皆さんは、住民票というものを意識したことがあるだろうか。
私が初めて住民票を意識したのは、狩猟免許を取得した時だ。
見切り発車で免許取得の手続きを始めた私は、免許の種類は罠にして行動を始めた。
電話で受講番号を貰い、講習の応募用紙を印刷。受講料と一緒にポストに突っ込んだ。
メールやラインで書類を送れる時代に、年賀状以外を投函するなんて何年振りだっただろうか。
ともあれこれで講習の予約は完了。教本と問題集が届くのを待つだけとなった。
しかし、ここで一つ驚きの事実が出てきた。
講習と試験の予約は全く別の手続きなのだ。
運転免許のように、教習所を卒業したら教習所側がついでに手続きをしたりはしてくれないらしい。
しかもタイミングが悪く、その年に受けられる試験は残り一回となっていて、その試験の応募期限は三日後。過ぎてないだけマシだったが。
とにかく講習を受けてからのんびり手続き、というわけにはいかないのだ。
講習の応募用紙に個人情報も書いたんだし、ついでに試験の手続きも自動でしてくれたらいいのに。
そう思いながら、スマホで試験予約の方法を検索した。
すると総合庁舎で予約ができるとのこと。必要な書類もPDFですぐ取得出来た。
写真は、アルバイトの履歴書に使っていたものを流通。診断書は病院の予約するタイミングが良くて、翌日に手に入った。
区役所の近くに住んでいた私は、図書館に本を借りにいくついでに役所の窓口に立ち寄った。
そこで職員の方に言われた一言で、僕は唖然とした。
「住民票ってこちらにありますか?」
大学進学と共にここに引っ越してきた私は、住民票の移動までしていなかった。
だって大学を卒業しても住み続けるか分からないし、手続きも面倒なのでやめていた。
と言うのは、後に聞いた母親の意見。私は住民票の存在すらよく知らなかった。
運転免許でも取ってれば知ってたんだろうが、生憎当時は考えてもなかった。
「狩猟免許には住民票が必要なんですが………」
申し訳なさそうに言う職員に、背筋が凍りついた。
試験の応募期限までもう時間は無く、今から住民票の移動手続きをして間に合うかも分からない。
住民票のある地元なら受けられるが、スケジュール的に帰省する余裕はない。
かといって今逃したら、次に受けられるのは一年後。当然今持ってる写真や診断書は使えず、かけたお金をドブに捨てることになる。
余談だが、診断書に必要な病院での診断は保険が適用されない。なので写真はともかく、診断書はそこそこいい金額がかかるのだ。
何とかならないかと相談したが、役所の窓口を回されるだけで解決の糸口が見つからない。
最後に伺った窓口で、林務事務所に相談した方が早いと言われた。
今考えれば当たり前で、区役所と林務事務所のどちらが狩猟免許を専門的に扱うかと言われれば、当然後者だ。
家に帰った私は、林務事務所に電話をかけて事情を全て話した。
無茶言うなと言われる覚悟を決めていたが、事務所の職員は悩むことなくサラッと答える。
「今そちらに住んでいることを証明出来る公的な書類があれば、問題無いですよ」
思いもよらぬ回答だ。
この答えが全国共通なのかウチだけなのか知らないが、どちらにしても今の僕にとっては唯一の救いだ。
私は電話を繋いだまま、家の周りを見渡した。
すぐに目に飛び込んできたのは、テレビの横に置いてあったNHKからのはがき。
少し前に届き大して重要なものではなさそうだったのだが、いつか使うかもと残しておいたものだ。
こんなことしてるから書類の処分が出来ないのだが、今は助かった。
職員に確認を取ったところ問題無し。これなら試験の応募が出来る。
受験料を支払うために必要な切手の発行のやり方も教わり、僕はすぐさま家を飛び出した。
自転車で役所に向かい切手を購入。そのまま林務事務所へと直行した。
書類は全て受理され、その場で受験票が渡された。
翌日には教本と問題集もゆうパックで届き、私はスタートラインに立つ準備が整った。