むしろ、感受性が高い人ほど、こうした状態に陥りやすいのです。
なぜなら、HSPの方は周囲の気持ちや空気をとてもよく感じ取るからです。
人の期待、人の評価、人の感情。そういったものを自然と受け取り続けるうちに、いつの間にか「自分の輪郭」がぼやけてしまうことがあります。
さらに、うつ状態になると、エネルギーが落ちます。
考える力や判断する力も弱くなります。
すると、
「何が好きなのか」
「何をしたいのか」
「どこへ向かえばいいのか」
そういったものが、霧の向こう側に隠れてしまうのです。
ですが安心してください。
ぼんやりしている自分は、壊れているわけではありません。
ただ少し、輪郭が薄くなっているだけなのです。
そして輪郭というものは、ゆっくり描き直していくことができます。
まず最初に大切なのは、
「自分軸を無理に作ろうとしないこと」です。
最近は「自分軸を持とう」という言葉をよく聞きます。
もちろん、自分軸は大切なものです。
ですが、うつ状態のときや、心が疲れているときに
「自分軸を作らなきゃ」
「自分の人生の目標を決めなきゃ」
と焦ると、かえって苦しくなることがあります。
なぜなら、軸というものは「作るもの」というより、
にじみ出てくるものだからです。
たとえば、
・これをしていると少し落ち着く
・これはちょっと疲れる
・これはなんとなく好き
こうした小さな感覚の積み重ねが、少しずつ「自分らしさ」を形作っていきます。
つまり、自分軸は「大きな決断」から生まれるのではなく、
日常の小さな感覚の中から育っていくものなのです。
次に、目標についてです。
目標というと、多くの人が「大きな夢」や「人生の目的」を思い浮かべます。
ですが、心が疲れているときには、そんな大きなものは必要ありません。
むしろ大切なのは、
とても小さな目標です。
たとえば、
「今日は少しだけ外の空気を吸う」
「温かいお茶をゆっくり飲む」
「好きな音楽を一曲だけ聴く」
それで十分なのです。
小さな目標を一つ達成すると、心の中にほんの少しだけ光が灯ります。
そして、その小さな光が積み重なっていくと、少しずつ自分の輪郭が見えてくるのです。
もう一つ、大切なことがあります。
それは、
「ぼんやりしている時間を悪者にしないこと」です。
現代は、とても忙しい社会です。
常に何かを考え、何かを決め、何かを成し遂げることが求められます。
ですが、心には「余白」が必要です。
ぼんやりしている時間というのは、実は心が回復している時間でもあります。
霧が晴れる前には、必ず少しの静けさがあります。
焦らなくて大丈夫です。
輪郭というのは、無理に描こうとすると歪んでしまいます。
けれど、ゆっくり線を重ねていけば、自然と形が現れてきます。
もし今、「自分がよくわからない」と感じているなら、それは決して悪いことではありません。
むしろそれは、
これから自分を見つけていく途中にいるということです。
ぼんやりした自分を責める必要はありません。
小さな感覚を大切にしながら、
小さな目標を一つずつ重ねながら、
ゆっくりと歩いていけばいいのです。
そうしているうちに、ある日ふと気づくかもしれません。
「ああ、これが自分なんだな」
と。
そのとき、あなたの輪郭はきっと、以前よりも優しく、そして確かなものになっているはずです。