Oh, life is bigger
It’s bigger than you,
ああ人生は大きい
君よりも大きい
ーR.E.M. 「Loosing My Religion」
比較級=形容詞 / 副詞er than
レッスンで英語の比較級を学習するときは、形容詞または副詞の語尾に「er」を付け、その後に「than」が続くことを説明し、さらに分かりやすい比較を用いた例文を提示します。
例えば、
Tokyo Skytree is taller than Tokyo Tower.
(東京スカイツリーは東京タワーより高い。)
あるいは、
My friend runs faster than I.
(彼は私より早く走る)
教えるべきは英語の比較級であり、それは形容詞/副詞er thanで表現されることに何よりもフォーカスしなければなりません。そのために、極力シンプルでわかりやすい表現を用いて伝えるわけです。
R.E.M.で学ぶ比較級と銘打ちながら、彼らの名曲「Losing My Religion」冒頭の歌詞は比較級を教えるには全く向いていないかも知れません。
Oh, life is bigger
It’s bigger than you・・・
シンプルな文ではあります。
しかし、「人生は君より大きい」とはどう言うことでしょうか?
人生と君を比較してより大きい?
人生って何?
君って誰?
これでは肝心の比較級に意識が向きません・・・
R.E.M.ってどんなバンド?
R.E.M.は、1980年に結成されたアメリカのロックバンド。
80年代のアメリカと言えばハードロックやヘビーメタルに代表される装飾的で華美なラブソングが主流でした。
一方、R.E.M.の音楽性は難解な歌詞とシンプルなバンドサウンドの組み合わせでメインストリームとは一線を画していました。しかし、彼らの個性的な音楽は批評家筋から高い評価を獲得し、じわりじわりと人気を拡大していきます。
彼らが音楽シーンの中心に躍り出たのは1990年代のことです。
ブレイクのきっかけになったのが、今回取り上げた1991年リリースの「Losing My Religion」。
1991年と言えばソ連が崩壊した年。
冷戦構造の中で大量消費、物質主義を崇拝してきたアメリカは、敵国が自壊したことにより、その在り方を見直す必要に迫られました。
そのような状況下に置かれた人々の心を「Losing My Religion」(信仰心を失って)は見事に代弁することとなり、R.E.M.を時代のバンドに押し上げたのです。
ちなみにR.E.M.やニルヴァーナ、パール・ジャムと言った1990年代初頭に登場したアメリカのバンドを当時はオルタナティブ・ロックというジャンルで括りました。
オルタナティブ(altenative)とは「代替の」という意味。つまりは1980年代の産業ロックの代替となり、間もなくメインストリームを奪い取ることになります。
ーLosing My Religionー
Oh, life, it's bigger
ああ、人生、人生は大きい
It's bigger than you
君よりも大きい
And you are not me
そして君は僕じゃない
The lengths that I will go to
どこまで行けるだろう
The distance in your eyes
君の瞳の中にある距離を
Oh, no, I've said too much
しまった、言い過ぎた
I set it up
全部自分のせいだ
That's me in the corner
隅っこにいる僕
That's me in the spotlight
スポットライトを浴びる僕
Losing my religion
信仰心を失いながら
Trying to keep up with you
あなたについていこうとしている
And I don't know if I can do it
それができるのか僕にはわからない
Oh, no, I've said too much
しまった、言い過ぎた
I haven't said enough
いや、言い足りない
I thought that I heard you laughing
君が笑うのを聞いた気がした
I thought that I heard you sing
君が歌うのを聞いた気がした
I think I thought I saw you try
君が応えるのを見た気がした
ーR.E.M.「Losing My Religion」
'losing my religion'はアメリカ南部の慣用句で「自制心を失いそう」と言う意味があります。
マイケル・スタイプによると歌詞は自身の失恋経験に基づいており、その点では叶わぬ恋に自制心を失った自伝的歌詞と捉えるのが正しいのかも知れません。
しかし、この曲がビッグヒットとなったのは、人々がタイトルを文字通り「信仰心を失って」と解釈し、時代の大きな変化に晒されアイデンティティが揺らぎ、信じるものを失い、人生に翻弄される私たちの歌と捉えたからだと思います。
「信仰心を失って」というタイトルと「人生は君より大きい」という冒頭の歌詞は、シンプルな言葉で当時の大衆心理を見事に言い当てました。
優れた歌詞は、幾通りもの解釈が可能です。
「Losing My Religion」が歌うのは作者のマイケル・スタイプにとっては恋の喪失であり、リスナーにとっては自己の喪失なのです。
リリースから34年が経ち、アメリカの人々は果たしてこの曲を過去のものとするような揺るぎない自己を取り戻したのでしょうか。それとも、目まぐるしく変化する時代にあって、より大きい人生に未だ翻弄され続けているのでしょうか。