認定されるときにはじめて法律問題として対処すればよいのです。

心理問題として対応するべき段階で法律問題として対処し、それに疑問を持たないで納得するのですか?

どうかこれ以上、法律依存症が流行しないように切に願っています。


適切なハラスメント対策とは


仕事が1人で済むなら組織は要りません。「たくさんの人を必要とする仕事」だから組織をつくるのですが、適切なコミュニケーションができなければ、人が効率的に動かない、いわゆる「非効率な組織」になります。

非効率な状態で人を雇うのはムダなのですが、その非効率について目をつぶり、会社がつぶれるまで経営を続けている様子を私は日々観察しています。

20世紀までの日本では「飲みにケーション」がありましたが、今は死語ですね。

では、代わりにどうやってコミュニケーションを?と聞くと、「そんなの問題ないよ」「うちは仲良くやっているよ」と。

へえ、本当にそうでしょうか。皆さんは20世紀の日本人よりもコミュニケーション能力が異常に発達したのですね。

若い世代はスマホ世代であるがゆえに、コミュニケーションの相手としても、発信元としても、状況はむしろ深刻になっていませんか。

飲みにケーションに代わる工夫をしなければ中小企業は立ち行かなくなる。
AI化の進展によって人材の少数精鋭化が進行すれば、コミュニケーションを軽視する企業も人材も、この社会から見えなくなってしまう。

と私は考えます。なぜ「大手企業」とは言わず「中小企業」に限定するのかは、いずれ別の記事で触れます。

私がおすすめするハラスメント対策は、適切なコミュニケーションを通じて相互理解を深めることを主眼とする対策です。
人材の離職を防止し、成長を促し、法令違反リスクを低下させ、業務効率を向上させることにつながります。

たくさんの方々からそれについて「面倒くさい」と言われますが、相互不信の状態で仕事を続ける方がよほど非効率です。
それなのに多くの人がそれを「面倒くさい」と感じないのは、喫煙や飲酒と同じく「習慣化」という心理現象に過ぎません。

どんなに愚かなことでも、それが習慣になり、皆がやりはじめると「そういうものだ」と思えるようになります。

20世紀の日本人は、面倒くさい「飲みにケーション」をちゃんとやっていたのです。私はお酒が飲めないから大嫌いでしたけどね。


適切なハラスメント対策の具体的な方法を語ると時間がかかりますので、いずれ別の記事で触れたいと思います。

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