明日が見えない、が消えない

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この記事はフィクションですが、カウンセラーは実在し個人カウンセリングを提供しています

クライエント
ユウコ・女性
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見えない明日への恐怖

ダイキ: こんにちは。今日はどんなことを話したいですか?
ユウコ: ......あの、なんか、毎日が怖いんです。
少し間があった。ユウコは膝の上で手を握り締めている。
ダイキ: 怖い、ですか。
ユウコ: はい。朝起きると......このまま何もしないで時間だけが過ぎていくのが、すごく怖くて。でも、何をしたらいいのかも全然わからなくて。
ダイキ: 時間だけが過ぎていく、と。
ユウコ: もう3ヶ月も休職してて。最初は「ゆっくり休もう」って思えたんですけど、最近は......明日どうなるのか、1年後どうなってるのか、何も見えなくて。
声が少し震えている。
ユウコ: 転職サイトとか開くんですけど、見てるだけで息苦しくなって。でも見ないと焦って。どっちにしても苦しいんです。

「中立ゾーン」という名の迷子

ダイキ: 今、ユウコさんはどこにいると思いますか?
ユウコ: ......どこって?
ダイキ: 例えばですけど、前の職場を離れた。でも、次にどこに行くかは決まってない。そんな状態って、どんな感じがしますか?
ユウコ: ......迷子、です。真っ暗な場所で、どっちに進んだらいいかわからない感じ。
ダイキ: そうなんですね。人生の大きな変化の時って、実は誰もがそういう「迷子」の時期を通るんです。
ユウコ: みんな?
ダイキ: はい。今までの役割や肩書きを手放したけど、新しいものはまだ見つかってない。昔の自分でもないし、未来の自分にもなれてない。そんな宙ぶらりんの時期。
ユウコ: ......まさにそれです。
ダイキ: その時期って、すごく不安になるんです。何も見えないから。でも、実はそれって自然なことで。
ユウコ: 自然......なんですか?
ダイキ: ええ。問題は、その不安が「このままじゃダメだ」って焦りに変わって、疲れてるのに無理に動こうとしちゃうこと。
ユウコは目を見開いた。

エネルギー切れのサイン

ダイキ: ユウコさん、最近どんなことしてますか?
ユウコ: えっと......資格の勉強しようと思って本買ったり。あと、気分転換にカフェ巡りとか......でも、どれも続かなくて。
ダイキ: 続かない?
ユウコ: はい。やろうって思うんですけど、すぐ疲れて。で、そんな自分が情けなくて......昼間から寝ちゃったり。
ユウコは俯いた。
ダイキ: じゃあ、夜は眠れてます?
ユウコ: ......あんまり。夜になると、いろいろ考えちゃって。「明日こそちゃんとしなきゃ」とか、「このままじゃヤバい」とか。
ダイキ: そうすると、朝起きたときはどんな感じ?
ユウコ: ......重いです。体も頭も。
ダイキ: ユウコさん、一つ聞いてもいいですか。スマホのバッテリーが10%の状態で、新しいアプリをダウンロードしようとしたら、どうなると思います?
ユウコ: ......動かなくなります。
ダイキ: そう。でも、バッテリー10%の状態で「なんで動かないんだ!」って怒っても、動かないですよね。
ユウコは黙って頷いた。
ダイキ: 今のユウコさんは、バッテリーが10%の状態で「資格勉強しなきゃ」「転職活動しなきゃ」って、新しいアプリをダウンロードしようとしてる。
ユウコ: ......あ。
ダイキ: 動かないのは、頑張りが足りないからじゃない。単純に、エネルギーが足りてないんです。
ユウコの目に涙が滲んだ。
ユウコ: でも......休んでばっかりで、何もできてないのに。

「完璧な未来図」の呪縛

ダイキ: 何もできてない、って思うんですね。
ユウコ: だって、3ヶ月もあったのに......転職先も決まってないし、やりたいことも見つかってないし。
ダイキ: 3ヶ月で、転職先を決めて、やりたいことを見つけて。それができてないから「ダメだ」と?
ユウコ: ......はい。
ダイキ: ユウコさん、その「やるべきこと」って、誰が決めたんですか?
ユウコは言葉に詰まった。
ダイキ: 世間? 家族? それとも、ユウコさん自身?
ユウコ: ......わからないです。でも、普通はこのくらいの期間があれば、次を決めるじゃないですか。
ダイキ: 普通、ね。じゃあ、その「普通」の人たちは、ユウコさんと同じくらい疲れてたと思います?
ユウコ: ......。
ダイキ: ユウコさんは今、完璧な未来図を描こうとしてる。「こうあるべき」「ちゃんとしなきゃ」って。でも、エネルギーが枯渇してる状態で、それをやろうとしても、不安が増すだけなんです。
ユウコ: じゃあ......どうしたらいいんですか。
ダイキ: まず、充電です。本当に、ただそれだけ。
ユウコ: でも、充電してたら......時間がもっと過ぎちゃうじゃないですか。
ダイキ: 時間が過ぎることと、エネルギーを回復させることと、どっちが大事ですか?
ユウコは答えられなかった。

小さな「今日」を生きる

ダイキ: ユウコさん、今日の朝ごはん、何食べました?
突然の質問に、ユウコは戸惑った表情を見せた。
ユウコ: えっと......トースト、です。
ダイキ: おいしかったですか?
ユウコ: ......覚えてないです。スマホ見ながら食べてたから。
ダイキ: そうですか。じゃあ、今日の空、見ました?
ユウコ: ......見てないです。
ダイキ: ユウコさんは、「明日」や「1年後」のことばかり考えてて、「今日」を生きてないんです。
ユウコ: ......。
ダイキ: 明日が見えないのは、当たり前なんです。誰も未来なんて見えない。でも、今日のトーストの味は、味わおうと思えば味わえる。今日の空は、見ようと思えば見える。
ユウコ: ......でも、それじゃ何も変わらないじゃないですか。
ダイキ: 本当に?
少し沈黙が流れた。
ダイキ: ユウコさんが今一番怖いのは、「明日が見えない」こと。でも、明日のことは明日考えればいい。今日は、今日のトーストをおいしく食べる。今日の空を見る。今日、7時間ぐっすり眠る。それだけで、十分なんです。
ユウコ: ......本当に、それでいいんですか。
ダイキ: いいんです。というか、それしかできない。エネルギーがない状態で、無理に未来を描こうとしても、描けるのは不安だけ。
ユウコは深く息を吐いた。
ダイキ: 今日、一つだけやってみませんか。夜寝る前に、「今日、何をおいしく食べたか」を思い出してみる。それだけ。
ユウコ: ......それだけ、ですか。
ダイキ: はい。明日のことは、考えなくていい。「今日」だけ、丁寧に生きてみる。それが、充電の第一歩です。
ユウコは少し考えてから、小さく頷いた。
ユウコ: ......やってみます。
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カウンセリングを終えて帰り道、ユウコはふと空を見上げた。夕焼けが、思ったより綺麗だった。
明日が見えない不安は、まだ消えない。でも、今日の空は、確かにそこにある。
小さな一歩だけど、今はそれで十分なのかもしれない。

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