【基礎編/必須】小論文に必要な情報入手の方法

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(1)経験で書くか知識で書くか


 小論文の書き方はだいたいわかった。それでも、書く内容について、何を書いたらいいかわからない。


 こういった受験生の声がよく聞かれます。


 小論文の初心者は自分の経験を書けばいいでしょう。


推薦入試、AO入試では志望理由書に書いた内容をもとに書いてみてもいいかと思います。


 それでは、自分の経験だけでは対応できない時事問題が出題されたときに、どのように対応すればいいか。


 知識もなく、いきなり難しい問題を出されても自分の意見など書けない。


 そう思い悩む人も多いかと思います。


 だから、ふだんから小論文入試に向けて材料集めをしておく必要があります。


 情報源としては、以下のものを活用するといいでしょう。
新聞読んでる女の子.png

(2)新聞は重要な情報源


 小論文入試の準備として、新聞を読むことが基本です。最近は紙媒体から電子媒体への転換が著しく、新聞を購読する世帯が減っています。ニュースもテレビやインターネットで済ませる時代になり、大学生や社会人までもがみな新聞を読まなくなっています。


 ニュースを入手する手段として、ネットではなく、新聞を活用しましょう。ネットニュースはユーザーの嗜好に合わせて配信されるように操作されており、入試小論文に必要な情報が届かない場合があります。必要最小限のニュースはネットで足りますが、大切なのは、ニュース(事実)の評価や解釈にあります。この評価・解釈は新聞記事のほうが優れています。ネットでも時評が掲載されますが、その質は玉石混交で、いいものがある一方、誤解や偏見によるバイアスがかかっていて、そのまま使うには問題がある記事も多く見られます。


 それでは新聞記事は正しく公正かと聞かれれば、当然、答えはNOです。新聞も新聞社によって政治的、思想的な偏りがあり、注意して読まなければならない場合があります。


  要は、ネットにせよ新聞にせよ、読み手が批判的に読むことが必要になってきます。これはメディア・リテラシー※と呼ばれるもので、小論文の出題テーマにもなる重要な論点です。



※メディア・リテラシー:インターネットやテレビ、新聞などのメディアを使いこなし、メディアの伝える情報をメディアが伝える情報に対してその真偽や価値を主体的に判断できる能力。



 私が新聞を勧める理由はほかにもあります。



 まず、小論文の入試問題の参考文は新聞から引用されることがよくあるということ。新聞の文章になじむことが入試小論文の文章に慣れることにつながります。


 次に、紙面構成などからニュースの重大性や緊急性がわかること。この評価はもちろん新聞社によって異なります。


 最後に新聞ではコラムや解説などが充実していること。特に新聞についている専門用語の解説は入試小論文だけでなく、現代文や政治経済、現代社会の科目を勉強するときに役立ちます。


 お勧めの新聞は「朝日新聞」になります。入試問題は「朝日新聞」から出題されるケースが多いこと。用語の解説が丁寧であること。入試問題の作成者や採点者に「朝日新聞」を購読している人が多いこと。朝日は思想的にリベラル※の立場をとっており、大学教員もリベラル派が多く、入試小論文を書く際にリベラルの考え方を理解するうえで、「朝日新聞」は絶好の教材になること。



※リベラル:自由主義的な政治思想。個人の自由や個性を重んじ、マイノリティー(社会的弱者)の立場を尊重する。



 以上が「朝日新聞」を勧める理由です。



 もちろん「朝日新聞」の内容には思想的に問題が多くあり、これを鵜呑みにして、そのまま小論文の答案に書く態度は慎まなければなりません。「朝日新聞」系メディアの主張も参考意見の1つとして相対化して、自分なりの評価を加えることが大事です。これがメディア・リテラシーを育てる態度につながってきます。


