「動画広告はある程度やりきった。次の一手はどうすればいいのか」
最近、マーケティング担当の方からこうした声をよく耳にします。 リーチもフリークエンシーも十分。それなのに、生活者からは「またこの広告か」と思われているのではないか……そんな漠然とした不安、ありませんか?
視点を変えてみましょう。家事や移動中、仕事の合間など、私たちの日常には「スマホ画面を見ていない時間」が確実に存在します。
この「耳のスキマ時間」をどう設計するかで、ブランドの浸透度は大きく変わります。私は音声編集者として、ラジオCMからブランドポッドキャストまで関わる中で、「動画を増やすより、音声でホワイトスペースを埋めた方が効く」という確信を深めてきました。
今日のニュースは、まさにその裏付けとなる内容です。 「テレビも動画もやりきった後、どこにボールを投げればいいのか?」そのヒントとして、音声メディアの活用法を一緒に紐解いていきましょう。
radikoが16〜69歳の1,000人を対象に行った「生活シーンごとのメディア接触状況」調査から、非常に興味深いデータが出ています。2025年11月25日
押さえておくべきポイントは大きく3つです。
1. 「画面を見られない時間」を独占している
自動車での移動中、仕事中、勉強中。テレビや動画、SNSが入り込めないこの「ホワイトスペース」において、ラジオやradikoの利用が突出して高いことが分かりました。
2. 家事タイムの「第4の選択肢」
平日の夕方や休日の日中など、家事の時間はTV・TVer・YouTubeが競合します。しかし、ここに「ラジオ/radiko」を組み合わせることで、視覚メディアで取りこぼしていた層へ効果的にリーチできる可能性が示されました。
3. 広告ストレスが圧倒的に低い
これが最も注目すべき点です。広告接触時のストレス度を比較すると、動画広告が50〜65%台だったのに対し、音声広告は33.5%と最小。さらに週1回以上のリスナーに限れば、30.0%まで下がります。
ポイントはここだけ!
・「画面を見ない時間」に強いのがラジオ/radiko
・音声広告は、他メディアよりストレスが少ない
つまり、動画広告が飽和したあとに残っているのは「リーチできていない領域」だけでなく、「心地よくメッセージを届けられる領域」でもある、ということです。
結論から言います。 動画広告の次の一手として提案したいのは、「音声でホワイトスペースを取りに行く設計」を、カスタマージャーニーの中に意識的に組み込むことです。
なぜ、今「音声」なのか?理由は大きく3つあります。
1. ホワイトスペースは「質の違う接点」だから
家事中や運転中は、画面を見ない代わりに「耳」だけが空いています。 ここは、視覚情報がない分、刺激の強い映像よりも、丁寧な声のトーンや言葉選びがスッと入ってくる「特等席」なのです。 先ほどの調査にあった「ストレス33.5%」という低い数字は、この「耳の受容性の高さ」を物語っています。
2. ストレスが少ない接触は、回数を積みやすいから
「またこの動画か……」と眉をひそめられる接触よりも、「ながらで聞き流せる」接触の方が、長期的にはブランドへの好意や想起を積み上げやすくなります。 特に検討期間が長い商材(自動車、不動産、BtoB商材など)では、嫌われずに「耳に残っている」という状態を作るフリークエンシー設計が、ボディブローのように効いてきます。
3. 「広さ」だけでなく「深さ」も作れるから
音声の武器は、15秒・30秒のCM(スポット)だけではありません。 CMで広く接点を作り、そこからブランドポッドキャストやスポンサード番組へ誘導する。そうすることで、認知の「広さ」と、理解の「深さ」を1本の線で結ぶことができます。これが動画単体では難しい、音声ならではの強みでもあります。
仮想事例:地方の自動車販売ブランド Aさんの場合
ここで一つ、仮想の事例を挙げてみます。 ある地方に店舗を持つ自動車関連ブランドのマーケ担当、Aさん(仮)のケースです。
Aさんは動画広告で「試乗キャンペーン」の認知は取れていたものの、「実際の来店までつながらない」と悩んでいました。 そこで、ターゲットの生活動線を再考。「通勤時」や「週末のドライブ時」に接点を持つべく、ラジオCMと、試乗体験談を語る15分のブランドポッドキャストを連携させる設計に変更しました。
数カ月後、来店アンケートの「どこで知りましたか?」を集計すると変化が。「ラジオで聞いた」「ラジオで気になってポッドキャストも聞いた」という声が、じわじわと増え始めたのです。
もちろん商材やターゲットにもよりますが、動画一辺倒で攻めるより、生活のリズムに合わせた音声の方が、マーケター側も受け取るユーザー側も、疲れにくいのではないでしょうか?
どのシーンで、どんな音を、どんな温度感で流すか。
この「生活感」のチューニングは、まだAIよりも、人の耳と感性が生きる領域です。 動画をやりきった今だからこそ、一緒にその「余白」を設計してみませんか?
