【第十二話】前に進めない違和感だけが、残った。

記事
コラム


図書館から戻ったあと、
しばらく、何も手につきませんでした。

疲れていた、というより、
頭の中が、うまく片づかない感じでした。

机の上には、
コピーした資料や、
書き写したメモが、前よりも増えています。

調べた量は、
たしかに、これまでで一番多かったと思います。

土地の歴史。
産業の移り変わり。
名字の分布。
時代ごとの暮らしの様子。

どれも、
間違っていない情報です。

「やるべきことはやった」
そう言ってもよかったはずなのに、
なぜか、そういう気持ちにはなれませんでした。

ノートを開いて、
あらためて、目を通してみます。

どのページにも、
それなりの情報が書いてあります。

けれど、
読み返しても、
何かが増えた感じがしません。

むしろ、
少し遠くなったような感覚がありました。

前より、
分からなくなったわけではありません。

分かったことは、
確実に増えています。

それなのに、
「近づいた」という実感だけが、
どうしても持てなかったのです。

土地の輪郭は、
だいぶはっきりしてきました。

どんな場所で、
どんな産業があって、
どんな人たちが多かったのか。

けれど、
その中に、
探している人の姿は、ありません。

資料を重ねるほど、
共通点や傾向は見えてきます。

「この地域では、こうだった」
「この時代は、こういう暮らしだった」

説明は、
いくらでもできそうでした。

それでも、
説明が増えるほど、
本人からは離れていくような、
不思議な感覚が残ります。

調べ方が間違っているのか。
まだ、量が足りないのか。

どちらなのか、
この時点では、判断がつきません。

ただ、
一つだけ、はっきりしていたことがあります。

これ以上、
同じ姿勢で集め続けても、
増えるのは、
同じ種類の情報だけだろう、ということ。

ノートを閉じて、
机の上を見渡しました。

確かに、
動いた跡は残っています。

行った場所も、
開いた本も、
すべて本物です。

それなのに、
どこか、
手応えがありません。

何かを間違えた、
という感じではない。

でも、
このまま続けても、
何かが違う。

そんな感覚だけが、
残っていました。

まだ、
次に何をすべきかは、分かりません。

新しい資料を探すべきなのか。
調べる量を減らすべきなのか。

あるいは、
まったく別の何かなのか。

答えは、
まだ、見えていません。

ただ、
これ以上「集める」ことで
前に進もうとするのは、
少し違う気がしていました。

その理由も、
この時は、
まだ、言葉になっていません。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら