オンラインによる特定継続役務提供
⑴考えられる役務
特定継続的役務提供とは、長期・継続的な役務の提供と、それに伴う高額の対価を約する取引のことを指します。オンラインで提供可能な特定継続的役務には、以下のようなものが考えられます。
・英会話教室
・学習塾
・パソコン教室
・家庭教師
・結婚相手紹介サービス
これらの役務は、Zoomやスカイプなどのオンラインツールを使用して、対面での提供と同様のサービスをリモートで行うことが可能です。
役務の提供はオンラインでも概要書面や契約書面の交付は原則として書面
特定商取引法では、特定継続的役務提供を行う事業者に対して、契約締結前に概要書面を、契約締結後に契約書面を消費者に交付することを義務付けています。これらの書面は、原則として紙の書面で交付する必要があります。
概要書面には以下の事項を記載する必要があります。
・事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人の場合は代表者の氏名
・役務の内容
・購入が必要な商品がある場合はその商品名、種類、数量
・役務の対価その他の支払わなければならない金銭の概算額
・金銭の支払時期、方法
・役務の提供期間
・クーリング・オフに関する事項
・中途解約に関する事項
・割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
・前受金の保全に関する事項
・特約がある場合はその内容
契約書面には、概要書面の内容に加えて、以下の事項も記載する必要があります。
・契約の締結を担当した者の氏名
・契約の締結の年月日
・購入が必要な商品がある場合は、その商品を販売する業者の情報
電子による概要書面と契約書面の交付は事前の承諾が必要
2022年6月の特定商取引法改正により、消費者からの事前の承諾があれば、これらの書面を電磁的記録で交付することが可能になりました。ただし、この電子化には消費者の事前承諾が必要不可欠です。
電子による概要書面と契約書面の交付の流れ
電子による概要書面および契約書面の交付の流れについて、以下の手順に従って行います。
⑴お客様との打ち合わせ
まず、お客様との打ち合わせ時には、概要書面と契約書面を電子形式で交付することについての承諾を確認します。お客様が電子交付を希望する場合、その旨を電子メール等で明確に返答してもらいます。例えば、「電子による方法で概要書面と契約書面の交付を希望します。」という内容の承諾メールを受け取ります。
⑵電子書面に承諾いただいたことの書類の交付
次に、特定商取引に関する法律施行規則第10条第7項に基づき、お客様が電子書面の交付に承諾したことを証明する書面を電子形式で交付します。この書面の交付も電子メールなどの方法で行います。
⑶ 電子による概要書面の交付
概要書面を作成し、お客様に電子形式で提供します。提供後、事業者とお客様が一緒に概要書面を確認し、口頭で内容を読み合わせます。この段階では、支払方法の希望など詳細についても確認します。ただし、この時点ではまだ契約は成立していません。なお、クーリングオフの説明は口頭で行うことが義務付けられていますので、忘れずに行います。
⑷ 契約締結
お客様から契約をする旨の連絡を受けた時点で、契約が成立します。契約成立後、次の段階に進みます。
⑸ 電子による契約書面の交付
契約が成立した後、作成した契約書面をお客様の希望(支払方法など)に応じて修正し、電子形式で提供します。この際も、事業者とお客様が一緒に契約書面を確認し、口頭で内容を読み合わせます。概要書面を既に提供済みの場合、必要に応じて一部の説明を省略できますが、クーリングオフの説明は必ず口頭で行う必要があります。
電子による概要書面と契約書面の交付は難しい
電子による概要書面と契約書面の交付は比較的新しい手続きであり、いくつかの挑戦が伴います。
⑴比較的新しい改正による手続きの難しさ
2022年6月に施行された法改正によって、概要書面や契約書面の電子交付が可能となりました。この改正により、電子形式での書面交付が認められるようになったものの、多くの事業者にとってはこの手続きがまだ新しく、十分に理解しきれていない場合が多いのが現状です。そのため、法令を正確に遵守しながら電子交付を行うには、慎重かつ詳細な対応が必要です。事業者は新しい手続きに関する知識を深め、実務に適用する際の注意点やプロセスを確実に把握することが求められます。特に、電子交付に関する規定や運用方法が定まっていない状況では、従来の紙の書面交付とは異なる対応が必要となるため、その点に留意しながら進めることが重要です。
⑵裁判例などの判断基準の未確立
法改正から間もないため、電子交付に関する裁判例や具体的な判断基準はまだ確立されていません。このため、電子形式での書面交付を行う際には、現行法令の文言に忠実に従うだけでなく、消費者保護の観点から慎重に対応する必要があります。具体的な実務指針や裁判例が不足している状況では、法令の解釈に基づいた対応を行う必要があり、その過程で新たに発生する問題やリスクにも対応しなければなりません。また、法律の文言に従いつつも、消費者の利益を最優先に考えることで、実務における適切な対応を模索し続ける必要があります。このように、法改正による新しい手続きがまだ完全に整備されていない状況では、より一層の注意と準備が求められるのです。
結論として、オンラインによる特定継続的役務提供は可能ですが、概要書面や契約書面の電子交付には細心の注意が必要です。消費者の事前承諾を得ること、法令に定められた記載事項を漏れなく含めること、クーリング・オフの説明を口頭で行うことなど、多くの要件を満たす必要があります。また、法改正から間もないため、実務上の課題や法的解釈の問題が今後生じる可能性もあります。そのため、電子交付を検討する事業者は、最新の法令や行政の指針を常に確認し、必要に応じて法律の専門家に相談することが推奨されます。