【文献紹介#18】レゴラフェニブによって免疫性血小板減少性紫斑病が増悪した症例

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こんにちはJunonです。
今月公開された研究論文(英語)の中から興味のあったものを一つ紹介します。

出典
タイトル:Regorafenib-induced exacerbation of chronic immune thrombocytopenic purpura in remission: A case report
著者:Shiro Kimbara, Yoshinori Imamura, Kimikazu Yakushijin, Ako Higashime, Taiji Koyama. 他
雑誌:Mol Clin Oncol.
論文公開日:2021年2月1日

どんな内容の論文か? 

「レゴラフェニブは経口マルチキナーゼ阻害薬であり、腫瘍血管新生、腫瘍微小環境、腫瘍形成を標的としているが、その作用機序故の毒性も有しています。本報では、寛解中にレゴラフェニブによって免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)が増悪した症例が報告され、ITPを併発している癌患者におけるレゴラフェニブ治療には注意が必要であることが示唆されました。」

背景と結論

レゴラフェニブは経口マルチキナーゼ阻害剤であり、腫瘍血管新生[血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1-3およびTIE2]、腫瘍微小環境[血小板由来増殖因子受容体β(PDGFRβ)および線維芽細胞増殖因子受容体-1]、腫瘍形成[c-KIT、RET、RAF-1およびB-RAF]を標的としていますが、その作用機序故に、幅広い毒性を有することが報告されています。

今回の対象は、38歳で慢性免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)を発症し、その後は20年以上無投薬で寛解を示していた女性です。この女性は66歳で結腸癌と診断されました。再発・転移性大腸がんに対する標準的治療として、68歳でレゴラフェニブ160mgを1日1回経口投与し、21日間のオン/オフを28日周期で行いました。18日目に吐血して救急外来に来院され、重度の血小板減少や四肢の点状疱疹や紫斑、口腔粘膜の出血性水疱が認められました。その他の臨床所見などを総合するとレゴラフェニブがITPを増悪させたことが強く示唆されました。

レゴラフェニブに関連する血小板減少症はまれなことではありません。ITPの診断には、血小板減少の様々な原因を除外する必要があります。骨髄損傷、悪性腫瘍や骨髄異形成症候群による骨髄への浸潤・置換など、血小板産生量の低下を引き起こす多くの病態は、本症例の骨髄生検所見からは除外されました。薬剤性血小板減少症(DITP)はITPとの鑑別が困難であります。しかし、ITPの既往歴があり、レゴラフェニブ中止後も血小板減少が回復していないことから、DITPよりもITPの可能性が高いことが示唆されました。また、血小板数が20x109/l以下と非常に低いこと、ステロイドに対する反応性、抗血小板自己抗体検査が陽性であることは、専門家の見地からITPの正確な診断に役立つと考えられています。以上のことから、ITPと診断される可能性は非常に高いと考えられます。

最後に

今回の症例報告は1例ではありますが大変貴重な知見であり、寛解中にレゴラフェニブによってITPが増悪した最初の報告です。ITPを併発している癌患者におけるレゴラフェニブ治療には注意を払って診療する必要があります。

おしまいです。
次の記事までお待ちください。

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