マンションと火災保険

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マンションの組合会計に負担をかけず、管理会社が儲ける・・・。
そんな「うまい話」があるだろうか。

実は、ある。
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それは、管理組合が掛けているマンションの火災保険を使用した修繕だ。

マンションでは共用部分(エントランスや廊下、階段など)に火災保険を付帯することが一般的だ。火災や台風などでの被害復旧や漏水調査、何者かによる器物損壊等の復旧などについて費用を保険申請できる。

何かあったときに頼れる存在である。

この保険料は、マンションの規模及び経年数などで決まってくるのだが、多くの場合は掛け捨て保険で、大きなマンションでは毎年100万円ほどの保険料を支払っている。

少なくない保険料を支払っているのだから、保険適用となる修繕には申請すればよい。

そこで、売り上げを上げたい管理会社は、理事会を誘導してマンション火災保険を利用した修繕工事を実施させるのだ。保険で賄えるとなれば管理組合の財布を傷めず修繕でき、管理会社も儲けることがでる、一石二鳥という訳だ。
ところが、このマンション火災保険、参入している大手損保各社は大赤字だという。

経年マンションの漏水調査費用と自然災害による復旧費用申請が激増しているからだ。

マンションにもよるが、築30年を超えると漏水が多発する傾向が強い。ある一か所の漏水を見つけて修理してもまた別のところで発生し、正にイタチごっこになっているところもある。各戸の床下を這う排水管を更生(新しく引き直す)するまで、通常漏水は止まらない。

その上、昨今の大型台風や局地的豪雨などで、自然災害の発生も頻発し、その保障費用も激増しているという。

老朽化マンションの増加と自然災害の多発によって、マンション火災保険が立ち行かなくなり始めたのだ。

このような中、保険会社は、給排水管更生工事の時期を過ぎても更生工事を行っていないマンションの火災保険料の大幅値上げを発表した。(今後、高額な保険料の設定によって、保険付帯を実質拒否されるマンションも出てくるだろう。)

また、保険申請の多寡は次回保険料の値上げに影響しないといわれてきたマンション火災保険だが、自動車保険同様に申請の度合いによって次回保険料を引き上げる方向に変更されている。

管理組合が保険を利用した修繕を行い続ければどのような結果を招くか、もうお分かりだろう。

マンションを取り巻く環境はすでに局面が変わっている。保険だから安易に工事するような管理組合は遠くない将来にその付けを払わされるだろう。

短期的な「うまい話」に乗らず、長期的な視点でマンション管理を考えるべきである。

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