コラム 39 穿刺法

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 循環器診療に従事していると、カテーテル検査で血管を穿刺することが多いです。血管は大きく動脈と静脈に分かれていて、それぞれ検査や治療によって動脈を使ったり静脈を使ったりします。長年血管を穿刺してきてだいぶ上達してきたので今回のコラムでは血管穿刺法を皆様に伝授いたします。 
 まず穿刺は大きく2種類に分かれます。一つはブラインド穿刺ともう一つはエコーガイド下穿刺です。私が医者になった当初は前者のブラインド穿刺が主流でした。解剖学的に動脈であればその拍動を触知しながらその上を針でつくのです。静脈は大抵の場合動脈の脇を走行しているので、静脈を刺したければ動脈の拍動を触知しながらその脇を針で刺すのです。文章で説明すると簡単なように見えますが、患者さんの体格や個々の僅かな解剖の違いで結構医者になりたての頃はブラインド穿刺に苦労しました。前腕の静脈路確保や橈骨動脈ラインは血管が浅くほぼ見えているような状況なので練習すると(語弊を恐れずに言うとやればやるほど)上達します。研修医でも一年くらいですぐ上達します。しかし、中心静脈路確保や大腿動脈ブラインド穿刺は慣れだけではなく、解剖学的なイメージと指先の感覚が重要です。
右内頸静脈は右内頸動脈の外側ですので左手指先で右内頸動脈を触知しながらその1cm程度外側を穿刺します。教科書的には60度くらいに針を立てて右乳頭に向かう方向に穿刺をします。左内頸静脈穿刺は全て逆です。個人的には利き手に関係なく左右逆の手で刺した方がいいと思っています。穿刺のコツは右を刺す場合は患者さんにやや左を向いてもらうと思うのですが、「軽く」向いてもらうことです。なぜなら、強く向くと胸鎖乳突筋が張ってしまい、内頸動脈の触知が難しくなるからです。私は必ず「少し左を向いて力を抜いて下さい」と患者さんに言います。二つ目のコツは胸鎖乳突筋を指すことです。左手で動脈を触知するとなんとなく胸鎖乳突筋の内側に指先が潜り込む感じになり胸鎖乳突筋の存在が際立ちます。その真上をメルクマルにして穿刺すると大体その下に内頸静脈があります。次に、鎖骨下静脈穿刺ですがこれはペースメーカーを挿入する際やアブレーション治療によく使います。これは教科書通りとしか言いようがなく、胸骨切痕と肩峰を結んだ直線上外側3分の一程度のところから穿刺して鎖骨の下、第一肋骨の上を胸骨切痕に向かって刺します。コツというか知っておくべき知識としては「結構深く刺す」ということです。これは決して深く刺せば必ず鎖骨下静脈穿刺がうまくいくと言っているわけではありません。ご存知の通り鎖骨下動脈を穿刺してしまったり、肺を穿刺して気胸になってしまったりするリスクがあるので慎重になるのは大事なことですが、大体穿刺がうまくいかない原因は針が届いていないことである場合が多いです。ただしペースメーカー挿入目的で腋窩静脈を穿刺する場合はそれほど深くないので、あらかじめ造影してから穿刺をする方がうまくいく確率は上がると思います。最後に一番難関の大腿静脈穿刺ですがこれは大腿動脈の内側に位置しています。鼠径靭帯よりも遠位部で血管に当たる必要がありますね。コツは右大腿動脈を左手で触知しその裏に向かって針を進めることです。ブラインドだと難しくて大腿動脈に針があったってしまうリスクがありますが、ここは経験がものを言う世界です。慣れてくると左手指先で大腿動脈触知の感覚から得られる情報が多くなってきます。動脈の弾力性、血管径、深さが感覚として見えてきますから、その動脈の脇をかすめるように動脈の裏の軟部組織に針が到達するように刺すと大腿静脈穿刺に成功します。もう一つのコツは大腿静脈の真上から穿刺するのではなく1cm程度内側から動脈の裏めがけて針を進めることです。大腿動脈の裏をめがけるには静脈の真上と思われるところから刺すよりも、やや内側から針を進めた方が格段に穿刺が成功する可能性は高まります。この点は動脈誤穿刺とのリスクの兼ね合いで色々な意見をお持ちの方がいるかもしれません。
 このようにブラインド穿刺はさまざまなコツがありますのでもっと詳しく知りたい方はご連絡ください。
 さて、ブラインド穿刺は最近エコーガイド下穿刺にとって変わられつつあります。それは実際にエコーで血管を観察しながら、穿刺ができるので安全と言われているからです。徐々に中心静脈穿刺はエコーガイドが推奨されてきています。確かにエコーガイド下穿刺は有用ですが、これもしっかりとしたスキルがあればの話で、誰でも手軽にできるようになるわけではありません。1番のコツは針先をしっかり描出することです。エコーガイド下穿刺に用いられる超音波プローベは一般的にリニアプローベです。これは縦10cm横1cmくらいの代物ですが、実際のエコー画像が横1cmのどの部位で画面に表されているのか知ることが必要です。以前私が使っていたプローベは真ん中0.5cmのところの画像でしたが、今の病院のエコープローベは手前側ギリギリのところで画像ができていると思われます。0.5cm自分のイメージと画像がズレると針先の描出が困難でエコーガイド下穿刺はうまくいきません。
 以上のようにブラインド穿刺もエコーガイド下穿刺もそれぞれコツや鍛錬が必要な別々の手技であると私は考えており、特に循環器内科の医師は両方の技術を自分のものにすることが必要であると考えています。
 皆様も穿刺に困ることがあればご連絡いただければわかる範囲内で自分の経験を伝授いたします。医療従事者以外は必要でない知識ですので、読み飛ばしておいていただけると助かります。

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