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今日は、会計に関する本の紹介です。小宮一慶著「財務諸表を読む技術 分かる技術」(朝日新書)を紹介します。経営者だけでなくあらゆるビジネスパーソンにとって、財務諸表を学ぶことは重要です。会計士や税理士になろうというならば財務諸表の作り方を学ぶ必要がありますが一般のビジネスパーソンにとっては読めればいいわけです。
本書は経営実務に必要な「財務諸表を読む力」に絞って、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の勘所をわかりやすく解説してくれています。具体的には本書を読んでください。
今日は本書の内容を紹介するというよりは、本書を読むにあたって前提として持っていていただきたい財務諸表の基本の基本を説明しておきます。これを知ったうえで本書を読んでもらえば理解が深まると思うからです。
財務諸表の読み方というのは、会社の「安全性」「収益性」「将来性」を読むということで、一番重要なのが当然のことながら「安全性」です。いくら「収益性」「将来性」が見込まれても「安全性」がなければ潰れる恐れがあるからです。
財務諸表というのは、企業の財政状況を示す貸借対照表・損益計算書などの総称で、そのうち貸借対照表(B/S)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CF)は財務三表と呼ばれます。いわゆる決算書は大まかにいえば、この三表で構成されています。
決算書は、簡単に言えば、会社の「成績」と「健康状態」を示しています。1年間(会計期間)にどのような活動をしてどれだけ儲けたかという成績を示すとともに、会社がさまざまな活動をして健康なのか病気にかかっているのかといった健康状態をも示しています。会社には、経営者、社員のほかに、投資家、債権者、取引先、顧客といったステークホルダーが存在します。こうした人たちに会社の成績・健康状態を示す書類が決算書です。
1.貸借対照表
まず、貸借対照表は、決算日における財政状態を示す書類です。つまり、企業の活動資金がどこからどのような形で調達され(調達源泉)、それがどのような形で使用されたのか(資金の運用)を示しています。
貸借対照表は、「資産」と「負債」「純資産」の3つで構成され、
資産 = 負債 + 純資産
という方程式が成り立ちます。
資産というのは会社の体つきを意味し、負債と純資産はそれを支える骨格(骨・筋肉・脂肪)のようなものです。体つきは同じでも、将来返済しなければならない負債が多く、返済不要な純資産が少なければ、支える骨や筋肉は小さくて脂肪で覆われているようなもので健康とは言えません。逆に負債が少なく純資産が多いと、支えている骨や筋肉が大きく脂肪が少ない健康体と言えます。同じ体つきでも中身で違ってきます。
このように貸借対照表は会社の安全性を見るのに重要な書類となります。
2.損益計算書
次に損益計算書です。損益計算書は、収益と費用を対比させ、当期純利益又は当期純損失を表示し、会計期間の経営成績(企業活動によって得た利益または損失がどのような活動から生じたか)を明らかにする書類です。簡単に言えば、売上から費用を差し引いたものが利益ということになります。利益には色々あります。売上高から売上原価を引いたのが売上総利益、売上総利益から販管費を引いたのが営業利益、営業利益から営業外収益を加算し営業外費用を引いたのが経常利益、経常利益に特別利益を加算し特別損失を引いたのが税引前当期純利益、税引前当期純利益から法人税等を引いたのが当期純利益となります。これらがマイナスになれば利益ではなく損失となります。
この損益計算書は会社の成績を表します。つまり収益性を示す書類となるわけです。
3.キャッシュフロー計算書
最後にキャッシュフロー計算書ですが、これは会社の現金の流れを示した書類です。実は、損益計算書での売上や利益は必ずしも実際の現金の流れを表しているものではありません。損益計算書は発生主義というルールに基づいて書かれていますので、現実に現金の動きがないのに、モノやサービスが売れた時点で売上や利益として計上されてしまっているのです。
キャッシュフロー計算書は現実のお金の流れを示しています。これは人間の身体で言えば、血液の流れのようなものです。損益計算書や貸借対照表上では健康で売上があり利益を上げているように見えても、キャッシュフロー計算書を見れば、貧血状態(現金不足)や出血状態(現金流出)ということもあるのです。損益計算書上は利益が上がっているのに資金繰りに詰まって倒産する黒字倒産ということが起こりますが、これはキャッシュフロー計算書を見れば貧血状態・出血状態が見て取れます。
4.安全性、収益性、将来性
以上の3つの表は密接につながっており、これらを合わせて読むことで会社の本当の姿が理解できます。そして、この3つの表を読むためには「安全性」(倒産しないか?)「収益性」(儲かっているか?)「将来性」(今後大きく成長するか?)という3つの視点で読むことが重要なのです。
⑴ 安全性
まずは、「安全性」を見てみます。
安全性分析の1は、貸借対照表の右側の上下(負債・純資産)を見ます。返す必要のある負債と返す必要のない純資産のバランスです。つまり、返すものが少なければ少ないほど、言い換えれば自己資本(純資産)が多ければ多いほど安全ということです。これを示す指標として、自己資本比率(自己資産(純資産)を総資産(負債+純資産)で割ったもの)がありますが、30%以上が望ましく50%以上あれば安全性が高いと言われています。
安全性分析の2は、貸借対照表の左右を見ます。先ず①短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率です。これは、流動資産を流動負債で割ったものですが、1年以内に返済しなければならない流動負債に対し、1年以内に現金化できる流動資産がどれだけあるかを示すものです。流動比率は100%を超えて高いほどよく150%以上あれば安全性が高いと言われます。次に②中長期的な資金繰りの安全性を示す固定比率です。これは、固定資産を純資産で割ったものです。この数字が100%を超えると固定資産の一部を負債で賄っていることになり、このすうじは低い方がよいということになります。
