みんなといるのに、どこか遠い場所にいるみたいになる。

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コラム
夜風が、少しだけ冷たくなっていた。

街灯の光が、
陽菜の髪をやわらかく照らしている。

凪は、その横顔を見たまま、
うまく言葉が出せなかった。

“無理にちゃんとしなくていいよ”

その言葉が、
まだ胸の奥に残っている。

凪は、ゆっくり息を吐いた。

でも、胸の苦しさは消えない。
むしろ、少しずつ広がっていく。

「……変だよね」
小さく、凪が言う。

陽菜が視線を向ける。

凪は、少し迷ってから続けた。
「ちゃんと人いるのに」

風が吹く。
ブランコが、小さく揺れる。

「別に、一人じゃないのに」
声が、少しかすれる。

凪は、自分の指先を見る。

昔から、
誰かと一緒にいるのは苦手じゃなかった。

笑うこともできる。
合わせることもできる。

困られないように、
空気を悪くしないように。
ちゃんとやれていた。

でも、時々、
ふっと苦しくなる。

みんなといるのに、
どこか遠い場所にいるみたいになる。

「……なんか」
凪が、小さく笑う。
苦しそうな笑い方。

「ずっと、“ちゃんといる”だけだった気がする」

その言葉のあと、
夜が少し静かになる。

陽菜は、何も急がなかった。

ただ、凪の言葉を待っている。

凪は、少しだけ目を閉じる。

言葉にしてしまった。

今まで、
ちゃんと外に出したことのない感覚。

凪が、ゆっくり目を開ける。

陽菜を見る。

街灯の光の中。

「陽菜といると」
胸の奥が、少し熱くなる。

怖い。

でも、止めたくない。

「……一人じゃない感じ、する」
小さな声。
消えそうなくらい。

でも、ちゃんと届く声。

陽菜の目が、少しだけ揺れる。

驚いたみたいに。

でも、すぐにやわらかくなる。

「そっか」
それだけ。

たったそれだけなのに、
凪の胸の奥が、ゆっくりほどけていく。

理解された。
そんな大げさなものじゃない。

でも、ずっと閉じていた場所に、
誰かが静かに座ってくれたみたいだった。

風が吹く。

髪が揺れる。

ブランコが、また小さく鳴る。

凪は、少しだけ笑った。
昨日より自然に。

“ちゃんと笑う”じゃなく、
ただ、こぼれたみたいな笑い方だった。

陽菜が、その顔を見る。
少しだけ安心したみたいに。

夜の公園は静かだった。

でも、凪の中にあった孤独だけが、
少しずつ、形を変え始めていた。
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