時計の針は、、23時30分を示していた。
確かさっき時計を見た時は、、、昼の12時30分だった気がする。
ITベンチャー企業のCMOといえば、僕の肩書きは、一見すると誰かしらに「すごい」だの、
「羨ましい」だの言われるものなのかもしれない。
その実、この働きづめの毎日だ。稼ぎだって、大したことないんです。
明日生きるか、死ぬか、ビジネスの世界でそんなことばかり、
すり減りながら生きている。
とはいえ、そんなギャンブル心をくすぐる環境が好きだ。
ただそれだけの理由で、僕は今日もPCを叩き続ける。
僕は人生にとり立てての特徴もない。
顔に特徴が、、?
そんなわけもない。
接待のしすぎ??なのかは不明だが、体型もどんどんおじさんになっていく。
そんな僕にも、一つだけ、誇れるものがあった。
女性を捕まえることに困ったことがないのだ。。。
『パタンッ。。。』
24時を回る少し前にPCを閉じ、帰路につくのが日課になってしまった。
家には嫁さんも、幼い息子もいる。
いったい僕は、何のためにこんなに働くんだろう。
一件の連絡
彼女はアリスと名乗った。22歳の大学生。
なんというか、遠くの山々、峰々を眺めているような気になった。
僕はもう、齢30歳になってしまったのだから。。
明らかに20代前半と比べ勃ちも悪くなったし。
僕はいつもの方法で、知り合ったアリスと、まずは他愛もない会話で距離を詰めていくのだった。
お互いの趣味や、考え方。
少々特殊な方法で出会いをする僕なのだが、このコミュニケーションはどんな出会い方でも変わらない。
そして、ある程度まともな(兎に角ヤリたい!みたいな女性はお断りしている。。)会話ができることがわかってから、
アリスの顔写真をもらうことになった。
眠りから覚めたのは僕の方
尖った、鼻筋。
色白で、きめの細かい肌。
おそらく大学の校内で撮られたであろう、「学生」という絶対領域。
笑顔だが、笑っていない。漏れ出しているのはむしろ彼女の闇のようなものだった。
この子だけは。。
絶対にものにしなくちゃいけない。
俺ももう30だろう。子供もどんどん大きくなる。.
これが、、最後だ。
これが最後の恋愛だ。
僕はもう、アリスの写真を見てそう、心に決めていたのだ。
そもそも、僕は出会いというものに、運良く難易度など一つも感じることなく生きてきてしまった。(何度も言うが、顔は冴えないし、メタボだ。)
だからこそ、僕は女性に対して、とにかく「嘘」をつかない。
既婚であること。
君とは、恋人にも、結婚することもできない。
あるのはたった3時間ほどの、一瞬の愛を分かち合う瞬間だけ。
それでも、僕と仲良くしてくれる女性は多かった。
ちょうどアリスと出会った時。
僕にはアリス以外に4人の定期的に会う女性がいた。
仕事中も、極力女性のことは気にかけているつもりfだ。
それでもアリスは一瞬で、そんな僕の他の女への愛を吹き飛ばしてしまうのだった。
言葉にできない。
僕は嘘をつかない。そんな真正直な人間だ。僕は。
でもなんでだろう。
僕はここ2〜3年の中で初めて、女性に対して嘘を着いた 。
「ははっ、、彼女もいないし、結婚なんて、夢のまた夢さ。。」
そう、この言葉だ 。
今でも覚えている。
こんなことを僕は女性に言うもんだから。
もちろん「やめておきましょう。」なんて言えないわけだ。
そして、この見えとも詐欺ともなんとも言えない「嘘」が、、
僕とアリスを苦しめることになるのだった。
次号へ続く