ここからは、「今日から具体的にできること」に落とし込んでいきましょう。 全部を一気にやる必要はありません。まずはピンときたものを一つ選んで、試してみてください。
1. 自社ジャーニーの「画面を見ていない時間」を書き出す
ターゲットの1日の流れを、ざっくりと紙に書き出してみてください。通勤、配送移動、家事、残業中、閉店後の片付け……。「目は何をしていて、耳は空いているか?」を洗い出す作業です。これを可視化するだけで、「どこに音声を差し込めば届くのか」が一気に具体的になります。
2. シーンごとに「CM」と「番組」の役割を分ける
「短尺のCM」と「長尺の番組(ポッドキャスト)」は、役割を明確に分けましょう。
CM: 一言で「ベネフィット」を伝える(きっかけ作り)
番組: 「ストーリー」や背景を語る(ファン化)
この役割分担が決まっていると、制作会社やパーソナリティへの発注意図が伝わりやすくなり、修正などのコミュニケーションコストもぐっと下がります。
3. 小さくテストできる枠を探し、1クォーターだけ試す
いきなり大きな予算を動かす必要はありません。 例えば、ラジオCM数本と、全5回のブランドポッドキャストなど、3カ月(1クォーター)程度で一通り回せる単位で設計してみてください。成功か失敗か以上に、「音声をやってみた」という経験値が一つ増えるだけで、次のプランニングの解像度は驚くほど上がります。
私自身、音声編集者として台本づくりから入る案件では、必ず「どのシーンで流れる音か?」から逆算して設計します。 朝の通勤ラッシュに聞く30秒と、夜のリラックスタイムに聞く30秒では、響く言葉選びも、BGMのトーンも全く変わってくるからです。
これからの音声活用で最も大切な指標。それは、「何本CMを流したか(量)」よりも、「どんな時間に、どんな気持ちで聞かれているか(質・文脈)」です。
・通勤中の、少しピリッとした戦闘モードの時間なのか
・夕方の家事タイムの、少しぼんやりしたリラックス時間なのか
・深夜残業の、疲れ切った頭に染み渡る時間なのか
同じ原稿、同じBGMでも、聞かれるシーンによって「届き方」は全く変わります。
ブランドポッドキャストやスポンサード番組を企画するなら、内容を詰める前に「聞かれる場面を決める」ことを強くおすすめします。そこさえ決まれば、最適な尺もトーンも自然と絞り込まれるからです。
当初、番組構成に悩んでいたBさん。「経営層に聞いてほしいのか、現場リーダーに聞いてほしいのか」を明確にしただけで、企画がガラッと変わりました。
経営層向けなら: 移動中のタクシーなどで、5分で業界動向や概要をつかめる構成
現場リーダー向けなら: 残業中や作業中に、15分かけて具体的な事例をじっくり聞ける構成
遠い未来の業界予測を立てるよりも、まずは「明日のターゲットの耳が空いている1シーン」を確実に取りに行くこと。そこから少しずつ音声のタッチポイントを増やしていく考え方が、最も現実的で、結果として長く続けられる秘訣です。
ここまで読んでいただいて、「理屈はわかったけれど、うちのブランドだと具体的にどのシーンを狙えばいいんだろう?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
そんなときは、プロの壁打ち相手として、一度ご相談いただくのも選択肢の一つです。 私のような音声編集・企画の立場からは、例えば以下のようなお手伝いが可能です。
・ラジオCMや音声広告の原稿作成・トーン設計
・ブランドポッドキャストやスポンサード番組の企画・制作フロー構築
・既存の動画コンテンツを、音声向けにどう再編集するかの整理
・社内ラジオやインナーブランディング向けの音声活用アイデア出し
「仕様書を固めて、ちゃんとした発注を決めないと相談してはいけない」と身構える必要はありません。 まずは、「今こんな状況なんですが、どこから整理したらいいですか?」と一言投げていただくだけでも構いません。
動画広告のその先へ。 無理のない、御社らしい音声設計を、一緒に考えていきましょう。
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執筆・監修
でんすけ|ポッドキャスト先生
(Office Scene8 代表)
大阪出身、30代後半。テレビ局・レコーディングスタジオでの技術職を経て、ラジオ局にて番組ディレクター兼エンジニアとして従事。企画・制作・収録・編集の全工程を担当し、のべ100名以上のパーソナリティをサポートしてきました。現在はOffice Scene8を立ち上げ、音声配信の個別サポートやコンサルティングを行っています。
【主な実績】
Apple Podcast ランキング上位獲得
マネジメント 1位 / ビジネス 3位 / 子育て 4位
総合ランキング 38位
DLsite:ボイス/ASMR 1位、総合 2位
Voicy:フォロワー11.1万人チャンネル担当
受賞歴:近畿コミュニティ放送 番組賞・パーソナリティー賞 W受賞
その他、ラジオドラマ、CM、ASMR制作など業界歴15年以上
【メンタルサポート】
技術面だけでなく「配信を楽しみながら継続する」ためのメンタルサポートを重視。メンタルコーチおよびコーチングの有資格者として、配信者の不安や悩みに寄り添います。
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