うつ病の家族を支える立場にいると、「私のせいかもしれない」「もっと何かできたはず」といった罪悪感に苦しむことがあります。
その気持ちは、あなたが相手を大切に思っているからこそ生まれたものです。
このブログでは、そんな「支える人(ケアラー)が抱えやすい」罪悪感の正体と、それとどう向き合っていけばいいのかを心理学的な視点からやさしくひも解いていきます。
1.支えるあなたが罪悪感を感じる理由
うつ病を患った人を支えることは、想像以上に心をすり減らすこと、ということを、まずはしっかり理解しておきましょう。
うつ病とは今では珍しい病気ではありません。600万人以上いる精神疾患患者数のうち、一番割合が多いのがうつ病を含む「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」で、156.6万人です。
しかし数が多いことと病気の難しさは何の関係もありません。
それは支え方も同様です。
160万人近い人が患っているうつ病なのに、その身近にいる人がどう支えていけばいいか、支える人をサポートする仕組みなどはほとんど手付かずです。
むしろ支える側は「家族」という立場ゆえに、専門家と同じ役割を求められます。
難しい病気をほとんど知識もないまま専門家と同じ「支援要員」として期待されるのです。こんなに辛いこと、中々ありません。
2.「私のせい?」と責めてしまう罪悪感の正体
①罪悪感の典型的なパターン
罪悪感とは、「自分のせいで○○になってしまった」と感じる自責の感情ですね。これは今までに小さなことから大きなことまで、どこかで感じたことがあると思います。
明らかに原因が自分にあるような場合だと、苦しみは長く続きません。
例えば家のカギをかけ忘れて空き巣に入られた、としたら、最後に家を出た人が「自分のせいだ…」と考えて罪悪感にさいなまれるでしょう。ただ、その後警察に通報し、カギをかけ忘れない方法を家族内で相談して、更に防犯カメラを設置するなどの対策を取れば、次第に罪悪感も薄れていきます。
しかし家族がうつ病になったことに対して「私があのとき○○していれば…」と罪悪感を感じてしまう場合、上記のような対策の立てようがありません。
②うつ病はあなたのせいではない
なぜならうつ病は原因が一つではないからです。
様々な説がありますが、一般的に「生物心理社会モデル」という考え方が主流です。これは『身体的・心理的・周囲の環境や社旗環境などの要因が複雑に絡み合うことによって病気が生じる』という考え方です。
うつ病も同じです。何か一つではないから回復まで時間がかかるし、治療方法も色んな事を試します。家族のせいでうつ病になった、と考えるのは、家族側の思い込みと言えます。
3.あなたの感情に寄り添う──セルフ・コンパッションのすすめ
①「ケアする人」こそ、自分自身をケアしていい
自分の感情が、どんな状況下でどんなルートを辿ってやって来たのか、が分かると、自分を一方的に責める罪悪感も和らいでいきます。罪悪感は自分自身への拒絶感ですから、これが和らいでくると次のステップに進めます。
罪悪感が和らいだからといって、すぐに気持ちが楽になれるとも限りません。
上述したように「寂しさ」「悔しさ」「悲しさ」が残ります。
この時に是非活用していただきたいのが「セルフコンパッション」です。
セルフコンパッションとは「悲しい気持ちになっている自分自身に優しく寄り添う」ことです。
そうすることで、悲しみは受け入れることが出来る感情に変化するのです。
②セルフ・コンパッションの具体的な実践方法
セルフコンパッションとは、自分を責める言葉を引っ込めて、悲しい気持ちになるのは自分だけではない、誰もが味わっていることだという普遍的な心理を思い出し、今この瞬間に何が出来るのか、に気持ちを向けていくことです。
やり方は難しくありません。
➊自分に対して思いやりのある言葉で「対話」する
⇒ケンカしてしまったことは悲しいけれど、自分に嘘をつきたくなかったんだよね。初めてこの件を話したから、なんて言えばいいか分からなかったんだよね
➋自分の心身がリラックスする時間を取る
⇒温かいお茶を飲む、好きなアロマをつける、ゆったりした音楽を聴く、10分散歩する
➌つらい気持ちは人間にとって自然なものだと受け止める
⇒誰だってケンカするときはあるよね。皆が誰とでもニコニコ過ごせるわけじゃない。そこからまた立ち直るんだよね。
どれくらい時間をかければいいか、は、人それぞれです。
その瞬間ごとに自分に出来ることを積み重ねることで、「この後どうすればいいか」を考える力が戻ってきます。
4.まとめ
うつ病の家族を支えるなかで感じる罪悪感は、あなたが無関心ではなく、思いやりに満ちた人である証です。しかし、その優しさゆえに「私のせいで…」という苦しみを抱えてしまうのは、本来あなたが一人で背負うべきものではありません。
うつ病は一つの原因で起きる病気ではありませんし、支える人がすべてを解決できる問題でもありません。
むしろ「どうしてそんなに頑張ってしまうのか」「なぜ自分を責めてしまうのか」といった感情の奥を見つめることで、少しずつ心がほぐれていきます。
感情は悪者ではありません。それはあなたの「大切にしたいもの」があるからこそ生まれているサインです。
自分の気持ちと丁寧に向き合うことこそが、長く支えていくための心のケアになります。自分自身の気持ちにも、どうかやさしく寄り添ってください。