あなたを振り向かせたかった

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ねえ、あなた。
私の愛しい人。
元気でやっていますか?
私にとって、あなたはいつも高嶺の花。
いつもこうやってあなたの横顔を眺めてたわね。
今は踏ん切りがついたけど、一時期、私はあなたを私に振り向かせようと必死だった。
でも、あなたはいつも仕事、仕事…
私があなたを振り向かせようと必死だったあの頃、他の女の存在を疑ったこともあった。
あの頃、あなたが私に振り向いてくれないことが悔しくて悔しくて、色々な手段を使って、
あなたの身辺を調べたこともあったわ…
例えば、あなたの同僚にそれとなく、毎日、本当にそんなに遅くまで残業をしているのか、
聞いてみたこともあった…
無駄な努力だったわ。
だって、あなたは会社で「仕事のムシ」として有名だったんだもの。
今、考えれば、馬鹿なことをしたわ。
でも、これは秘密。
この秘密はお墓の中まで持っていくつもり。
仕事だから、いつもうまくいくとは限らない。
落ち込んで、落ち込んで、それこそこの世の終わり、みたいな感じで待ち合わせ場所に
あなたが、現れたこともあった。
あのレストランにたどり着けたのが不思議なくらい…
今でも覚えてる。
あの時のあなたの表情にそぐわないほどの華やかな高級レストランだったわね。
私は最初は、わざとあなたの表情に気づかないふりをした。
「今日も忙しかった?」
それとなく話題を振ってみた。
「うん、ちょっとね…」
苦しい表情のまま、あなたは答えた。
「どうしたの? 忙しすぎて、疲れてる?」
「俺にはやっぱりこの仕事、向いてないかもな」
私はその時、ぞっとした。
なんとなくその一言が私のあなたへの思いを一変させてしまった気がした。
仕事一辺倒だった大好きなあなたが、その仕事でこんなにも苦しんでいる。
本当はあなたの手を握って、慰めてあげるのが正解だったのかもしれない。
でも、できなかった…
しょせん私のあなたへの思いはその程度だったのかもしれない。
よく聞いてみると、取引先との契約が直前でキャンセルされたらしい。
その程度のことで…と考えるとなんだか腹がたってきた。
「私、帰るわ」
そのまま、店を飛び出してタクシーを拾った…
ごめんね。
そのあとは、あなたの営業成績も転げ落ちるように下がっていったと聞いたわ。
でも、そんなあなたは本当のあなたじゃない。
私の「あなた」は、いつもでもウィスキーを前にくつろいでいるあなた。
そんな「あなた」を私は死ぬほど、振り向かせたかった。
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