安全性分析の3は、キャッシュの流れを見ることです。会社が自由に使えるお金(フリーキャッシュフロー)がどれだけあるかを見るということが重要です。
⑵ 収益性
次に「収益性」です。
収益性分析の1が売上高利益率です。先ほども言いましたが利益には5つあります。この利益を売上高で割ったものが売上高利益率で、利益の取り方で5つの利益率が導き出されます。これらの利益率を分析することで、会社がどれだけ効率的に利益を上げているか、収益を上げるための戦略などが見えてきます。
収益性分析の2はROEとROAです。
今、多くの経営者や投資家が、ROEという指標に注目しています。ROEは「Return On Equity」の略で自己資本利益率のこと、「株主が会社に預けているお金を使って、どれだけのリターン(利益)を稼いでいるか」を見る指標です。次の式で表されます。
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 (%)
株主、特に機関投資家は、「企業が株主から預かったお金(自己資本)でどれだけ効率よく経営しているか(利益を上げているか)」という点を重視しています。ROEが低いということは、株主から預かっているお金を効率よく運用していないというわけですから、当然ROEが高い会社に比べれば株価も低迷します。株価が低迷すれば企業の資産総額も低下するので、経営者もROEを無視することはできません。
日本企業は利益効率が悪くROE8%を最低ラインとして、その上を目指すべきと言われることがあります。
このようにROEは重要な指標ですが、ROEが高い企業が果たして優良企業かと言うとそうとは限りません。先ほどの方程式を見ると分かりますが、ROEを高めるには、①分子である「当期純利益」を上げる以外に ②分母である「自己資本」を下げることでもできるのです。つまり、「自社株」を購入して「自己資本」を減らせばいいわけです。しかし、「自社株買い」をやりすぎると、純資産が減少して企業の安全性に問題が出てくる可能性があります。また、①「当期純利益を上げる」ためには経費を減らせばよいわけですからリストラを行い人件費を減らすことでもできます。ROEだけを考えた経営を行うと、中長期的な会社の安定性や、従業員・雇用の問題に十分に配慮した経営が出来なくなります。
一方でROAという経営指標があります。ROAは「Return On Assets」の略、資産利益率のことです。これは、「会社が資産に対してどれだけ利益を上げているか」を示す指標で、次の式で表されます。
ROA = 当期純利益 ÷ 資産 × 100 (%)
これに 売上高/売上高 をかけると
ROA = 当期純利益/売上高 ÷ 売上高/資産 × 100
という式が出来上がります。この「当期純利益/売上高」は売上高利益率、「売上高/資産」は資産回転率を表します。これを見ればわかるように、ROAは利益によって資産が増えるスピードを表すサイクル(利益⇒資産⇒売上⇒利益)になっています。つまり、ROAが高い企業は資産から生み出される売上や利益の成長が早いということです。株主からすれば、積極的な投資により成長が期待される会社であり、債権者からすれば、貸付金回収の確実性が高く、従業員からすれば、倒産リスクが低く給料アップが期待できる会社となるわけです。ROEのように収益性だけを示す指標ではなく、収益性に加え、安全性や成長性にもかかわる指標と言えるのです。
その意味ではROEよりも重要な指標と言えます。
⑶ 将来性
最後に「将来性」です。これは「成長性」と言ってもいいでしょう。
将来性分析の1は、前期の損益計算書と比較して「売上高増加率」で伸び・成長度を見ることです。売上高成長率は、(当期売上高ー前期売上高)を前期売上高で割って求めます。増加率については、「時系列分析」(過去数年の増加率と比較)と「他社比較」で判断します。他社の増加率が自社よりも大きいとなれば増加しているからと言って安心できません。自社のシェアが他社に奪われていることになり十分な成長が出来ていないということになります。売上が伸びていても利益率が低下していれば問題です。売上高増加率とともに利益率が下がっていないかにも目を向ける必要があります。
将来性分析の2は、資産の成長度合いが重要です。会社は、「資本⇒資産⇒売上⇒利益⇒資本」というサイクルで大きくなります。会社が順調に成長しているかを確かめるためには、ROAが役に立つのです。ROA(総資産利益率)は資産に対してどれだけ利益を上げられたかを示す指標ですが、時系列分析を行って、ROAの数値が変わらなければ、資産の増加とともに利益も増加していることを示しています。一方でROAの数値が下がっていれば、資産の増加に利益が追い付いていない、収益性が低下していることを表しています。
今説明したようなことを頭の入れて本書を読んでいただければわかりやすくなると思います。
5.銀行が見る審査ポイント
本書の最後に銀行が企業を見る(審査する)5つのポイントが挙げられていますので、それを紹介しておきます。
Ⅰ:安全性・・・流動比率、自己資本比率などで、確実に返済してくれる貸出先かどうかを見る。銀行ごとに独自の基準。
Ⅱ:収益性・・・赤字が続くと格付けが下がる。場合によっては取引停止も。
Ⅲ:将来性・・・業界の将来性とその会社の将来性。
Ⅳ:経営者・・・性格・経験・経営者としての年数などから点数化。
Ⅴ:銀行の収益性・・・融資する銀行に利益が出るかどうか。自己資本比率の維持を重視。
銀行から融資を受けていない企業は存在しないと思われますので、参考にしてください。こうした点を頭に入れて経営を行うことが重要です。
中小企業経営者にも、ビジネスパーソンにも、財務諸表を読んでわかるというスキルは必要です。そのために本書は最適な本と思います。