 新聞の紙面を全部に目を通すと半日つぶれてしまいます。ですから、自分が受ける大学の学部・学科に関係のある記事を中心に読むことになります。


 医歯薬看護系の学部志望者についてだけ、例を挙げます。「医療・衛生、福祉、科学・技術」の分野の記事に注目して目を通すようにしてください。


特に新型コロナウイルスの情報は詳しく知っておく必要があります。小論文のテーマになるほか、面接でも聞かれることが必至です。


 重要な記事はスクラップ帳に切り張りしておくこと。その際、自分の意見や感想をメモ書きすることも忘れずに。長文ではなく、簡単なメモ程度、箇条書きでもOKです。


 この積み重ねが小論文のネタになり、受験で生きてきます。日ごろの勉強で忙しいなか、新聞を読む機会がなかなかとれないかと思いますが、これも日々の習慣です。朝か学校帰りの10分、15分を新聞整理の時間に充ててください。


 それでも時間が取れない人は日曜日に1週間分の新聞をまとめて読むという方法もあります。

(3)書籍(本)を読む


 受験生は主要教科の勉強に急しく、満足に本を読む時間が取れないでしょう。しかし、特に推薦入試、AO入試を考えている受験生最低でも1冊は本を読まなければいけません。面接での質問で「最近読んだ本は何か?」と聞かれたら、返答に困るでしょう。嘘を言うのは論外。むかし読んだ書名を答えても、内容についてさらに突っ込んだ質問をされたらボロがでます。ですから、最低1冊は読みましょう。自分が受ける学部・学科に関する本がいいです。


 薄くて読みやすい新書をお勧めします。岩波新書や中公新書など多くの出版社から出ています。奥付を見て、3年以内に出された本がいいです。それ以上前の本では情報が古くて使えないことがあります。


 いわゆる名著や文豪の書いた本であれば、古いものでもかまいません。


文学部を志望する受験生は名著を多く読んでいることを大学側は前提とします。最近流行の小説ではなく、歴史的に評価された本を読みましょう。ライトノベルは趣味で読む分にはいいですが、面接では口が裂けても「最近読んだ本は何か?」の回答で言ってはいけません。


 小論文入試のための参考書も多く出版されていますが、内容はいいものとそうでないものの落差があります。小論文の勉強は時間が割けないので効率よく済ませたいという動機にはくむべきものがあります。


 しかし、小論文や面接は受験生の「ひととなり」を評価すると以前に言いました。「ひととなり」の中には教養も含まれます。教養はこの手の小論文のハウツー本を読むだけでは決して身に付かないものです。


 「手っ取り早く効率的に」には落とし穴があります。小論文の学力は長い準備時間をかけて、じっくり醸成するものです。


 これはお酒に似ています。美味い酒を造るにはよい水と酵母が必要なように、この水と酵母にあたるのが、読書経験と実体験です。時間を作って本をなるべく多く読みましょう。


(4)お勧めの本


 ①辞典

 小論文の語彙(ボキャブラリー)を増やすためには、類語辞典を買って手元に置いておくことをお勧めします。


 私が使っているのは『新修類語用例辞典』(集英社)です。『朝日新聞用語の手引き』は表記や送り仮名、間違えやすい用例などが載っていて、充実しています。



 この『類語辞典』の使い方については、次章で解説します。


②アンソロジーや現代文の入試問題集


 1冊の本をじっくりと読むことが不可能なら、さまざまな分野の作品を集めた短文集のアンソロジーを読むという方法があります。筑摩書房から高校生向きのものが多く出版されているので、お勧めします。



 大学入試の現代文では評論文を扱ったものが多く、現代文の入試問題集を読むという方法もあります。大半の受験生にとってはこれが一石二鳥にもなり、もっとも現実的な方法になるかと思います。


 どんな問題集を選べばよいか。要約問題を多く扱ったものを選択しましょう。入試小論文では、要約問題が多く出題されるので、長文で長い字数(100字以上)で要約するような問題を数多くこなすのは、役立つはずです。


