初回では演技の基本的な考え方を、前回は演技の「芯」に迫る内容をお伝えしました。
第3回目となる今回は、多くの人が抱えるお悩みについて書いていきたいと思います。
テーマは【相手役との芝居が上手く噛み合わない時は?】
これまでの内容を踏まえた話になっていますので、前2回を読まれていない方はぜひそちらもご覧ください!
① なぜか相手と噛み合わない・・・。
お芝居の経験がある人なら、きっと一度は言われたことがあるであろうこの言葉。
「一人で芝居しないで!」
僕も耳にタコができるくらい言われました。そしていつも心の中で思っていました。
「一人?ちゃんとセリフのやり取りをしてるし、相手に合わせてるし…。どういう意味?」
この言葉、簡単に使われがちですが、具体的にどういうことか教えてもらえる機会は意外と少ないものです。
ここで改めて説明しますね。このシリーズは「今さら聞けないこと」を扱うのが真骨頂です(笑)。
簡単にまとめると、これは 「相手役との感じ方や反応のズレ」 のことを指しています。
キャッチボールに例えるなら、こういうことです。
「自分がどんな球をどんな風に投げるかばかり考えて、相手がどこに構えているのか、捕球する準備ができているのかを無視している。まるで壁に向かって投げているような状態。」
お芝居も同じです。
「お芝居はコミュニケーション」であり、相手役がいるからこその自分。
これまで再三お伝えしてきた通りです。
本当にお芝居が上手い人は「自分が何をするか?」ではなく、「相手役がやりたいことをやらせてあげる」ことを常に考えています。
相手役がやりたい芝居を引き出し、それに自分の芝居を合わせていく。
これが本質です。
・相手が自分の演技から何を感じているのか?
・自分の演技によってどんな反応をしているのか?
・その反応から、どんな道筋を通ろうとしているのか?
これを瞬間ごとに感じ取ることが重要です。
自分のセリフに意識を取られていませんか?
自分の演技プランばかりを考えていませんか?
それを相手役に押し付けていませんか?
これでは相手役と噛み合うことは難しいのです。
では、どうしたらいいのでしょう?
答えは 【相手に全集中!】 です。
② 相手役のことだけを考える演技を試してみよう!
では、具体的にどうすればいいのかを考えてみましょう。
ただし、これをいきなり現場や稽古場で試すのはおすすめしません。
なぜなら、稽古場や撮影現場は練習の場所ではなく、あくまで「成果を提示する場」だからです。
特に舞台の稽古を「レッスンの延長」と捉える人がいますが、それは違います。
稽古場は、自分がその日できる最善の芝居を演出家に見せる場です。
映像の現場で打ち合わせをしても練習をする人はいないのと同じで、舞台の稽古もまた本番を想定した場なのです。
「稽古は本番のように、本番は稽古のように」
これは、僕が尊敬する大先輩から教わった言葉です。
そのため、技術を身に付けるためには 「練習」 が必要なのです。
話が逸れましたが、ここでぜひ試してほしいのが、
「自分の芝居を全く考えず、相手がやりたそうなことをやらせてあげる演技」。
これを練習でやってみてください。
例えば:
・相手が泣きたい演技をしたそうなら、それを助ける。
・相手が怒りたい演技をしたそうなら、それを手伝う。
・相手がやりたいことを瞬間的に察し、前2回でお伝えした「瞬間の反応」や「衝動」を意識しながら、身も心も使ってアシストしてみてください。
最初のうちはアドリブで試しても大丈夫です。
ちなみに、僕はいつもレッスンで、台本のセリフを使わずに物語を展開する練習を取り入れています。
ストーリーや設定をそのままにして、自分の言葉で演技をするのです。
こうすることで、意識が自分の頭の中に向かうのを防ぎ、自然と相手役に集中できるようになります。
そしてこの練習を続けていくと、ある日気付くはずです。
「あれ、自分の演技もしやすくなった?」
この瞬間こそ、一方通行の演技から、相手役との「つながり」を意識した演技へと変化を遂げた瞬間です。
③ 相手があってこその自分
今回のテーマは、人によっては時間をかけないと気付けないことかもしれません。
特に長くお芝居を続けている人ほど、クセがついていて修正が難しい場合もあります。
しかし、意識的に練習を重ねていけば、必ず出来るようになります。
絶対です!
自分にやりたい演技があるように、相手にもやりたい演技があります。
それを正面からぶつけ合うのではなく、相手を引き立てる演技を心掛けましょう。
日常でも、自分勝手な人より協調性のある人のほうが信頼されますよね。
お芝居でも同じです。
「この人と芝居をすると、とてもやりやすい。」
「どんな芝居をしても返してくれるから安心できる。」
こう思われたら最高ですよね。そして、それは次の現場にもつながります。
まだお芝居を始めたばかりの方は、ぜひこの言葉を覚えておいてください。
「お芝居とは、相手のやりたいことをやらせてあげること。」
これを心掛ければ、いずれ必ず自分のやりたい演技もできるようになります。
なぜなら、相手も同じように考えてくれるからです(笑)。
そんな愛に満ちたお芝居は、本当に素敵ですよ!
【まとめ】
・お芝居は一人でやるものじゃない!
・相手役に全集中し、全身全霊で相手を引き出す!
・相手から信頼を得よう!
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
次回のテーマは 「っぽく」ではなく、本当の気持ちを込めて演技しよう! です。お楽しみに!