お読み頂きありがとうございます。
構造設計をするとき行うFEM解析。きれいな虹色の分布図(コンターって呼びます)が出るとひと仕事した感じになるんですが、その先どうしたらいいのかわからない。そんな悩みがある方に是非お読み頂きたいと思って書き始めました。
応力って、要するに「そこにかかってる力」なんですが、色々あって、いまいちわからない。ネット検索すると「応力テンソル」って行列が出てきて記号がずらり。ここで逃げ出したくなるわけです。でも怖がらなくても大丈夫。号列の計算を自分でやる必要は無い、それが現代の構造力学です。
応力が力(ちから)なら、それには方向があるはずで、磁力線みたいに線で描けるのではないか?結論はYES。タイトルの絵がそれで、片持ち梁の場合を描いています。ただし、磁力線と違う事が2つあって、
・応力の線には向きが無い
・直角に交わる線が存在
磁力線がSからNに向かう矢印をもっているのに対して、応力にはそれがありません。「左右に引っ張り」「上下に圧縮」というように、応力の力は対称に加わるので向きが無いのです。その代わり符号があって、引っ張りはプラス、圧縮はマイナスという事になります。
そして直角に交わる線の存在。左右に引っ張る力があれば上下に圧縮する力も同時に存在する場合があって、その方向は必ず直交する。これが磁力線と違うところです。こういった性質は全て、磁力はベクトルで、応力はテンソルだという数学的な違いによるのですが、その数学をマスターする必要はありません。それはコンピューターがやってくれます。
この応力の線を表示するというのはちょっと難しくて、FEMのソフトにそのような機能はついていません。代わりに、要素毎に矢印で表示するいう機能が付いていると思います。「主応力」という言葉で聞いてみて下さい。英語では principal stress です。ちなみに、「応力線」という言葉は実際には使われておらず、検索してもほぼ、出てきません。英語では stress trajectory という言葉が使われていて、line of stress では無いのです。この辺が、応力は線で描けないと思っている人が多い理由です。意外なことに、学術論文を書くような研究者でも知らない人がいます。過去に「line of stress」という言葉を使って論文を書いてレフェリーから「応力は線で描けない」と言われて驚いたことがあります。「例えば圧縮と剪断が混じっていたらどんな線で描けるのか?」と言われたのですが、ハイハイ、ちゃんと描けますよ。ティモシェンコの教科書にちゃんと載っています。でも、用語を間違えていたのは私のミスでした。
FEMで主応力を表示させてわかるのは、ズバリ、力の方向です。ベクトルと違って向きが無いので、両端に矢のある矢印で表示されます。カーボンみたいな方向性のある材料なら言うまでも無く重要です。もう一つの良いことは、「力の流れが見える」だと思えるのですが、実はそういうわけでも無いのが材料力学の難しい所で、水の流れのように「流れのよどんでいるところに対策する」というわけにいかないのが現実です。そもそも剪断で荷重が伝達するという場合はよくあって、剪断の正体は直角に交わる引っ張りと圧縮のペアなので、剪断での荷重伝達の方向は応力の線に対して45°の斜め方向なのです。
そんなわけで、応力の線が描けてもそこから設計に生かす情報を得るのは簡単では無いのですが、そこで何が起きているか、色々理解を深めることはできます。