(5)『類語辞典』の使い方


小論文の語彙が足りない人にお勧めなのが、『類語辞典』です。

答案を書いていて、なんだか表現がしっくりこなかったら、『類語辞典』を引いてみます。

単語の同義語(意味が同じ、意味が近い言葉を載せている)を探すうちに、ピッタリとした言葉が見つかることが多いでしょう。


それでは、例題を2つ出します。

【例題1】

我が国は唯一の被爆国として、広島・長崎で空前絶後の原爆被害を体験した。



上の文章で「空前絶後」という表現はしっくりこない。別の三字熟語に置き換えなさい。


【例題2】

しかし、実際に身体は医学の完全な予測下に置かれ、十分にコントロール可能なものではない。患者の精神的・肉体的苦痛は数値化できるものではない。医師はこうした事態に対し、薬物を処方することで、ある程度のコントロールが可能であるが、これは一時的な効果しかうまない。



この文章で、「コントロール」という言葉が2回使われている。入試小論文の指定字数で、この言葉を使うと字数がオーバーしてしまう。そこで、「コントロール」を2字熟語で言い換えなさい。ただし、同じ熟語を使ってはいけない、「コントロール」が使われている2カ所にそれぞれ別の二字熟語をあてはめよ。



このようなケースのときに、『類語辞典』を調べれば、ピッタリくる表現がみつかる。



みなさんは、辞典なしで、上の問題に答えることができるだろうか。まさに語彙力が問われる問題です。





下に正解を掲げます。



【例題1/正解】



我が国は唯一の被爆国として、広島・長崎で未曾有の原爆被害を体験した。



【例題2/正解】



しかし、実際に身体は医学の完全な予測下に置かれ、十分に制御可能なものではない。患者の精神的・肉体的苦痛は数値化できるものではない。医師はこうした事態に対し、薬物を処方することで、ある程度の管理が可能であるが、これは一時的な効果しかうまない。

(6)ネットによる情報収集には注意する


 ネット情報にはいろいろな問題が潜んでいます。


 現代の情報化社会でネット情報を活用するな、というのは時代遅れだし、無理でしょう。


 ネット情報を利用するにあたっての大切な点を以下にまとめます。


① ニュースソースで信頼できるものだけを活用する。



 政府や自治体などの公的機関、新聞社、大学などの教育・研究機関や大学教員が発した情報を積極的に活用すること。


 小論文でこうした情報を引用する場合には、引用部分にカギカッコをつけて、引用元を明記することが必要になります。



②個人のブログやツイッターは虚偽情報や個人の偏見、デマなどが多いので注意する。小論文では引用してはいけない。


 ウィキペディアの情報は誤りがあったり、個人的な見解が反映されていたりすることがあるので、あまり参考にしないほうがよいでしょう。大学の卒論やレポートでウィキペディアの情報を写して書いてくる学生が多いことが問題となっています。


③情報の発信日を確認する。ネットには古い情報と新しい情報が混在している。情報は日々刻刻変わるので、最新の情報だけを活用する。


④新型コロナウイルスのなどのまったく新しい未知の事象については、情報が錯そうし、情報どうしが矛盾・対立する場合も多い。最新の情報はチャックしつつも、最新の情報に対してはすぐに飛びつかない。



 たとえば、「新型コロナウイルスにはBCGが有効」といった情報があります。この真偽はいまのところ不明です。事態が終息して、一定の評価が定まるまでは、特定の情報のみにとらわれることのないようにしてください。



 コロナウイルスに関する情報は、厚生労働省のホームページや首相官邸、国立感染症研究所、病院などの医療機関、地方自治体のホームページなどの情報を活用するように。



⑤統計などの数値(人口、平均寿命、合計特殊出生率、GDPなど)は最新の情報を用いるようにしてください。数字は正確に引用すること。数字の誤りは減点になります。



(7)最後に


 小論文では、本や芸術鑑賞などから培われる教養と、実体験の両方が重要な情報源になります。こうした引き出しはなるべく多く持っておくことが入試で有利になることは間違いありません。ふだんから、知的なことや社会のできごとに広く関心を持ち、アンテナを張っておくことが入試小論文に役につ秘訣です。

(8)今回のまとめ


①小論文の情報源として新聞・本を読む。



② 『類語辞典』はお勧め。



③ネット情報はソースを確かめるなど、注意が必要。



④情報が教養になるには時間がかかる。



受験生のみなさん、小論文に関すること、何でも質問してください。



コメント欄に書いてね。



それでは、がんばってください。



以上、『OK小論文』塾長でした。
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