ポストウクライナの議論も必要である/国益を捉え、今後の投資環境を見据える

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 辛辣なもの言いから始めさせてもらう。本日3/27〈日)付け産経新聞2面で学習院大学の伊藤元重なる学者が「グローバル経済の転換か」なる能天気なコラムを寄せている。この男、竹中平蔵とかいう者と同じネオコン御用筋のグローバル化大好き学者で20年前からいけ好かないと思っていたが、今に至ってウクライナ危機がグローバル化の転換点になるかも、と悔し気に語りだしたということらしい。グローバル化の逆回転は息子ブッシュのイラク蹉跌で兆しを表しオバマが現れたとき明確にトレンドとなってから既に10年以上が過ぎたにもかかわらず、トレンドの先読みをすべき学者がこの状態というのはお寒すぎるというものである。
 今世紀は、限りなく19世紀のバランスオブパワーに近い情勢であることは端的には冷戦後のフランシスフクヤマの「歴史の終わり」の完全否定によって歴史的な必然となっている。日本もそういう環境認識において存立を確保すべき情勢なのである。
 ウクライナ危機もこの文脈の中から生まれたものであることは間違いない。現在のウクライナ危機の状況は、当初プーチンが目論んだシナリオを離れて膠着状態となっている。これはもちろんゼレンスキーをはじめウクライナ国民の自衛精神とその行動によるものであり、クリミアのときとは明らかに異なる抵抗にロシア軍の士気も挙がらないだろうことは容易に想像される。この中では日米欧の支援もより実効的な力を発揮してきており、今後も弱まることはないだろうとみられる。その方向でなにがしかの妥協が図られることが世界にとって最も楽観的なシナリオであろうし、そう願いたいところである。
 しかし、プーチンが生物化学兵器或いは核兵器の使用をすることも可能性として否定できずそうなれば世界史的ショックが走ることになる。また、そうでなくても懸念される昨今の動きとして、バイデンが3/26ワルシャワで演説した「非難されるべき人物は、ウラジーミル・プーチンだ。この男が権力の座にとどまり続けてはいけない」との発言は非常に大きな問題である。そもそもこの危機の根底には、プーチンだけを悪とするものでない米国のポスト冷戦期のNATOの過剰な東方拡大があったのであり、絶対にプーチンの逃げ場をなくすような妥協は避けなければならない。それは20世紀の二度の大戦期に、第一次大戦後のベルサイユ体制がドイツの逃げ場を塞ぎ鬼子のヒトラーを登場せしめたことは間違いのない歴史的事実であり、これらの教訓から学び取らない熱狂が世界を恐怖に陥れることを権力者は肝に銘じなければなるまい。
 さて、まだ早すぎるかもしれないが、プーチンが現実主義者としての側面を表し、それに応じて米欧が現実主義的対応をとることを前提に、ある種の許容され得る妥協があると考えられる。その前提でポストウクライナを議論することは今後の世界のためにも必要なことである。この危機の間にオイルの重要性の再認識があったということは明らかである。これは何を意味するか?もしかするとオイルマネーと脱カーボンマネーの裏の争いがあったのかもしれない。この間オイルマネーの旨味は唯一と言っていい米露間の共通利害であったはずである。この共有認識は当然相当後を引くに違いないと考えられる。完全に脱カーボン側が負けたということもないであろうが今後しばらくはオイルマネーが優勢になるだろう可能性は高い。トレンドが変わるだろうことは難くないと思われる。さらに別の側面を言うならば、Chinaの位置づけである。見ようによってはウクライナを通しての米露の争いはChinaを利することになるという意味で北京五輪時の習近平のプーチンとの会談は習が仕掛けた謀略的工作であった可能性も絶無とは言い切れない。そういう意味ではポストウクライナの米中、米露及び露中の関係には目を離すことができないだろう。なにがしかの情報の漏洩による日米欧のインテリジェンス分析に期待したい。それによっては今後の大きな潮流の変化があるかもしれない。しかし今今の動静からはなお米中関係に変化は見られず、オイル問題についてもChinaには不利な因子であり実際香港株価指数にも下落という形が引き続いていることからは変調は見て取れない。
 以上見てくる限りにおいて、ポストウクライナについて十分なる危機管理が必要であるものの、日本が自衛の体制を十分に強化し尖閣、台湾を中心に一歩の油断も無く取り進める限りにおいて、その防衛強化そのものが利する部分が大きいことも含めて、国益、特に金融経済の上の展望は揺るがない。短中長期ともにこれまでの投資環境を下回ることはないであろうとの見解は変わらない。
(なお、本コラムは個人的見解であり、内容、見通し等に関する事項については各個人個人の責任でご判断下さい。)
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